研究課題/領域番号 |
20H01209
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 金沢美術工芸大学 |
研究代表者 |
水野 さや 金沢美術工芸大学, 美術工芸研究所, 教授 (10384695)
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研究分担者 |
朴 亨國 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (00350249)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 仏塔信仰 / 元 / 遼 / 金 / ポスト・アンコール / 仏教図像 / バガン / 仏塔 / 護法神 / 高麗 / ラーンナー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、アンコール、バガン、スコータイ、ラーンナー、ラーンサーンの諸王朝の宗教美術において、モンゴル(元)との接触により、どのような事象が自発的ないし外発的に湧出したのか、①仏教尊像の様式と図像的特徴、②仏塔の形式および荘厳モティーフ、③寺院建築の構造と機能の3点において明らかにすることを試みるものである。実地調査により得られる「生」のデータを第一資料とし、歴史的・様式的観点からの作品比較と教理的・図像学的分析を同時に行い、新たなモンゴル史、モンゴル思想史の研究成果を積極的に咀嚼・吸収の上で活用し、モンゴル時代のインドシナ半島大陸部における宗教美術のダイナミックな様相の可視化を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度も国内での関連調査に切り替え、九州における中国製仏教美術作例として、いわゆる薩摩塔の実地調査を行った。 薩摩塔は、福岡、佐賀、長崎、鹿児島の各県に所在する他、近年、大阪の堺においても発見・報告された。そのような分布地の文化史的背景、中国産石材と目されていること、塔の浮彫尊像の特徴から、およそ12世紀~14世紀の中国で制作され、日本にもたらされたという見解が呈されている。また、大徳寺本「五百羅漢図」に描かれる宝塔(卵塔)と、薩摩塔の形状が類似することから、南宋の明州との関わりが想定され、浙江地域における舎利信仰を背景とした薩摩塔理解へと広がりつつある。 研究代表者と分担者は、これまでに高麗・遼・金の仏塔の浮彫尊像および群像形式の仏教尊像について研究・報告してきたが、こうした視点により、高麗・金・元の石造浮図から朝鮮王朝の卵型石造浮図への展開、琉球王朝の蓮蕾型宝塔への展開、遼・金の仏塔・経幢における群像形式の構成パターンとそのプログラムなどとの関連も考慮に入れる必要があると考えるに至った。また、『九天応元雷声普化天尊説玉枢宝経』など、元代に編集され、明さらに朝鮮王朝においても制作されるほど流布した版本に登場する神将形像など、いくつかのメディアにおいて関連する特徴を点的に見出すことができること、薩摩塔の浮彫初尊のオリジナルの形態からの崩れが早く出現していることなどを総合的に判断することにより、制作地、制作年代、建立目的などについて、新たな方向性を射程に含める必要があるのではないかとの着想を得るに至った。 しかし、本年度は網羅的な作例調査および史料収集に及んだものの、個々の具体的分析にまでは十分に至ることができなかった。また、研究分担者の急逝により、東南アジア地域の作例との比較および教理学的な図像分析が頓挫している。継続して取り組み、次年度にまとめて成果報告を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
相手国の事情により、海外における実地調査に制限があり、文献集約も十分に実行することができなかったためである。あわせて、東南アジア領域を分担していた研究分担者の急逝により、調査先機関との打ち合わせが頓挫したことも要因である。
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今後の研究の推進方策 |
海外における実地調査の円滑な実施に向けて、関係各所にあらためて協力を依頼する。引き続き困難な場合は、これまで同様、国内での関連調査に切り替える。九州および沖縄県下の宗教美術において、本研究に関連する問題点について大きな着想を得ることができている。これらの諸問題を中心に国内の実地調査・研究にあたり、その成果を下地とし、翌年以降の海外調査に臨む。
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