研究課題/領域番号 |
20H01481
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07020:経済学説および経済思想関連
|
研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
小峯 敦 龍谷大学, 経済学部, 教授 (00262387)
|
研究分担者 |
藤田 菜々子 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (20438196)
金子 創 大分大学, 経済学部, 准教授 (20737639)
野原 慎司 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 准教授 (30725685)
高見 典和 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60708494)
中井 大介 近畿大学, 経済学部, 教授 (70454634)
寺尾 範野 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (80735514)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2020年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
|
キーワード | 良き社会 / 公共善 / 新自由主義 / 経済思想 / ミドルデータ / 新しい資本主義論 / 計量テキスト分析 / 経済学の歴史 / ビッグデータ / 自由主義 / コーパス / 定量テキスト分析 / 共通善 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、経済学の歴史300年余で蓄積されてきた《良き社会》論の学説を手がかりに、共通善(社会を構成する個人が共通に持つ利益)を指向する社会、すなわち経済的効率性・社会的公正・個人的自由がバランスする社会を実現する条件を探る。 本研究は、3つの時代区分(①1720-, ②1870-, ③1970-)各々に最も適合的な新機軸のテキスト解釈法を採用し、その時代を象徴する《良き社会》論・「共通善」の変遷を効果的に抽出・公開することにある。最終的に、社会科学たる経済学の強み(定量的・モデル分析)を拡張させ、弱み(社会的考察の希薄さ、多様な公共空間の軽視)を低減させることで、良き社会の指針を提供する。
|
研究実績の概要 |
●本年度の研究実績に関して、そのハイライトは次の研究会における質疑応答・討論である。第75回経済思想研究会2022年8月19日(金)13:30-18:00 オンライン(zoom)による開催(主管:山形大学)この第一報告において、「ナラティブ・アプローチと地域企業-嗜好品飲料の事例」と題する大学院生の報告に対して、討議を行い、物語(ナラティブ」という新しい視点を計量テキスト分析に含められるかという視点を提供した。 ●第二報告において、研究代表者が「「新しい資本主義論」の勃興-2020年代の「脱資本主義論」と比較する」と題して、報告を行った。この報告は、21世紀における「良き社会論」の典型を含んでいると思われる「新しい資本主義論」に関して、その内外の啓蒙的・専門的文献を網羅的に紹介しつつ、次のような類型に分けた点が新しい。すなわち、「暴走する資本主義」に対して、「希望の資本主義論」という類型では、地域的・倫理的・環境試行的な意識に基づいて、分散型・水平的な関係を志向し、オープンで透明な参加券を持つ組織を中核とする市場社会である。ここにはもはや「市場vs政府」という単純な二分法は存在しない。 ●さらに、資本主義に懐疑的な勢力としては、その規制や廃止をうたう「脱資本主義論」はあるが、少数の例外を除いて、明確なビジョンが描きにくいという特徴を持つ。「新しい資本主義論」が楽観的なのは、デカップリング(経済成長と環境負荷の切り離し)を信頼し、際限の無い価値増殖運動を止めうる市場機能をさらに信頼しているからだという知見を得た。 ●なお、研究協力者である山尾忠弘氏(大阪経済大)をロンドンに派遣し、ロンドン大学周辺におけるミル研究、ベンサム研究の最前線について、一次史料の発掘とともに、知見を広めてもらった。その成果を2022年秋に、慶應義塾大学にて共同研究者と共有した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
●本研究の根幹として、海外における一次文献の情報源(デジタル化されていない多くの原典)に実際に赴き、そのうちどのようなデータベースが本研究にとって有用であるかを見極める必要がある。コロナ禍も3年間を迎えており、近年、感染症の電波はある程度安定を見ており、ようやく海外渡航の再開が具体的な視野に入ってきた。オンライン会議もいくつか経験していくうちに、対面による情報交換の有用性に匹敵するような有用性を得る場合も出てきた。
●コロナ禍も4年目を迎えるにあたり、新機軸の本研究を進めようと尽力しているが、「再現セミナー」等の当初の計画はすべて中止せざるを得なかった。しかし、その代わりとして、新聞データベースの有用性を再確認しており、中でもinstant data scraperというcrome拡張機能を用いることで、相手側サーバに負担をかけることなく、また規定を守ったうえで安全に大量のデータを収集できる技法をある程度は身につけた。Octoparseというソフトによるスクレイピングも有用であると判明した。
●そのため、比較的データベースの揃っていて、数十年単位で同じキーワードを追える新聞記事検索に収集して、本研究の遅れを取り戻すべく、尽力を重ねた結果、おおむね、当初の大きな目標である「良き社会に関するミドルデータの構築」の一応の終結が具体的に視野に入ってきた。他にも、Web Teeet Crawler等、最終年度の集中的情報収集に向けて、大方の準備が整っている。
|
今後の研究の推進方策 |
●新聞データベースの有用性を改めて認識しなおしている。このデータベースは他と異なり、およそ40年間ほどの期間に継続して、日付、媒体名、キーワードなどを外部変数にした上で、記事本文というテキストデータの内容分析が可能になっている。その意味で、非常に安定的なデータベースとなっている。何よりもOCRをかけた結果を精査しなければならない他のデータベースよりも、識字率が完璧となっており、安定的な結果が予想できる。
●特に、日経テレコン21(日本経済新聞)および毎索(毎日新聞)においては、大量のテキストデータを規約に反しない限りで、労力をさほどかけずに収集できる技法があることが判明している。最終年度においては、このデータベースに資源を集中することによって、有意な結果を得たい。
|