研究課題/領域番号 |
20H01248
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
葉柳 和則 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (70332856)
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研究分担者 |
増本 浩子 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (10199713)
川島 隆 京都大学, 文学研究科, 准教授 (10456808)
中川 拓哉 名古屋大学, 人文学研究科, 博士研究員 (10829906)
中村 靖子 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70262483)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 表象文化 / 西洋史 / 思想史 / 文化史 / スイス文化 / ヨーロッパ近現代史 / ヨーロッパ近現代文学 / 表象 / スイス / 文化の政治 / ヨーロッパ近現代文化 / 地域研究(ドイツ語圏) / スイス史 / 演劇 / 映画 / 小説 / 文化政策 / 文化表象 / ヨーロッパ史 / アルプス / 神話 / ヨーロッパ文化 |
研究開始時の研究の概要 |
アルプス山脈が象徴する汎ヨーロッパ的性格は、西洋の集合的アイデンティティ形成に利用されてきた。本研究は超域的トポスとしてのアルプス表象の産出とその再領土化の試みとの葛藤を、主としてスイスの文学作品、映画、絵画といった文化的諸現象から辿る。18世紀のアルプスはヨーロッパ全域にとっての「崇高と美」の場所であったが、ナチスが己の正当化と聖別の目的で象徴的に領土化しようとした。他方、ナチスに対する抵抗の一環として、スイスはアルプスを「多様性のトポス」として再領土化した。つまりアルプス神話を問うことは、スイス国内のみならず、移民・難民問題、および域内統合に対する反動に揺れるEUを考えることでもある。
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研究成果の概要 |
本研究の課題は、アルプス山脈に関する文化的表象および政治的・学術的言説を対象として、アルプスがスイスの集合的アイデンティティの形成と深く関与していることである。18世紀のアルプスはヨーロッパ全域にとっての「崇高と美」の場所であった。独立性が高く、言語・文化的に多様な諸州の連合体であるスイスは、いわば「ヨーロッパのモデルとしてのスイス」という自己規定をすることで、アルプスを「領土化」しようとした。本研究は、芸術家と知識人によるアルプスの自然描写、文化担当大臣・エッターの講演、『ハイジ』の翻訳とアダプテーション、ドイツ山岳映画、デュレンマットの小説を取り上げ、この仮説を検証した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
アルプスを象徴的に「領土化」し、「多様性の中の統一」の空間として表象することは、現代のスイスの国際的イメージ形成に貢献した。しかし、この表象は同時に、戦間期から第二次世界大戦期のスイスにおける「ナチズムへの順応」の動きを隠蔽する作用も持っていた。それゆえ20世紀後半の小説家や劇作家によるアルプス表象は、アルプス神話を脱構築することを目指していた。この神話の功罪を問うことは、スイス国内の文化史にのみ関係するのではない。それは現代ヨーロッパのモットーでもある「多様性の中の統一」という理念と現実との間にある差異が生み出す諸問題の解明へとつながっている。
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