研究課題/領域番号 |
20H01411
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
津村 文彦 名城大学, 外国語学部, 教授 (40363882)
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研究分担者 |
山本 芳美 都留文科大学, 文学部, 教授 (50363883)
桑原 牧子 金城学院大学, 文学部, 教授 (20454332)
山越 英嗣 都留文科大学, 文学部, 准教授 (00843822)
大貫 菜穂 京都芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (20817944)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2020年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | タトゥー・イレズミ / 身体変工 / アジア・太平洋地域 / 感覚 / 情動 / マテリアリティ / 身体 / 物質文化 / イレズミ、タトゥー / イレズミ / 東南アジア / 伝統文化 / マルケサス諸島 / タトゥー、イレズミ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、アジア・オセアニアにおけるイレズミについて、人とモノと制度の観点から分析し、感覚と情動と力の検討を通じて、イレズミが個人と社会を結節させるあり方を明らかにするものである。 これまでイレズミはアイデンティティの問題として論じられてきたが、本研究は身体とモノの融合たるイレズミが、いかに感覚され、いかなる感情を喚起し、いかなる社会関係を編成するのかを明らかにする。それによってエスニシティや象徴、逸脱を準拠枠とする既存のイレズミ理解を刷新することを目指す。
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研究実績の概要 |
令和3年度は「モノ」に注目した。タトゥーマシン、インクなどの道具、身体、デザイン、関連する空間や施設も対象として研究を進展させる。前年度と同様に新型コロナ感染症の影響により、当初計画していた海外・国内でのフィールド調査が困難であったが、文献調査や研究期間の延期などによって対応した。 津村は、タイのバラモン系呪術師の宗教施設におけるモノの配置に注目した。特に関連した儀礼での憑依的経験との関連から、祭壇と神像・仮面などについて情報を収集した。また東南アジアの各地にもそれらのモノが広がっている様子を検討している。桑原は、マルケサスの伝統的なイレズミ施術において彫師が複数の道具を使い分けていたことに注目し、施術道具が改造電気シェーバー、さらにはタトゥー・マシンへと変化する過程でイレズミ文様が変容したことを明らかにした。山越は、沖縄での現地調査は中止せざるを得なかったが、以前の調査データを精査し、イレズミに関連したコミュニティ形成についての議論を深化させた。山本は、国立民族学博物館小林保祥アーカイブを対象として、パイワン民族のイレズミ施術過程や道具の使用法の再現記録を含む1454枚の写真解説文を作成した。沖縄では2022年2月、3月に米軍基地の「門前町」であるコザ周辺で、戦後沖縄タトゥー史について道具に比重をおいた聞き取り調査を実施した。大貫は、東映太秦映画村での調査を行い、片岡千恵蔵の『いれずみ判官』シリーズおよび後継のテレビドラマ『名奉行遠山の金さん』シリーズの脚本、映像などに現れるイレズミについて調査した。研究協力者の南は、ニュージーランドの調査は引き続き断念せざるを得なかったが、ニュージーランドのタ・モコ実践についての資料を収集した。 引き続くコロナ禍のため研究手法の多少の変更はあったが、各地でのイレズミに関連したマテリアリティの情報収集を充実させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、それぞれの研究者が国内外にて現地調査を行う予定であったが、昨年度に引き続いて、新型コロナ感染症の影響により、国内外での調査が困難であった。入国制限のある国や地域へは移動そのものが制限され、国内においても県境を越えた移動が自粛されるなかで、対面でのインタビュー調査を基本とする人類学的研究は困難を極めた。文献調査への切り替えや、調査期間の延期によって対応せざるを得なかったため、当初の予定に比べると進捗にいくらかの不満がのこったが、それ以外の点ではおおむね計画していた研究項目を進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の「人」、今年度の「モノ」の研究成果を踏まえ、次年度は当初の計画通り「制度」に重点を置くとともに、人とモノの複合的な連なりに注目しながら研究を展開させる予定である。またコロナ禍に基づく様々な制限がが緩和されると現地調査が可能になるため、初年度および今年度までに行えなかった一次データの収集に努めたい。 津村は、呪術イレズミの施術師における師匠ー弟子関係のネットワーク、および国家的なレベルでのバラモン=ヒンドゥー教との関連に注目する予定である。桑原は、西洋化・近代化が著しいフランス領ポリネシアと伝統的施術方法を保つ他のポリネシア(サモアなど)では道具使用が大きく異なることから、今後はオセアニア全域において使用される道具と文様の関係について研究を進めたい。山越は、沖縄での現地調査を実施し、日本各地を移動して営業を続けてきた彫師に、タトゥーショップの営業において条例等の規制にはいかなる地域的な差異が存在するのかを調査する。山本は、台湾において、原住民族のイレズミが文化資産に認定される一方で、イレズミを含めた伝統文化が知的財産保護法で保護されている状況に注目する。こうした原住民族関連の法律や文化資産の認定の動向について調査を実施する。大貫は、映画村への調査を継続し、戦後日本におけるイレズミ(ほりもの)イメージの大衆受容の研究に結実させることを目標としつつ、可能な範囲で本来の目的である日本伝統刺青の系譜にある彫師の技法について調査する。研究協力者の南は、フィールド調査等により、ニュージーランド社会や先住民の世界的ネットワークの中で復興、変化を続けるタ・モコの現状について検討する。
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