研究課題/領域番号 |
20H01386
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04010:地理学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
梶川 義幸 神戸大学, 都市安全研究センター, 特命教授 (20572431)
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研究分担者 |
山浦 剛 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 技師 (00632978)
那須野 智江 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), グループリーダー (20358766)
横井 覚 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(大気海洋相互作用研究センター), グループリーダー (40431902)
松本 淳 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (80165894)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | アジアモンスーン / 降水システム / 島嶼域 / 気候システム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は、これまで急峻な地形と複雑な島嶼が十分に表現できない解像度で扱われ、未解明であった西部北太平洋モンスーン域の中核的な「陸」であるフィリピン諸島に着目し、フィリピン諸島を表現可能な(1)高解像度数値シミュレーションによる感度実験と(2)高密度な現地観測データを用いることによって、西部北太平洋モンスーンにおける降水特性を日変化から年々変動までのマルチタイムスケールで再描写し、大気大循環モデルにおける降水の再現性向上に直結する「本質的に重要な時空間スケールおよび物理過程」を解明する。また、東アジア・東南アジアの気候システムに対する影響を考察する。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、急峻な地形と複雑な島嶼で特徴づけられるフィリピン諸島の降水を高時空間解像度で解析することで、大気大循環モデルにおいて再現性が十分でない西部北太平洋モンスーンの降水特性を、日変化を含む対流スケールから季節内変動、季節変動のマルチスケールで解明することである。 現地データ解析研究では、ルソン島北西沿岸部のラワーグ市で過去に実施された、可搬型気象レーダ観測および高層ラジオゾンデ観測を中心とした集中観測データを解析し、降水日変化特性の背景水平風環境場依存性を明らかにした。また、フィリピンにおいて過去の気象観測データを解析し、夏のモンスーン季6~9月の季節内変動の位相が進むにつれて、南から北に向かって、極端降雨の発生が多くなっていく傾向を見出した。また冬季1月のミンダナオ島で発生した豪雨発生の際の総観場として、フィリピン北部への高気圧の張り出し、寒気・暖気移流の強化、寒波吹き出しに伴うシアライン沿いでの水蒸気収束の強化が特徴として見出された。さらに都市気候による気温上昇が顕著にみられることも明らかにした。 数値モデルを用いた研究では、引き続きSCALE-RM を用いたフィリピン周辺域の現在気候実験を行い、解像度を変えた感度実験を開始した。一方で、SCALE-RMにデータ同化システムLETKF、およびETKFを用いたパラメータ推定を簡単に実行できるようなドライバの実装も行い、試行実験の結果、データ同化に伴う降水量再現度は上昇したものの、積雲パラメータの推定には、さらなる調整や実装の見直しが必要であることがわかった。また、全球非静力学モデルNICAMを用いた2018年夏季を対象とする14km格子の標準数値実験を実施すると共に、NICAMを用いた数値実験によるフィリピンを周辺海域での対流活動に関する研究成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍によりフィリピン気象局やManila Observatoryを訪問しての情報交換が困難な状況であったが、研究実施計画に従い、既存の現地データ解析からフィリピン諸島における季節変化の気候学的特徴などを把握したほか、数値実験に向けた数値モデルの設定を進め、試行的な感度実験を解析することで、一定の成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、現地観測データの解析をさらに進めると共に、研究成果をまとめ論文を作成し出版する。特にルソン島西部のバギオ市に設置されている現地気象当局の現業観測レーダのデータを解析し、降水日変化の統計特性やその夏季季節内変動依存性について解析を行う。現地降水観測データを解析することで、フィリピンにおける降水に対する台風・熱帯擾乱の寄与に関して地域特性を明らかにする。また、マニラを訪問し、アテネオ大学マニラ校、マニラ観測所、PAGASA等と今後の共同研究に関する打合せを行うと共に、東京都立大学にて国際会議を開催する予定である。 数値モデルに関しては、より細かい解像度(25km)によるフィリピン周辺域の10年気候平均実験および地形感度実験を行うと共に、使用するSCALE-RMによる再現では降水量過多の傾向を軽減し、降水量の再現性を向上させるチューニングに取り組む。また、NICAMを用いた2018年夏季を対象として、フィリピンの地形を除去した実験の準備を行う。NICAMを用いた既存の気候実験結果の解析も行い、フィリピン・西太平洋域の対流活動の気候再現性を解析し、降水メカニズムを考察する。
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