研究課題
奨励研究
免疫チェックポイント阻害薬(Immune checkpoint inhibitor, ICI)は、がんに対する自己免疫を活性化させ優れた抗腫瘍効果を発揮する。一方で、免疫関連有害事象(immune-related adverse events, irAE)を多臓器で発症させることから、その対処法はガイドライン等により整備されてきた。しかしirAE発現のリスク因子や発現メカニズムは未だに明らかになっておらず、十分な対策が出来ていないのが現状である。本研究は当院で集積してきたICI治療の日常診療情報に、患者個々のHuman Leukocyte Antigen(HLA)遺伝子型情報の解析を組み合わせ、irAE発症の新規リスク因子を探索することを目的とする。
研究計画に従い、当院での免疫チェックポイント阻害薬使用患者のレジストリ構築を継続した。適応拡大に従い14癌種に対し817名の登録を行うことができた。免疫関連有害事象(immune-related adverse events, irAE)に対し、HLA遺伝子型解析がirAE発症のリスク因子と考え解析を試みたが、新規因子として導出することはできなかった。一方、血液中の好中球とリンパ球の比であるneutrophil to lymphocyte ratio(NLR)が間質性肺炎の予測因子となることが分かった。間質性肺炎発症患者では発症4週間前よりNLRの上昇がみられ、重症化との相関も観察された。
レジストリに蓄積される多くの臨床情報から、各々のirAEのリスク因子解析を実施した結果、血液中の好中球とリンパ球の比であるNLRが間質性肺炎の発症予測や重症度予測因子となることが分かった。当院の免疫チェックポイント阻害薬患者レジストリに含まれる項目は、いずれも日常臨床で使用可能なものである。NLRもいずれの施設においても算出可能であり、今後さらなるエビデンスの蓄積、確立によりirAE早期発見のバイオマーカーとして実用化可能と考える。irAEのリスク因子解析を継続することで、より安全な免疫チェックポイント阻害薬の治療を提供することができると考える。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Sci Rep
巻: 11(1), 1324 号: 1 ページ: 1324-1324
10.1038/s41598-020-79397-6