研究課題
奨励研究
近年, 環境DNA解析は魚類の産卵床探索にも応用され、サケ科やアユの産卵場の位置推定に貢献している. しかしながら, 環境DNAには複数の起源物質(卵, 表皮細胞, 体液, 粘液, 糞等)が含まれていると予想され, 実際の起源は明らかになっていない. そこで本研究は, 現地調査により得た環境DNA試料についてショットガンプロテオミクスを行い, アユ由来環境DNAの起源物質の寄与率を推定し, 産卵床調査に対する環境DNA解析の有効性を評価することを目的とする.
天竜川下流域で現地調査を行い,28地点中3地点でアユの産卵床を発見した.産卵床が発見された地点では,アユ由来環境DNAが検出され,環境DNAを活用した産卵床探索の有効性が示された.タンパク質解析用試料については,分光光度計を用いて総タンパク質量を測定し,抽出条件の最適化を達成した.MS装置の不具合によりプロテオミクス解析までは至らなかったが,MS解析用試料の前処理条件の最適化までは達成しており,装置が復旧し次第,測定及びデータ解析に取り掛かる予定である.
本研究では,環境DNAを活用したアユ産卵床探索の有効性とアユ由来環境DNAの起源物質について探求を行った.これまでの産卵床探索は現地踏査で実施されており,調査員の経験やスキルによって発見確率が変化することが指摘されてきた.本研究で実施した環境DNA法は,調査地点の水試料を採取するだけで在・不在を推定することができ作業効率の向上や客観的な評価をすることができる方法である.また,環境DNAの起源物質解析にプロテオミクスを応用する方法は例が少なく新規的な取り組みであった.
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