研究課題/領域番号 |
20H01299
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03010:史学一般関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村松 真理子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80262062)
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研究分担者 |
池上 俊一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 名誉教授 (70159606)
杉山 浩平 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (60588226)
日向 太郎 (園田太郎) 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (40572904)
芳賀 京子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80421840)
松田 陽 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (00771867)
奈良澤 由美 城西大学, 現代政策学部, 教授 (60251378)
中川 亜希 上智大学, 文学部, 准教授 (80589044)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2022年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2020年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | 古代ヴィラ遺跡 / 古代 / 考古学 / イタリア文化史 / 火山 |
研究開始時の研究の概要 |
南イタリア・ヴェスヴィオ山麓は紀元後1世紀の火山噴火で埋没したポンペイ等の古代都市が発見され、近代考古学・古代史研究の礎が築かれた「領域 (イタリア語 territorio)」である。本研究計画は(I)2002年以来東京大学が当地域で行うソンマ・ヴェスヴィアーナ古代ヴィラ遺跡調査を総括し、(II) 歴史学、美術史、パブリック・アーケオロジー、文献学、文化史の専門家である分担研究者が協働し、当該「領域」の「古代の記憶」に位置付ることで新たな知見を獲得し、(III)国際シンポジウム等を通して文化遺産の研究・保存活用をめぐる国際的議論において、広く統合的人文知の新たな展望と社会的役割を呈示する。
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研究実績の概要 |
2021年度は2020年度に引きつづき、再び世界的な新型コロナ感染症流行の影響を受けたが、二度にわたる繰り越しによって、以下のような研究成果と業績を達成することができた。 I イタリア、ソンマ・ヴェスヴィアーナ市古代ヴィラ発掘現場においては、夏季を通して、安全対策を講じつつ同地での法令を遵守しながら、可能な限り、発掘調査とその分析作業を行った。 その結果、新たな発掘箇所の遺構が、かなり成立の年代を遡る可能性が濃厚となってきた。そのため、遺跡の成立の年代自体に関して、従来考えられてきた2世紀以降ではなく紀元前後とする新たな仮説を実証できそうな見通しである。 II 渡航や海外研究者との交流や調査については慎重に行うことが引き続き必要であり、研究分担者全員の現地での調査や対面での研究交流はできなかったが、ひきつづきオンラインで、上述した画期的な成果等、研究成果の共有や意見交換のための会議を行った。また各研究者がそれぞれの分野において古代中世テクスト解釈、中世歴史学、考古学、美術史の各分野において歴史以来のテクストや文化財を「記憶」として捉え、その関連性・系譜と解釈を分析する研究を個別に進めたことは2021年度においても変わらず、ズーム等の通信手段を用いて成果を共有し、おおむね計画を遂行したと言える。 III さらに、現在までの古代ヴィラ発掘調査成果と最新の研究や教育分野での応用について、東京大学総合文化研究科グローバル地域研究機構地中海地域研究部門としてドキュメンタリーを制作したものが2020年度に完成し、2022年度に公開したり、教材としての利用をはじめた。また発掘調査の最新成果についてもイタリアと日本国内の研究者の間で共有し、国際シンポジウムの準備を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画の初期の段階では世界的な新型コロナ感染症蔓延の影響をひきつづき受けたため、上記の通り、計画の遂行が遅れたが、繰り越しを得て、複年度の計画の見直しを行って実行することができた。 I 渡航制限の緩和や、現地でのさまざまな制限が徐々に緩和されていく中で、現地での作業や研究の従来の方法と調査の進行をすこしずつ取り戻し、さらに合理的に年度をまたがった研究の進行を着直したところ、上記した発掘調査での大きな研究成果に結びついた。 II 個別の研究については、Iの成果の共有をはかるとともに、それぞれの分野での研究がひきつづきすすめられた。2021年は中世研究と古代との関わりにおいて、ダンテシンポジウム(没後700年記念)やポンペイ展開催準備はじめ、国際的にも国内的にもオンラインや新たなメディアを利用した研究発表や社会への発信が行われる年となった。その中で、当研究プロジェクトの研究分担者が研究活動や発信をそれぞれ行い、「記憶」とその「再生」という統合的なテーマに統合的な成果としてまとめる準備が進められた。 III 海外渡航による現場での調査の実施や研究および発掘現場以外でも海外の研究者との交流も徐々に再開し、最終年度のシンポジウムにむけた研究交流につなげることができた。また東京大学大学院総合文化研究科グローバル地域研究高度化機構地中海部門と当科研プロジェクトが、オンライン上映会・シンポジウムを共催した。2002年以来の古代ヴィラ遺跡の考古学的発掘調査を核に東京大学が展開してきた南イタリアの農村地帯の地域史から古代史学、地質学、火山学にまたがる文理融合型学際研究を、関係した代表的研究者と振り返り、その意義について2日間にわたり議論した。シンポジムについてはオンライン上で引き続き公開し、多くの一般の人からの参加とアクセスを得た。成果共有のためのオンラインミーティングもひきつづき行った。
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今後の研究の推進方策 |
繰り越しの制度を活用しながら、過去2年度分の成果をもとに、「記憶」「文化財保存」「考古学的知」に関するグローバルな視点とその哲学および実践的提言を行うことを目標に、現場での発掘調査を仮説の実証的な証明と最終的な成果報告にむけて、当研究計画の統括として国際シンポジウムを開催する準備を具体的につめる。その中で(1)考古学調査成果と現場に直接関連する提言とあわせ、(2)グローバルな文化財の研究保存のあらたな視点を提案したい。研究分担者の各分野の研究成果を総合しながら、考古学的文化財と文書的「テクスト」の両方を含む、人類の知の「記憶」をめぐる理論的枠組みを、人文学的統合知として提示することが目標である。そのためには、より細かなテーマ分けとカテゴリー化を、シンポジウム準備とあわせて定めて共有する必要がある。シンポジウムの成果は論集としてまとめたい。 (1)に関しては、遺跡現場の将来的な地域による保存継承と公開の可能性や、活用方法等の将来的展望について、現地の研究者や自治体関係者、文化財保護監督局と議論の共有をはかるための材料・資料をを研究成果としてまとめたい。それとあわせ(2)を学際的な理論的枠組みとしても提示するために、研究分担者と方針の共有と分担をあらためてはかった上で研究をまとめ、国際シンポジウムの準備をつめる。また、本研究の学術的成果を学生・研究者だけでなく日本の市民や、イタリアの地域のコミュニティにも可能な限り共有したいので、研究計画終了後、東京大学大学院総合文化研究科グローバル地域研究高度化機構地中海部門との共済で東京大学教養学部博物館での展覧会やソンマ・ヴェスヴィアーナの現地でのワークショップの開催について検討する。 コロナによる計画の変更を経て、最終的に当初の研究目標を達成するために、研究分担者や関係者との情報共有を密にしつつ、残りの期間で。合理的に研究を進めていきたい。
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