研究課題/領域番号 |
20H01377
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03060:文化財科学関連
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研究機関 | 東亜大学 |
研究代表者 |
鵜澤 和宏 東亜大学, 人間科学部, 教授 (60341252)
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研究分担者 |
關 雄二 国立民族学博物館, その他部局等, 名誉教授 (50163093)
瀧上 舞 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究員 (50720942)
江田 真毅 北海道大学, 総合博物館, 教授 (60452546)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
14,040千円 (直接経費: 10,800千円、間接経費: 3,240千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2020年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 古代アンデス / 人と動物の関係 / 総合資料学 / 動物考古学 / 家畜化 / 動物利用 / 儀礼 / 象徴 / アンデス文明 / 考古学 / 生物考古学 / 文化財科学 / 動物 / 社会統合 / 動物遺存体 / 文化財化学 |
研究開始時の研究の概要 |
日本調査団は半世紀以上にわたって現地調査を継続し、古代アンデス社会が神殿の造成とそこで行われた祭祀によって結ばれていたことを明らかにしてきた。この成果を基盤として、祭祀行為の中核的要素であった動物儀礼や饗宴行為を復元し、動物文様の分析と照合して古代社会の世界観を探求する。 本研究の推進にあたり、一つの資料に対して複数の視点から情報を抽出する総合資料学の考え方を導入する。生業や宗教儀礼など、従来は個別に論じられていた動物利用を「人と動物の関係」という枠組みに落とし込むことで、近代的世界観では解釈が難しい古代社会の原理と諸活動について理解を深めることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、具体的に3つの課題を設定して実施している。第1課題は考古動物相の高精度同定、第2課題は家畜飼育開始時期と不平等社会出現の時差確認、第3課題は饗宴儀礼と食物連鎖を暗示する図像解釈の解明である。 昨年度に続き、今年度もペルーにおける現地が実施できなかったため、本研究課題に先行しておこなってきたプロジェクトで収集し、未分析であった資料を活用し、国内において研究を遂行した。また、海外研究者とのオンライン会議、ワークショップ開催等をおこなって、研究の進展をはかった。 今年度の主な成果は、第2課題として設定した初期ラクダ家畜の利用に関する問題について、着実な進展をみたことである。ペルー北部のアンデス高地において、紀元前800年から500年頃までにリャマ飼育が開始されたことは本研究課題によりすでに明らかにされていた。またリャマの導入が神殿の儀礼活動にもっぱら用いられていたことも判明している。今年度は、ペルー北部高地における初期リャマ家畜の利用を遺跡間で比較し、神殿社会における社会の複雑化過程と家畜開始の相関関係を検証した。その結果、当地域を代表するパコパンパ遺跡とクントゥルワシ遺跡で、リャマの利用に顕著な違いが確認され、リャマの飼育を担った集団との関係に相違があったことが示唆された。 こうした知見を、動物考古学、同位体化学など、学際的な分析によって確認して論文化した。研究代表者と研究分担者2名による合計4報の論文を含む成果論文が、Anthropological Science誌において特集号として発行したほか、さらに3報の論文を含む論集の出版を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたペルーでの現地調査を実施できなかったため、新たな発掘データおよび分析サンプルの入手が行えなかった。このため、本研究課題で解明を目指すとした研究の一部に遅れが生じている。一方で、本研究課題に先行しておこなってきた調査で収集したサンプルおよびデータの分析をすすめたことで、想定よりも大きな成果があがっている点もある。具体的には、古代アンデス社会における初期ラクダ家畜の利用と、社会の複雑化過程との関係に関する知見である。形成期アンデス社会において、リャマが神殿における儀を目的として導入されたことがすでに明らかになっているが、リャマ導入は各地域で一律に進行せず、それぞれの神殿社会がもつ社会的ネットワークにも影響を受けていたことが明らかになってきた。こうした新知見を複数の論文として発表しており、現地調査の遅れを考慮してもプロジェクト全体の成果は上がっていると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
海外渡航の制限が緩和されたきた。次年度においては、小規模であっても現地調査を実施できる見込みが得られている。現地調査をおこない、サンプルの採取、分析を着実に実施する。とくに研究課題(1)考古動物相の高精度同定については、現地調査においてサンプルが得られ次第、着手する。 本研究課題は研究代表者のほか3名の研究分担者で推進しているが、全員がペルーでの調査に参加できない場合は、現地とオンラインでコミュニケーションをとり調査を進めることとしている。また先行研究課題で収集したサンプルを活用し、国内での分析を継続する。 調査研究と並行して成果論文のとりまとめも進めており、複数の原著論文、書籍出版を予定している。
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