研究課題/領域番号 |
20H01308
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
藤原 哲也 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (30362338)
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研究分担者 |
山下 麻衣 同志社大学, 商学部, 教授 (90387994)
今城 徹 (今城徹) 阪南大学, 経済学部, 准教授 (20453988)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 戦傷病者 / 戦争 / 障害史 / 日本近現代史 / 障害学 / 自立 / 障害者史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、家族、医療・看護、経済の視点から、日本の戦傷病者とその家族の生活の実態解明を通じて、戦傷病者の自立をめぐる戦後史を俯瞰的に理解することを目指す。戦傷病者は、軍役に起因する傷病のために国家によって規定された障害者である。私たちは<ヒト=家族>・<サービス=医療・看護>・<カネ=経済>の三つの視点から第二次世界大戦期までの戦傷病者の自立の歴史を検証してきた。日本の第二次大戦以前の戦傷病者に関する研究に比べて、戦後期の彼らの実態を包括的に把握した研究は未だに少ない。したがって、私たちは、戦後期における戦傷病者の実態解明を通じ、戦争が社会および国民に与える長期的かつ多面的な影響を考察する。
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研究実績の概要 |
2022年(令和4年)度は、本研究を進める上で成果発信期と位置付けた。戦傷病者の家族について分析を担当する藤原は、成果報告と関わる対象者に聞き取り調査を継続した。この聞き取り調査を取りまとめ、日本オーラル・ヒストリー学会年次大会(9月11日)にて「満鉄鉄道事故者の妻が語る夫の受傷体験と戦後の生活」と題する口頭発表した。戦争経験者への聞き取りが困難になるなかで、彼らに代わる配偶者の語りのオーラル・ヒストリーにおける可能性について出席者と活発な意見交換を行った。 戦傷病者の看護・医療を担当する山下は戦後復興期を対象として、戦傷病者戦没者遺族等援護法により規定された更生医療の利用実態を京都府の事例から把握した。寄稿した論文では、戦傷者が世帯主としての役割を果たすため、もしくは身体の音痛を取り除くために医療を受療したことを実証した。一方で、戦病者は治療の効果に関する判断及び治療費の試算の難しさのためにこの制度の利用が制限された点にも言及した。 戦傷病者の経済状態の分析に取り組む今城は、本研究の研究会(12月18日)において「戦後復興期における「生活弱者」への公的金融支援:生業資金貸付・更生資金貸付の事例」を報告した。同報告では、戦後復興期に庶民金庫およびその後継である国民金融公庫が行った、引揚者、復員者、未復員者家庭、寡婦家庭といったいわゆる「生活弱者」に対する金融支援の実態とその帰結を具体的な把握を目的とした。戦時期に設立された庶民金庫は、戦争が長期化する中で生活困窮者に対する金融を「生業資金貸付」として実施しており、戦後も引揚者や復員者をはじめとする「生活弱者」に対する金融を担った。庶民金庫の後継として1949年に設立された国民金融公庫も「生業資金貸付」を「更生資金貸付」として引き継いだが、ほどなくこの貸付の不良債権問題が同公庫の大きな課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
参加研究者の研究テーマ(医療・看護、経済)をそれぞれの発表を通じて、戦傷病者の戦後の生活実態に関する重層的な理解が深まり、最終年度に予定している共同論文の執筆に筋道をつけることができた。これと並行して、各参加研究者の口頭発表や論文執筆に向けて作業を加速させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年は、本研究の最終年度であり、収集し史料とデータの分析から学会報告と論文投稿の形で発信していく。また、これらの発信に必要な史料の発掘および雅俗への聞き取りも随時実施する。
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