研究課題/領域番号 |
20H01467
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06020:国際関係論関連
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研究機関 | 国際教養大学 |
研究代表者 |
堀井 里子 国際教養大学, 国際教養学部, 准教授 (30725859)
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研究分担者 |
柄谷 利恵子 関西大学, 政策創造学部, 教授 (70325546)
杉木 明子 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (40368478)
上野 友也 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (10587421)
大道寺 隆也 青山学院大学, 法学部, 准教授 (70804219)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
14,690千円 (直接経費: 11,300千円、間接経費: 3,390千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2020年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | refugee protection / international regime / security / humanitarianism / UNHCR / 難民 / 国際レジーム / 第三国定住 / 自発的・非自発的帰還 / 人道主義 / 難民の当事者性 / 難民保護 / 国際機構・地域機構 / 帰還 / 人道支援 / 市民社会 / ガバナンス / 安全保障 / 人道主義、人道的介入 / 自立 / 国際難民保護レジーム / 当事者 / 国際機構 / 国連安保理 / NGO / 欧州 / アフリカ / 国際・地域機関 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、国際難民保護レジームの実態を「変容する理念」、「多層にわたる保護主体」、「多様性に富んだ保護の実践」という三つの側面から実証的・理論的に分析することである。 「理念」については従来の規範・原則の運用実態と新たな思想的潮流との相互作用を、「保護主体」については難民保護主体である多様なアクターが果たす役割や主体間の関係性を、「実践」に関しては異なる概念間の妥協や融合が実践のあり方にいかなる影響を与えているかをそれぞれ調査する。 上述の作業を通して、難民の安全と尊厳がより尊重されるような仕組み構築を目指し、国際難民保護レジームが抱える制度的な課題と可能性についての知見を得る。
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研究実績の概要 |
2022年度は以下の活動を行った。堀井はこれまでの調査を基に欧州における難民起業支援の現状とNGOの役割を日本国際政治学会研究大会(10月、仙台市)で報告した。このため、科研課題全体としての活動のための準備を除き、年度前半はもっぱら研究大会のためのペーパーの執筆および報告準備に集中した。学会報告の際にもらったコメントから国際機関が難民の「自立」促進を強調する政策言説の醸成に影響したのか、またその点に関してどのような活動を行い、関係団体とどのような協力体制を構築してきたかを理解すべく、2023年3月にジュネーブを訪れILO、IOM、UNHCRの職員から話を聞いた。大道寺は、EUによる「押し返し(pushback)」政策について理論と実証の両面から論じ、EU立憲主義の可能性と限界を論じた。上野は、文民の保護における限界と可能性を南スーダン国連平和維持活動を事例として考察し、集団安全保障レジームと難民保護レジームが補完と相克という異なるベクトルを有する関係性を有していることを明らかにした。柄谷は、難民の第三国定住受入に関するUNHCRの役割と意義について批判的に検証した。とりわけ本研究課題にとって重要な「当事者性」が何を意味するかについて、難民の過程や地位、権利/ニーズを軸に論じ、非常に有意義な考察と視点を(第二回研究会で)提示した。杉木は、難民の自発的帰還について調査を進めた。同年度に行った講義・発表には日本国際政治学会研究大会における研究(中間)成果報告も含まれる。 全体的には、定例研究会を二回行った。初回では小川裕子先生(東海大学)をゲスト講師としてお迎えし、グローバル・ガバナンス論の理論的動向をご講義いただいた。お話には国際レジーム論の動向も含まれており、また両理論の長所と短所について研究者間で多くの議論がなされている中、大変有意義な会となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度も前年度までと同様に、研究者それぞれが文献収集・読解および可能な限りでの現地調査や分析作業を行い、調査を進展させた。とはいえ新型コロナウィルス感染症による行動制限の影響が大分薄まりつつも存在した。さらにロシアによるウクライナ侵攻も発生したため欧州行きの国際航空運賃が大きく値上がりした。そのため、オンラインと対面、ヴァーチャルとリアルな移動を可能な限り併用して研究することになった。海外出張については堀井がジュネーブへ2023年3月に出張し、各国際機関の職員に対して聞き取り調査を行った。オンラインよりもリラックスした環境で突っ込んだ質問ができ、対面の有用さを痛感した。海外出張などデータ収集については全体的に実施の遅れがみられたが、本研究課題の研究者同士で定例研究会を開催し、少しづつ重要な概念などについて理解を深めた。最後に、学術雑誌への投稿論文や学術書の刊行は従来通り複数年行われている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2023年度は、海外・国内移動が円滑にできるようになったため(欧州方面については依然ロシア・ウクライナ戦争の影響を否定できないものの)各人がそれぞれ資料収集や現地調査を積極的に行い、また科研課題全体としての成果物を出すための活動を行っていく。 個別の調査計画は以下の通りである。堀井は6月末に欧州連合(EU)の招待でブリュッセルを訪問し、EUレベルの政策的動向について調べる予定である。また、それとは別に2021年にオンラインで聞き取りをした英国とフランスのNGOを訪れ実態の確認を計画している(秋~冬)。ほか、8月はロシアによるウクライナ侵攻以後の難民保護に関する国際協力の現状について、欧州に焦点をあて国際学会で報告予定である。上野は、国際安全保障理事会が主導する集団安全保障レジームが難民保護レジームに与えた影響を補完と相克を鍵として解き明かす。柄谷は、第三国定住受入拡大とUNHCRの役割についてこれまでの調査を基に、学会報告および論文執筆を進める。杉木は、これまでの調査をさらに深め、難民および庇護申請不認定者の帰還・送還の実態の調査を欧州・アフリカでの対応の差異などを含め検討していく。 全体の計画としては、まず難民の「当事者性」および枠組みである国際難民保護レジームの性質について再度整理し、成果物の一つとして目標としている書籍の出版のためにその構成などについて研究会などでメンバー間で議論し中身を詰めていく。また本年度に続いて来年度も日本国際政治学会研究大会(11月、福岡市)でパネルを組み研究成果を報告する(柄谷・上野・大道寺)。さらに定例研究会のほか、ゲスト講師を招へいし対面・オンラインでワークショップを開き知識のブラッシュアップに努める。
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