研究課題/領域番号 |
20H01410
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
桑原 牧子 金城学院大学, 文学部, 教授 (20454332)
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研究分担者 |
中原 聖乃 北九州市立大学, 地域共生教育センター, 特任教員 (00570053)
黒崎 岳大 東海大学, 観光学部, 准教授 (60339637)
吉村 健司 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 外来研究員 (60788727)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2020年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 核実験 / 仏領ポリネシア / マーシャル諸島 / 地域再建 / 身体実践 / フランス領ポリネシア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、仏領ポリネシアとマーシャル諸島の核実験による実験施設近隣の環礁及び軍事基地設置の環礁への影響について、住民の2つの身体実践に焦点を当てて考察する文化人類学的研究である。ここでの身体実践とは、住民が環礁社会の血縁・地縁関係の政治、仏領ポリネシアとフランス/マーシャル諸島と米国間の政治、核保有/非核をめぐるグローバルな政治が絡み合う現状を生きぬくために、自らの身体に基づいて採用する方法であり、身体の生物学化と自然環境と社会構造の変化への身体的適応を指す。研究結果は学術論文にするだけでなく、賠償交渉や地域再建事業における当事者間の対立緩和を図るために、環礁社会の現状報告資料として提供する。
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研究実績の概要 |
本研究は、仏領ポリネシアとマーシャル諸島の核実験による実験施設近隣の環礁及び軍事基地設置の環礁への影響について、住民の2つの身体実践に焦点を当てて考察する文化人類学的研究である。ここでの身体実践とは、住民が環礁社会の血縁・地縁関係の政治、仏領ポリネシアとフランス/マーシャル諸島と米国間の政治、核保有/非核をめぐるグローバルな政治が絡み合う現状を生きぬくために、自らの身体に基づいて採用する方法であり、身体の生物学化と自然環境と社会構造の変化への身体的適応を指す。研究結果は学術論文にするだけでなく、賠償交渉や地域再建事業における当事者間の対立緩和を図るために、環礁社会の現状報告資料として提供することを目指している。 研究開始からコロナ感染拡大のために仏領ポリネシア及びマーシャル諸島への渡航ができない状況が続いたが、2022年から仏領ポリネシア、2023年からマーシャル諸島においても、研究メンバーが実地調査を開始している。人の移動があったり、調査対象であった開発プロジェクトが中止になったりで現地社会に変化があったため、それに合わせて研究の見直しを強いられた。核実験の社会への直接的な影響を引き続き追いながらも、間接的な影響として海水汚染や海洋開発によるシガテラにも着目しており、2023年度は9月23日、24日に研究会を開催し、分担者の中原から「シガテラ毒と核実験の関係に関する先行研究」とゲストスピーカーの飯嶋力氏から「汚染された魚と生きる--聞き書きからみる御所浦島民の『生の複雑さ』」の発表があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍に中断していた実地調査を仏領ポリネシアおよびマーシャル諸島で実施できた。しかし、しばらく現地を訪れていなかったところで、現地社会において大きな変化がみられた。各メンバーの2023年度の研究の進捗状況は以下の通りである。 桑原は仏領ポリネシアのタヒチ島を訪れ、Delegation polynesienne pour le Suivi des Consequences des Essais Nuclairesで核実験被害の補償状況の情報を更新した。日程の都合上、ハオ環礁へは行けなかったが、関係者に聞き取りを行った。中原はマーシャル諸島に関して、日本国内で可能な資料収集を行った。日本の原爆被害調査に加わった米国人医師が、マーシャル諸島の核実験反対運動に関与した資料も得られた。黒崎はフィジーを中心に太平洋諸島フォーラム(PIF)加盟国の閣僚へのインタビューなどを実施しながら、PIF諸国にとっての核問題の重要性が今日でも強く意識されていることを確認した。また、吉村は南洋庁時代に調査、発行された『南洋有毒魚類調査報告』および、これをもとに作成された『中部西南太平洋有用有毒魚類図鑑』から、マーシャル諸島域における有毒魚および食用魚を抜粋し、生物情報を最新のものに更新したうえで情報カードを作成した。
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今後の研究の推進方策 |
上記の社会変化を踏まえて、仏領ポリネシア及びマーシャル諸島において、核実験によって人々の暮らしがどのように変化したかを調査していく。とりわけ、水資源の利用及び漁業について研究を進めたい。また、各メンバーの今後の推進方策は以下の通りである。 桑原はコロナ前に調査をしていた仏領ポリネシアのツアモツ諸島ハオ環礁に戻り、調査を進める。養魚場プロジェクトが中止になったことで経済開発の動きを調べる予定である。中原はマーシャル諸島の現地住民への聞き取り調査を実施し、海洋汚染に関する語りを収集する予定である。渡航は2025年2月を予定している。黒崎は2024年夏期にPIF事務局の設置されているフィジー・スバおよびPIFの中で核問題に最も高い意識をもって取り組んでいるマーシャル諸島を訪問し、近年のALPS処理水問題や豪州の原子力潜水艦建造問題の事例をもとに、PIFにおける核問題の今日的な位置づけについて追加調査をし、同内容について口頭発表や学会誌での発表などを実施する予定である。吉村はマーシャル諸島海洋資源局に対して、有用・有毒魚類について情報提供を求める。情報が得られた場合、有毒魚類に分類されている魚類のうち、実際には食用とされているものは多く、現地での魚食実践の情況について迫りたい。
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