研究課題/領域番号 |
20H01435
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
深町 晋也 立教大学, 法学部, 教授 (00335572)
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研究分担者 |
仲 真紀子 立命館大学, OIC総合研究機構, 教授 (00172255)
石綿 はる美 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10547821)
後藤 弘子 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (70234995)
久保野 恵美子 東北大学, 法学研究科, 教授 (70261948)
矢野 恵美 琉球大学, 法務研究科, 教授 (80400472)
成瀬 剛 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 准教授 (90466730)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2020年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 児童虐待 / 性犯罪 / 司法面接 / 児童性犯罪 / ストーカー / 家族と刑法 / 体罰 / 性的虐待 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、主として親によって子に対して行われる虐待について、それが「家庭」という場で行われることに着目し、こうした「犯罪の温床」としての「家庭」の構造分析を行うことを前提としている。そして、こうした分析をもとに、「家庭」が、①弱者に対する犯罪又は問題事象が生じやすい場であり、かつ、②いったん生じた犯罪又は問題事象が隠蔽されやすく、それゆえに③継続的にそうした事象が生じやすい場である点を考慮した上で、児童虐待の抑止のために必要な法的施策を講じるための法的スキームを構築することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度の研究実績のうち、研究代表者に関するものとしては、①日本刑法学会において児童に対する暴力に関するワークショップ(WS)を開催したこと、②①の成果も踏まえつつ、児童虐待・児童に対する暴力に関して、法学専門誌における特集を企画して論稿を公刊したこと、③児童虐待に関連するテーマとしてストーカー規制立法に関するドイツ刑法2021年改正についてドイツにおける調査を行ったこと、④③における調査を元にして同改正の具体的内容及びその意義を分析しつつ、日本におけるストーカー行為等規制法について検討した論文を公刊したこと、に分けることができる。また、研究分担者は、上記の①及び②において報告・論文の公刊を行うなどした。 ①については、日本刑法学会第100回大会のWS「児童に対する暴力」を研究代表者がオーガナイズし、児童に対する暴力を巡る刑事実体法・訴訟法、刑事実務の問題を広く検討した。研究分担者である成瀬剛准教授はAHT/SBSに関する報告を行った。 ②については、1)法学専門誌における特集をオーガナイズし、①のWS報告の成果を論文として公刊した。また、2)法学専門誌において、児童虐待を巡る分野横断的な検討を行う特集をオーガナイズし、児童虐待の刑法的規律について論じた。また、研究分担者の仲真紀子教授、久保野恵美子教授、及び石綿はる美准教授もそれぞれ論稿を公刊した。 ③については、ストーカー行為を処罰するドイツ刑法238条に関する2021年改正の立法的背景及び改正の意義・問題点を調査すべくドイツに研究滞在を行い、ケルン大学のThomas Weigend名誉教授、及びイェナ大学のEduard Schramm教授にそれぞれインタビュー・ディスカッションを行った。 ④については、法学専門誌において、③の成果も踏まえた上で日本のストーカー行為等規制法令和3(2021)年改正に関する評価・分析を行う論文を公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、①学会における報告、②複数の法学専門誌における児童虐待をテーマとした特集の企画・公刊、及び③短期の在外研究に基づく論文の公刊といった多角的な研究の推進及びその成果の公表を行った点において、研究代表者及び研究分担者による協働による研究遂行が、当初の計画以上に進展しているものと評価できる。 ①については、日本刑法学会のWSにおいて、研究代表者が「児童に対する暴行」をオーガナイズし、児童の性的虐待、特に監護者性交等・わいせつ罪の現状分析を行い、研究分担者がAHT/SBSを巡る判例・裁判例や学説の議論状況を検討した。 ②については、1)①の成果を論文として公刊することに加えて、2)刑事法以外の分野横断的な視点から児童虐待という現象を分析しつつ、その対応につき「支援・介入・刑罰」という段階的な構造を有する点を明確化した特集を企画し、複数の研究分担者が、主として「支援」「介入」に関する民事法的な議論を詳細に検討し、また、「介入」「刑罰」という観点から重要となる司法面接に関する議論を考察した。 ③については、児童虐待それ自体ではないものの、児童虐待と連動し得るテーマとしてドイツで問題となっているストーカー行為につき、ドイツ刑法2021年改正の内容を詳細に分析・検討した上で、日本のストーカー行為等規制法における「恋愛感情等充足目的」要件の撤廃の可否について研究を進め、論文を公刊した。 以上のように、本年度においては児童虐待に関する横断的研究が極めて進展し、その成果が着実に公表されているものと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度においては、①これまでの研究成果を踏まえつつ、最終年度において児童虐待の対応に関するスキーム構築を推進すること、②児童虐待に関連する複数のテーマに関して比較法的な視点も考慮しつつ研究を推進することの2点が研究方針として挙げられる。 ①については、児童虐待という問題事象が多様な形態で問題となることから、一律に刑事法による解決が望ましいわけではなく、「支援・介入・制裁(刑罰)」という段階的対応の中で問題解決を図ることを推進しつつ、様々な法分野の連動を強めるためのスキーム構築を進めていくことを予定している。 ②については、児童虐待に関連する様々な問題領域、例えばストーカー規制や親による児童の拐取といった、親による子の健全な成長・発達を阻害し得る行為を広く視野に入れた上での問題把握・分析を行うことを予定している。特に、研究代表者は台湾やドイツ語圏各国におけるこれらの問題領域の調査・分析を行うために、それぞれ短期の研究滞在を行い、現地の研究者と共同して研究を推進することを予定している。
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