研究課題/領域番号 |
20H01488
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
前田 章 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30317309)
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研究分担者 |
石島 博 中央大学, 法務研究科, 教授 (20317308)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2020年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | ESG / アナリティクス / 投資分析 / 環境 / ガバナンス / 枯渇性資源 / U字カーブ仮説 / 二酸化炭素 |
研究開始時の研究の概要 |
近年企業活動のあらゆる局面で環境・社会・ガバナンス(ESG)に配慮した活動が尊重されるようになってきている.実業界では学術界に先行し,ESG投資なるものが進んでいるが,その実態は課題だらけであると言わざるを得ない. 本研究ではこうした問題意識のもと,ESGに係る質的および量的情報の計量化を行い,ESG評価の指標を作成する.その上で,ESG投資評価・分析のための新たな投資理論を構築するものである.全体を3つのフェーズ[1]ESG評価指標の鑑定と統合指標の作成, [2]ESG情報開示の計量化と効果分析,[3]ESG投資の基礎理論,に切り分け,包括的な枠組み構築を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究ではESG投資と周辺の課題について3つのフェーズ[1]ESG評価指標の鑑定と統合指標の作成, [2]ESG情報開示の計量化と効果分析,[3]ESG投資の基礎理論,に切り分け,最終的に包括的な枠組み構築を目指すこととした.2022年度は前年に引き続き[3]の研究を進めつつ,[1]および[2]に取り組んだ. [3]の基礎理論としては前年に引き続きESGを考慮した資産評価モデルを検討した.今年度の検討においては,資産の超過リターンをキャッシュフローリスクプレミアムとESGリスクプレミアムに切り分けるモデル構成を行った.この結果は国内開催の国際会議や専門研究会で発表し,京都大学数理解析研究所講究録の一つに収録された. また,ESGの重要な要素である枯渇性資源利用について時間選好の内生性を考慮した価値評価の理論を検討した.枯渇性資源利用の理論研究と内生的時間選好の理論研究にはそれぞれ長い歴史があるが,この二つを組み合わせる理論構築は例がなく,新規性が高いとともに,気候変動をはじめとする長期の環境問題に重要な示唆を与えるものであると確信する.この研究結果はInternational Journal of Economic Policy Studies(Springer発刊)に収録された.さらに気候変動に焦点を絞って社会問題と経済理論との関係性について論考を行った. [1]と[2]については評価指標の鑑定と効果分析をあわせる形で,特定のデータセットを選定し,その計量分析に取り組んだ.選定したデータセットは東洋経済新報社発行の「CSR企業白書」の調査データである.今年度はこのデータの内,企業業績とCSRへの取組みの関係について分析を行い「U字カーブ仮説」を提案した.この結果は国内開催国際会議等で発表された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に続き22年度も世界的パンデミックの中,研究集会・会合への出席など十分な研究活動を行うことができなかった.特に,実開催海外学会への出張がまったくできなかった.ただ,理論的な検討およびデータ分析は着実に進捗しており,2023年度はその成果を携えての各種学会,研究会での情報収集につなげていきたいと考える.特に研究実績の概要でも記した東洋経済新報社発行の「CSR企業白書」の調査データは大変有用なデータセットであることがわかったので,この分析を継続したいと考える.これは国内1500社を超える企業について公表データおよびアンケートデータを組み合わせてCSRとしての取組みを数値化したもので,2007年以降の各年について詳細なデータが公表されているものであり,分析をする甲斐があるように思われる.
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今後の研究の推進方策 |
進捗の項で記したように,過去3年間は世界的パンデミックの中,研究集会・会合への出席など十分な研究活動を行うことができず,当初の計画を十分に達成できなかった感がある.本年度は遅れを解消するべく努力したい. 前々年度からフェーズの順番を若干入れ替えて[3]の基礎理論を早めに着手することにしてきたが,この路線は継続していきたい.一方,研究実績の概要でも記したように,2022年度は企業業績とCSRへの取組みの関係について分析を行い,「U字カーブ仮説」なるものを提案した.これは東洋経済新報社発行の「CSR企業白書」の調査データを試行錯誤で分析したことから着想を得たもので,極めて新規性が高いと考える.当面このデータセットの分析に取り組むとともに,仮説の広範性を示すべく他のデータセットも模索していきたい.
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