研究課題/領域番号 |
20H01216
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
市川 寛也 群馬大学, 共同教育学部, 准教授 (60744670)
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研究分担者 |
郡司 明子 群馬大学, 共同教育学部, 教授 (00610651)
茂木 一司 跡見学園女子大学, 文学部, 教授 (30145445)
松村 泰三 東北芸術工科大学, 芸術学部, 教授 (80573667)
城山 萌々 羽陽学園短期大学, 幼児教育科, 講師 (80466672)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2020年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | アートプロジェクト / ポストミュージアム / コミュニティ / 生涯学習・社会教育 / ワークショップ / 文化資源 / 社会教育・生涯学習 / 農民芸術 / 芸術教育 / 場所 / 生活 / 地域社会 / アートベース・リサーチ / 創造的生活 / アクションリサーチ / 生涯学習 / 創造性 / 文化財 / 農民美術 / コミュニティ・スペシフィック / ポスト・ミュージアム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は以下の二つの問いを軸に展開される。第一に芸術が本質的に有する教育的側面と教育が本来備えるべき創造性の接続は可能か、第二にアーティストを起点とする実践コミュニティからどのような学びが育まれるか、という二点である。今日では、アートプロジェクトなどの実践を通して芸術と社会が直接的に接続する回路が増加しつつあるが、今もなお芸術は人々の生活から切り離された特別な物事として認知されている。このような状況に対して、芸術実践を通して地域社会に開かれた「学びの場」に着目することで、日常と芸術とが地続きの関係にあるような創造的な社会を実現するための理論的実践モデルの構築を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、地域社会に開かれた学びの場のあり方について、アートベース・リサーチ(ABR)の方法に基づき明らかにすることを目的とするものである。2022年度は、理論と実践の両面から以下の研究に取り組んだ。 まず、理論研究の側面として、山本鼎の「農民美術」や宮沢賢治の「農民芸術」の現代的解釈を試みた。その成果は『賢治学+』に論文として発表している。これに加えて、長野県上田市から各地に拡がった「自由大学」の実践や、群馬県高崎市における井上房一郎による工芸運動についても調査を進めている。一連の研究にあたっては「創造的な地域はいかに育まれ得るか」という問いを重視している。これに関連して、近代以降に地域開発が進むとともに新興芸術の拠点の一つとなった「池袋」にスポットを当てた調査も行った。この成果については、2023年発行の『文化資源学』に研究報告の掲載を予定している。 一方、実践研究の側面では、茨城県水戸市における「放課後の学校クラブ」および岩手県胆沢郡金ケ崎町における「金ケ崎芸術大学校」の実践を通したアクションリサーチを継続している。前者については、小学校と地域(+家庭)とをゆるやかにつなぐ学びの構造が浮かび上がってきた。後者については、前年度に引き続き「小学生ウィーク」に取り組んだ。特に、版画を専門とする共同研究者との連携によるワークショップを実施したことで、「生活の芸術化」の理念と美術教育との接続の可能性を示すことができた。また、これらに加えて、群馬県中之条町を拠点に「中之条芸術大学」のプロジェクトにも着手した。 本研究は、コミュニティ型アートプロジェクトを研究手法として用いることで、研究者、アーティスト、実践者が相互に交流しながら展開されていく。そこには、コミュニティ・スペシフィックな学びのダイナミズムに基づく「場所性の美学」のようなもの見出すことができると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度も、新型コロナウイルスの感染拡大の波により、実践が停滞する時期があったものの、各地のアクションリサーチについてはおおむね順調に進展している。特に、「金ケ崎芸術大学校」における「小学生ウィーク」については、実践研究であると同時に、多くの児童が参加し、研究手法としてのアートプロジェクトの有効性も示すことができた。これについては、研究課題に応じて内容を検討しつつ、次年度以降も継続していく予定である。また、2021年度以前に執筆した論文も含め、研究成果に基づく複数の論文を発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は本課題の最終年度にあたるため、研究全体の総括に取り組む。 これまでの研究では、アートプロジェクトの手法に基づく実践研究とアートベース・リサーチ(ABR)との融合を試みてきた。特に、期間全体を通じて取り組んできた2つのプロジェクト(「放課後の学校クラブ」「金ケ崎芸術大学校」)では、参加者の参加の度合いや地域との関わり方などに質的な変化が見られた。今後、芸術に根差した学びの場が地域に開かれることの意義を示すとともに、それらがどのような「場所」であり得るのか、という観点から、参加者へのインタビューにも取り組んでいく。これにより、実践研究の「技法」としてのアートプロジェクトの可能性を明らかにしていきたい。 上記の実践から理論的なモデルを導き出す際に、「生活の芸術化」の概念を再考するとともに、「場所性の美学」とでも呼ぶべき領域を構築していきたい。前者については、ウィリアム・モリスやエドワード・カーペンターの思想および日本における受容にスポットを当て、「農民芸術」「農民美術」「民芸」などを体系化した大正期の民衆文化運動を整理する。後者については、特定の「場所」に対する感性に着目し、広義での芸術が育まれる環境について考察を進める。その際、イタリアのレッジョ・エミリアなどの事例も参照しながら、地域や生活に根差した学びの場のあり方について明らかにしていく。 また、最終年度の取りまとめとして、今回の研究課題を振り返るシンポジウムの開催を予定している。実施にあたっては、研究者のみならず、アーティストや地域の側からの登壇者も迎えることで、複合的な視点から地域社会における芸術の場のあり方について検討する機会としたい。
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