研究課題/領域番号 |
20H01353
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
長井 謙治 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (20647028)
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研究分担者 |
卜部 厚志 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 教授 (20281173)
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2020年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | 北町遺跡 / 縄文文化形成期 / 更新世・完新世移行期 / 古環境 / 生業 / 縄文時代草創期 / ヤンガードリアス / 生業活動 / 学際 / 適応 / 環境DNA |
研究開始時の研究の概要 |
縄文文化の形成過程は、温帯森林の拡大と局地的な環境変化にあわせて、時期を違えて多様に推移したと考えられる。本研究では、多様な縄文化プロセスについて検証するために、人間-環境作用の細かな歴史情報が得られる山形県北町低湿地を対象として、内陸部湖畔の地域的適応について明らかにする。そのために、自然科学研究者と連携した北町遺跡の合同発掘調査を実施して、人間生活の場である遺跡周辺の古環境をできる限り詳細に復元するとともに、その中で成立していた生活像(生業活動と食性の実態)を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本最古級の内陸湿地性集落址からローカルな環境変化を導き、それに対応した人類の適応を最新技術により解き明かすことにある。 令和3年度は、COVID19による行動規制緩和を受けて、夏季合同発掘調査を実施した。科研費メンバーを加えた北町遺跡学術発掘調査団を再組織して、8・9月の約1か月間かけて第3次北町遺跡発掘調査を実施した。本調査においては、考古学的には縄文草創期後半期における集落構造の解明を第一目的として、愛知学院大学大学院生を中心とした長井ゼミナールの学生を中心として層位発掘を実施した。調査面積を前年度の約2倍に拡幅して、平面的な遺構の広がりを確認した。更に、各層に含まれる土器・石器のアセンブリッジを把握するために、遺構と堆積構造に徹底区分した細分層位発掘を実施した。 調査期間中には、科研費メンバーである自然科学者を現地に招いて、各種自然科学分析を実施するための土壌・有機物サンプル採取を試みた。 2022年3月には2018・19年度発掘調査概要報告書を刊行した(長井謙治編『北町遺跡―2018・19年度の発掘調査概要報告書―』愛知学院大学文学部歴史学科)。 過去2年間の研究活動記録については、ウェブサイト基盤研究(B) 縄文文化形成期の北町低湿地遺跡における古環境と生業の地域的解明 - researchmapに掲載している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の夏季合同発掘調査の実施に当たり、研究分担者との事前の綿密な計画会議を実施した。とりわけ、2019年度調査で課題となっていた近現代攪乱層の埋土を汚染源とする調査時の攪乱をどう防止するかについて、徹底協議を行った。この点については、自然科学者と共同でオンラインによる打ち合わせを重ねて、低湿地遺跡における導線の確保と配水システムの配備を検討した。発掘調査においては、現地研究者と自然科学者とのパイプの構築を意識して、ライン動画配信及び、GoProカメラなどを利用したSNS媒体を利用して、リアルタイムでの研究成果の共有を試みた。動画は現地で編集して、研究分担者と研究協力者が共有するWebクラウド上に保存した。こうした工夫は、発掘調査の内容を広く自然研究室ラボに公開して、刻一刻と変化する低湿地遺跡発掘現場の状況を共有して、考古学者と自然科学者双方が、新たな視点構築に向けて議論するためのプラットフォームを作成すべく、核次世代型の共同調査体制を探るための新しい試みである。 2021年は地下磁気探査、調査区西側の山麓堆積物を対象とした追加のボーリング調査を実施した。室内分析の分野においては、2018・19・21年度に出土した遺物と土壌を用いて、環境DNA解析の予備的試み、出土石器の産地推定、出土土器付着物の年代測定と安定同位体/脂質分析、堆積物と焼礫の14C/TL年代測定、及び動植物遺体を用いた食性・古環境分析を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
2020・21年度調査に採取したボーリングコアの各種自然科学分析に着手する。併せて、調査トレンチ内の花粉・珪藻・火山灰分析を実施して、遺跡地における更新世/完新世移行期の湖岸環境特性も調べる。なお、2022年度はプロジェクトの最終年度でもある。そのため、基本層序の総点検と遺跡周辺部で採取したコアの時間軸について完成させる。そして、2018・19・21年度調査出土遺物・土壌の維持管理・再整理を通して、これまでの分析成果を統合する。具体的には、爪形文・多縄文土器のC14年代測定、重窒素/炭素安定同位体と残留脂質の分析、焼骨と大型植物遺体の同定、残留デンプン粒の導出、堆積物中の古代DNAの抽出と分析に関わる結果を総括して、遺跡地におけるヒト-自然環境の相互作用に関わる総合的理解を試みる。クラウド型Web会議システムによる小研究会・勉強会等を通して、研究代表者と分担者が共有した研究目的を保ちつつ、共同ないし単独で研究発表をする。2021年に実施したボーリングコアの古環境分析を継続して、ヤンガードリアス前後の古環境をこれまで以上に細かい時間スケールで復元する。内陸部における北町縄文人の生業活動と食性の実態解明に迫る。
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