研究課題
基盤研究(B)
テキストデータ、画像データ等を含んだ大規模なデータ(ビッグデータ)を処理するための機械学習手法は近年急速に進化しており、経済分析への応用範囲も益々広がっている。この機械学習的なアプローチの利点を生かし、既存のマクロ計量経済分析の手法と組み合わせることによって、大規模なマクロデータの根拠に基づく(evidence-based)マクロ経済政策を目指した計量手法を開発し、現実のデータに適用する
テキスト情報を利用して、政府統計よりも速報性の高い景気動向指数を作成するために、重要な単語の出現頻度に着目する辞書アプローチと、自然言語処理のモデルをテキストデータから学習する機械学習アプローチの2つの方法の比較を行った。前者の計算では、ドメイン横断型ではなくマクロ経済のドメイン特化型極性辞書を用いた場合、収録単語数が比較的小さい場合でも迅速な景気判断の目的には十分有用であることが確認された。一方、予測精度に関しては、モデルの更新及びモデルの学習のコストが高いことを許容すれば、後者のアプローチが有効であることも確認された。動学的なマクロ経済理論モデルでは、経済主体の情報更新の遅れや情報ノイズの存在が政策効果を変化させる可能性が指摘されてきた。前者は粘着情報モデル、後者はノイズ情報モデルと呼ばれている。現実のインフレ予想データを用いて両モデルを推定することでマクロ経済状態に関する家計の予想形成が、マクロ経済モデルの政策効果に対してどの程度影響するかという点を検証した。分析の結果、どちらの枠組みも有効であるが、ノイズ情報モデルによる分析がより望ましいという結論が得られた。標準的なマクロ分析の時系列モデルであるVARモデルを用いて、国債市場の不確実性ショックや予期しない金融政策ショックが日本のGDPやインフレ率に与える影響を分析した。前者のショックの識別には新聞記事データと機械学習の手法、後者の識別には金利先物市場の高頻度データと操作変数法の手法を採用した。分析の結果、不確実性ショックが、一時的に経済活動を縮小させるものの長期的に活性化させる点や、フォーワードガイダンスを含んだ非伝統的金融政策の有効性が確認された。これらの研究成果を学術雑誌に出版し国際学会で報告した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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