研究課題/領域番号 |
20H01360
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
鈴木 裕明 奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 特別研究員 (90260372)
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研究分担者 |
青柳 泰介 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部学芸課, 係長 (60270774)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | 木材利用 / 古墳時代王権中枢 / 古代東アジア / 木製威儀具 / 木製残材 / 木材利用体系 / 木製品消費地 / 刳物腰掛 / 木材生産地 / 木製樹物 / 木材生産 / 木製品消費 |
研究開始時の研究の概要 |
古墳時代開始期の王権中枢の針葉樹を中心とした木材利用体系が外来的(山陰・北陸・琵琶湖湖東・湖南)影響のもと形成された可能性の検討、古墳時代前期後半の巨大古墳の奈良盆地北部への造営地の移動にともなう木材利用体系の変動の検討、古墳時代王権中枢における生産から消費までの木材利用体系の各段階のモデルの構築をそれぞれ行う。また、中国漢代・南朝の王権中枢及び周辺部の木材利用、韓国百済の王権中枢および前方後円形墳造営地域の木材利用を検討し、日中韓の比較を行い、日本の王権中枢の木材利用体系の特性を明らかにする。さらに東アジアの王権中枢の変動と木材利用体系の変化の対応関係についても考察を行う。
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研究実績の概要 |
古墳時代前期~中期の王権中枢の木材利用体系の成り立ちと展開を明らかにするため、令和4年度は主に下記の調査を実施した。 ●古墳時代前期~中期の奈良盆地及び周辺の集落遺跡・古墳出土木製品と形状・木取り等の要素で比較検討する資料の調査。⇒刳物腰掛を対象として、まず古墳時代前期初頭~前半の桜井市纒向遺跡例の再実測(写真実測)を行った。次に弥生時代後期末~古墳時代前期初頭の鳥取県鳥取市青谷上寺地遺跡例と古墳時代前期の山形県山形市藤治屋敷遺跡例に対しそれぞれ熟覧調査を行った。また纒向遺跡にみられる容器脚の成り立ちを考えるため、再実測(写真実測)を行った上で、関連資料として青谷上寺地遺跡例の熟覧調査を行った。さらに木製樹物・威儀具の基準資料である古墳時代中期後半~末の橿原市四条1号墳出土品の写真実測を実施し、既往実測図の補足とともに年輪曲線を図化した。また当該年度に発掘調査され石見型木製品が出土した古墳時代中期末~後期初頭の大阪府羽曳野市峯ヶ塚古墳について、現地でその観察を行った。百舌鳥・古市古墳群では初めてかつ最大の石見型木製品の出土例であり、この段階でもコウヤマキの大径木利用があることが確認された。 ●古墳時代の奈良盆地の集落遺跡・古墳出土木製品の樹種同定及び関連する製材・加工時残材の調査と樹種同定⇒古墳時代中期中頃の奈良市大柳生森本古墳出土木製品の樹種同定、四条1号墳出土木製樹物・威儀具の樹種同定をそれぞれ実施した。また、古墳時代以降の王権中枢の木材生産の継続性・変化を探るため、奈良時代の山添村毛原廃寺出土木製品・残材の樹種同定、奈良市平城京朱雀大路出土木製品・残材の形状・木取り・加工痕などの調査及び樹種同定を実施した。 ●出土木製品集成⇒当該研究における分析対象資料の検討と木製品研究の基礎データとするために奈良県下の遺跡出土木製品集成データベースを追加更新し、補正を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
古墳時代王権中枢の木材利用体系の成り立ちと展開の研究にかかる木製品消費地からの検討資料として刳物腰掛、団扇形木製品、装飾高杯、容器脚などを取り上げ、その比較検討の対象資料として、琵琶湖湖南、北陸、山陰、北部九州、東北に展開する事例の把握をさらに進めた。そのなかで今年度の研究計画に基づいて、刳物腰掛、容器脚については、基準資料である鳥取県鳥取市青谷上寺地遺跡例の熟覧調査を行い、形状・木取りの資料化を行うことができた。さらに当初計画に追加する形で、東北の日本海側に展開する古墳時代前期の刳物腰掛の資料として山形県山形市藤治屋敷遺跡の事例の熟覧調査を実施し、形状・木取りの把握を行い、この段階の北限の事例であることが確認できた。これらの成果についての考察も順調に進めている。古墳出土コウヤマキ製木製樹物の形状・木取りの比較検討では、すでに資料化されている古墳時代中期~後期の奈良盆地・河内平野の古墳出土例をさらに補完するために、木製樹物が最も多く出土している四条1号墳出土品の資料の木取り図などの不足部分の補測、新規資料である峯ヶ塚古墳出土石見型木製品の資料化を行い、研究を進展させている。 木材生産地からの検討では、資料化した古墳時代の奈良盆地東山間部木材生産遺跡の木製残材との比較検討の対象資料として、王権中枢の大阪府大阪市野崎町所在集落遺跡出土木製製品・残材の形状・木取り・加工痕などの調査、古墳時代以降の王権中枢の木材生産の継続性・変化を探るための調査として毛原廃寺出土木製品・残材の樹種同定、平城京朱雀大路出土木製品・残材の形状・木取り・加工痕などの調査及び樹種同定を計画通りに実施した。この成果の一部については令和5年度に公表する予定である。 奈良県下の遺跡出土木製品の集成作業については、報告書などで現在公表されている資料のほぼすべてのデータ入力が完了し、補正作業を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究の最終年度である令和5年度には、古墳時代王権中枢の木製品消費地の集落遺跡出土木製品について、刳物腰掛、団扇形木製品、装飾高杯、容器脚などの精巧な木製品を題材に、その成り立ちにおける弥生時代~古墳時代前期初頭の西日本各地域からの影響の研究成果をまとめる。並行して対象資料のなかで形状・木取りなどの把握において補完の必要な部分についての熟覧調査を実施する計画である。古墳出土木製品については、当該研究において三次元レーザー計測・写真実測によって形状・木取りが資料化された古墳時代王権中枢のコウヤマキ製木製樹物を題材にして、その木材利用の変遷を王権中枢の変動と対比させて考察する。 古墳時代王権中枢に木材・製品を供給したとみられる奈良盆地東山間部の生産遺跡については、大柳生遺跡群から出土している製材・加工時残材や製品の形状・木取りの把握と分類、樹種同定などの調査を行い資料化したものを古墳時代の大阪平野や琵琶湖湖南の残材資料と比較検討した研究成果をまとめる。また当該研究で把握した北部九州~北陸の日本海側の古墳時代木材生産地の資料から、古墳時代王権中枢の生産地から消費地への木材利用体系の形成過程に関する影響の考察を行い、その研究成果をまとめる。 新型コロナウィルス感染症流行により、古代中国及び韓国における古代王権中枢と周辺の消費地の木製品の形状・樹種・木取り・年輪曲線・加工痕などの資料化は計画通り進捗しなかったが、そのなかで当該研究で収集した資料をもとに、古代中国・朝鮮半島の王権中枢と日本の古墳時代王権中枢の木材利用について比較検討した研究成果をまとめる。その検討作業にあたって、海外渡航可能であれば、当該比較研究の補完として韓国の三国時代集落遺跡・古墳出土木製品の資料調査を実施する。 最終的には上記の研究成果を報告書としてまとめ刊行する。
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