研究課題
奨励研究
日本の沿岸域で盛んに行われている貝類の養殖は, 餌を与えず, 海で生産される植物プランクトンの生産(基礎生産)に依存している. そのため基礎生産力を超えない範囲で養殖量を管理する必要がある. しかし, ホタテ貝の餌料環境は未だ解明されていない部分が多く, 適正な養殖量管理に至っていない. そこで, ホタテ貝の餌料源を明らかにするとともに, 餌料ごとの基礎生産力を算定することで, 養殖量を最適化するための基礎的データを蓄積し, 環境自立型養殖技術の構築に繋がる知見を得る.
本研究では,青森県陸奥湾内養殖地域4地点において表層を含めた3層について海水を採取し,炭素安定同位体標識化法により植物プランクトンの基礎生産量,水質モニタリング項目(栄養塩,有機炭素量,溶存鉄)を測定した.得られた基礎生産力を目的変数,水質モニタリング項目を説明変数とし,機械学習(Python,Pycaretパッケージ)を用いて基礎生産量の算出モデルを構築した.結果,ExtraTreeRegressorによる算出モデルの精度が高く,クロロフィルaと水温を主な説明因子として得られる推定値が実測値を良く説明できることが明らかとなった.
本研究において構築された基礎生産量の算出モデルは,クロロフィルaと水温をモニタリングすることにより,ホタテ養殖場における餌料量推定に役立つものとなる.ホタテの主な餌料源である植物プランクトンは,水温により優先種が入れ替わることが知られており,ホタテにとって有用な餌料源の量的・質的な変化は養殖業にとって重要な因子である.そのため,本研究によって得られた算出モデルを用いることにより,分散養殖を行うことなどにより,餌不足による斃死のリスクを回避するための基礎データとなる.
すべて 2020
すべて 学会発表 (1件)