研究課題/領域番号 |
20H01356
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 公益財団法人古代学協会 |
研究代表者 |
森岡 秀人 公益財団法人古代学協会, その他部局等, 客員研究員 (20646400)
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研究分担者 |
桑原 久男 天理大学, 文学部, 教授 (00234633)
若林 邦彦 同志社大学, 歴史資料館, 教授 (10411076)
柴田 昌児 愛媛大学, 埋蔵文化財調査室, 教授 (10735286)
田畑 直彦 山口大学, 埋蔵文化財資料館, 助教 (20284234)
國下 多美樹 龍谷大学, 文学部, 教授 (30644083)
山本 亮 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 研究員 (30770193)
森 貴教 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (30775309)
寺前 直人 駒澤大学, 文学部, 教授 (50372602)
宇佐美 智之 京都芸術大学, 芸術学部, 講師 (60838192)
伊藤 淳史 京都大学, 文学研究科, 助教 (70252400)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2020年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
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キーワード | 弥生時代 / 高地性集落 / 眺望 / 戦争 / 交易 / 公益 / 流通 / 抗争 / 高地性 / 集落 |
研究開始時の研究の概要 |
考古学上熟知されてきた高地性集落は、年代論を根幹とする歴史の大きな枠組みが破綻する中で、歴史的評価が著しく多様化し、大きな転換期を迎えている。そこで、本研究では、これまで蓄積された調査成果・研究業績を踏まえつつ、利用可能となった新たな技術も用いながら、列島各地における高地性集落の時期、立地、遺構、遺物、分布などの実態を総合的に検討し、その歴史的性格を実証的に再評価してゆきたい。今日、学校教育では偏った弥生時代のイメージが流布しているが、本研究を通して今後の高地性集落研究の指針となる新たなフレームを構築することができれば、そのイメージを修正することにも寄与するであろう。
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研究実績の概要 |
行動制限下、可能な限り高地性集落の現地踏査と過去の出土資料の再検討。とりわけ概念や定義のキーポイントになる遺跡を選択した。 本科研経費の一部助成で行っている新潟大学考古学研究室主体の長岡市赤坂遺跡の発掘調査現場を視察し、弥生後期後半の北陸圏最大幅の環壕遺構と出土遺物(法仏式期)を確認した。関連して北陸側の要所では、越後(村上市山元遺跡、新潟市新津八幡山遺跡)、加賀(金沢市観法寺遺跡・観法寺墳墓群)、越前(鯖江市弁財天遺跡)などの現地調査を進め、紀伊(和歌山市橘谷遺跡・滝ヶ峯遺跡)の現地並びに遺物調査も行った。また、和泉市惣ヶ池遺跡の整理中遺物の調査を実施し、石川県埋蔵文化財センターや新潟市文化財センター、金沢市文化財収蔵庫、和歌山市立博物館にて関連資料を調べた。交流の証左となる外来系土器については、とくに庄内式最新相の動向が近畿圏の下限の評価とも絡む紀伊産大和型庄内形甕の確認例が滝ヶ峯遺跡出土資料中に存在していた。貝塚・貝層の形成地点と生息域がどのように関わるのか、西日本全体の志向性とも比較しつつ、地域性や遺跡間差の合理的説明への足掛かりを得た。また、近畿後期社会の鉄器化の証しとなる砥石の分析も深化させた。個別調査としては、天理市豊田山遺跡、別所裏山遺跡の土器を再検討した。地理情報システム(GIS)を活用した高地性集落の眺望・立地分析では、神戸市スポーツ・文化財課や新潟大学と共同で立地の有効性や機能などをそれぞれ発掘調査報告書に執筆、反映させた(城ヶ谷遺跡第4次・赤坂遺跡第2次)。眺望性に言及するとともに、遺跡消長と銅鏡出土分布研究から弥生後期前葉に有機的な集落の結びつきがあることを明らかにしできた。その他、中間発表として、『古代文化』第74巻第2・4号(古代学協会)の特輯(上)(下)誌上に示し、気候変動論、前期古墳立地論、ヨーロッパ考古学などとの触れ合い方を模索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に踏査した大阪府和泉市惣ヶ池遺跡新出土の希少金属器である鉄器鍛冶関連遺物の分析(鉄滓・鉄片)と弥生小形ボウ製鏡の青銅器組成元素分析や鉛同位体比測定を実施し、金属原料の産地同定を行う計画を立てていたが、前者のみ磁着微細遺物の分析を行い、後者は最終年度(令和5年度)予算で分析を実施することにした。高地性集落の踏査、分析では、南関東の事例について沖積地の遺跡の生業を加味することで複眼的モデルを企て、西日本のごとく一般化しない点の追認をさらに行う予定である。東日本は西日本各地の高地性集落と比べ、眺望性や視界の視認範囲などの究明がかなり遅れており、やや時期のずれる入の沢遺跡などの機能・性格に関しても再検討を行う。高地性集落データベースの基礎データ収集のため、広島県をはじめ、研究協力者の拡大を図りつつ対象遺跡を増強、補完することに努めたが、基礎リストから基盤データ構築への基本作業に流れに遅れが目立っている。鋭意調査の空白域を覆う同レベルの調査を補う必要がある。さらに紀元前の高地性集落が沿岸部や島嶼部に多数点在する瀬戸内海地域に関しては、面的にも広く、調査・研究が進んでいないため、主要遺跡についてチャーター船を駆使して海上からの眺望性や可視範囲を捉えつつ、立地点ごとの連動性を読み解くための遺跡巡検を行う。とくに紫雲出山遺跡側から航行船舶を見るなどの相互対比的な調査を初めて行い、瀬戸内海の臨海性の高所集落の特質の探求と解明に努め、最終年度としての詰めを行いたい。高地性集落出土資料としては、学史的価値も高い紫雲出山遺跡出土の京都大学初期調査資料(土器・石器・金属器)の熟覧を申請し、実現させる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
大阪平野では200m間隔を目安に遺跡形成地点のデータ構築に基づき、遺跡立地点の時期別変化過程が整理されたが、弥生後期後半以降、集落形成に伴う集団の移動が頻繁になる傾向が示された。すなわち、遺跡は範囲を持っているが、往時の弥生時代の集落と1対1で対応するものではなく、これまでの研究で集団の下位に多様な分節を持っていることが明らかにされている。遺構の群集により基礎単位の拡がりの明確化を求めた考え方だが、高地性集落の中には300m以上の範囲を有する例があり、居住域枢要部の精度の高い把握が不可欠である。また、可視領域もどの地点を選択するかにより大きく変化することが予測され、踏査活動により補い、適正な観測地点の選択が要請される。GIS眺望分析については、地域ごと、時間軸ごとの傾向把握と群棲分布する地域の動態分析を進め、分布密度や立地格差の示唆する社会背景について、人文・自然の両領野から評価を行うとともに、研究機関や自治体ごとの個別遺跡の眺望分析と立地特性をめぐる考察をミクロに進めて、ケーススタディのデータの蓄積を積極的図る。こうした地域研究と総合研究を併せ、融合して着地点を目指すことが不可欠である。貝塚・貝層を有する生業や生産形態の特殊性が看取される高地性集落のデータ蓄積を活かした広域的な視点からの分析も進めたい。 次年度をもって本科研の事業が終了するので、本研究の成果の特徴と課題を平易に開陳する研究普及シンポジウムを計画し、下半期末期に開催する。残された課題と向後の展望についても言及する。また、高地性集落データベースの格納方法や公開方法など、再現性に配慮した基盤データの共有化を目指す必要がある。加えて、産地や成分分析が必要とされた弥生後期の和泉市惣ヶ池鏡について、自然科学的分析を外注する。
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