研究課題/領域番号 |
20H01363
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
廣瀬 覚 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (30443576)
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研究分担者 |
木村 理 岡山大学, 文明動態学研究所, 助教 (10881485)
山本 亮 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 研究員 (30770193)
和田 一之輔 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (40416409)
松永 悦枝 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (40625927)
東影 悠 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部企画課, 指導研究員 (60470283)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
14,040千円 (直接経費: 10,800千円、間接経費: 3,240千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2020年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 埴輪 / 王権 / 生産 / 流通 / 三次元計測 / 巨大古墳群 / 王権構造 |
研究開始時の研究の概要 |
奈良市佐紀古墳群は、4世紀後半~5世紀代にかけて造営された王権中枢部を構成する巨大古墳群であり、いわゆる「畿内五大古墳群」の一角を占める。これまでの調査により、各古墳の埴輪資料が豊富に蓄積されていることに加え、5世紀代の埴輪生産遺跡(平城宮東院下層埴輪窯)も検出されている。本研究ではこの佐紀古墳群の埴輪を中心的素材とし、生産地と消費地双方の出土資料を一体的に分析し、埴輪の生産・流通体制を多角的かつ実証的に跡付ける。この作業により、王権中枢部を構成する巨大古墳群の造営体制や階層構造がこれまで以上に鮮明となり、古墳時代における王権構造の理解が深まることが期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究は古墳時代中期の奈良市佐紀古墳群とその埴輪の生産地である平城宮東院下層埴輪窯を対象とし、埴輪の生産・流通体制を多角的かつ実証的に跡付け、王権中枢部を構成する巨大古墳群の造営体制や階層構造を解明することを目標とする。 本年も引き続き、東院下層埴輪窯、およびその周辺から出土した埴輪を三次元モデルとして資料化する作業に鋭意取り組んだ。本年度中にピックアップ済の全資料に対して、デジタル画像を撮影し、Agisoft社のMetashape Proを用いて三次元モデルを作成する作業を完了させた。さらに、完成したモデルを実測図用に加工する方法をマニュアル化し、アシスタントにも共有して同作業に着手した。また、昨年度来、進めてきた対象資料のハケメパターン抽出作業についても、抽出可能な資料についてはすべて基本パターンの抽出を終えることができた。 胎土の科学分析については、野焼き⇔窖窯焼成、褐・橙色⇔白色との対応関係を考慮しながら、ICP分析による高精度材料調査と通常の蛍光Ⅹ線分析の両者の分析値の相違を検証した結果、見た目の色調の相違よりも、野焼き⇔窖窯焼成の差の方が分析値に有意な差が存在する見通しが出てきた。すなわち、同じ平城宮東院下層埴輪窯においても、時期差、ひいては主たる供給古墳の相違によって、使用胎土の採取地が微妙に異なる可能性が浮上した。今後のサンプル数の蓄積により、製品の流通経路がかなり鮮明化できることが期待される。 関連する土師器・須恵器資料、他機関資料についても、分担者、協力者が鋭意、資料の図化や分析を実施し、成果の一部を論文・報告書等で公表した。2023年1月13・14日には、分担者・協力者が参加して検討会を実施し、奈良県立橿原考古学研究所所蔵のヒシャゲ古墳出土埴輪の実見・検討をおこなうとともに、今年度の進捗状況と来年度の作業計画について、確認および意見交換をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
過去3年間は、生産地である平城宮東院下層埴輪窯およびその周辺出土資料の整理、記録化に重点を置いてきたため、消費地である古墳出土資料の検討・記録化が大きく遅れている。生産地において、当初、予想していたよりも重要な資料が多数出土しており、対象資料のボリュームが増大したことがその一因である。また、三次元計測による記録化は、高精度かつ客観的なデータ収集ではあるが、その分、作業に一定の時間を要するのも事実であり、さらに、三次元モデルから二次元の図面データを作成する作業にも時間を要することが見込まれる。 もとより、過去3年間は新型コロナウィルス感染症の拡大により、思うように作業を遂行できなかったことは否めない。佐紀古墳群出土資料を所蔵する期間は複数にまたがっており、分担者・協力者一同に会して、かつ機関をまたがって資料を比較・検討する作業については、新型コロナウィルス感染症に収束の目途がついた今後、本格化せざるを得ないのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、遅れている消費地資料の三次元計測を学生アシスタントを動員して、精力的に遂行する。期間内にすべての資料を計測することが困難な場合は、既存の実測図などを使用して、中期の佐紀古墳群出土埴輪の悉皆的な集成作業を完了させる。また、胎土分析については、型式学的特徴の把握にもとづいて、対象資料を絞り込み、適切な質と量にもとづくサンプルを確保するよう心掛ける。 以上のような作業と並行して、報告書編集作業を鋭意進める。埴輪の資料集成については、データが完了したものから、順次、レイアウトを進め、図版として完成さえていく。報告書の執筆分担については、これまでの検討会、打合せを通じて、分担者・協力者間で合意形成ができており、それにもとづいて文章の執筆も効率的に進めていく。
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