研究課題/領域番号 |
20H01515
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福田 祐一 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (00243147)
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研究分担者 |
山根 明子 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 准教授 (60580173)
坂本 淳 大阪学院大学, 経済学部, 講師 (90845025)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2020年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 資産価格モデル / アノマリー |
研究開始時の研究の概要 |
株式リスクプレミアムには、市場ポートフォリオと安全資産の収益率差、企業の時価総額に関する要因、株価純資産倍率に関する要因、収益性に関する要因、投資の成長率に関する要因等が影響することが明らかにされてきた。その一方で、5要因あるいは5ファクターが、なぜ株式プレミアムに影響するのかについては、十分に解明されていない。最近、5ファクターとその関連指標の説明力が再検証され、半数以上の指標が説明力を失うことが示されている。そこで、本研究の目的は、株式ポートフォリオ・リターンの作成を注意深く行い、日本における5ファクターモデルの説明力を検証し、その説明力の生成要因についての知見を得ることである。
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研究実績の概要 |
5ファクターモデルの中で伝統的に説明力が高いと考えられてきた株価純資産倍率に関するファクターの説明力が、最近、低下していることが観察されている。バランスシートの資産額と負債額の差で与えられる純資産価値は、企業がこれまで積み上げてきた純利益の蓄積とみなされ、時価総額の重要な構成要素である将来配当額の原資となる将来純利益と関連している可能性が高い。ところが、最近、人的資本や特許などの評価が容易ではない資産が増加し、これらの純利益への貢献度が高まったことで、貸借対照表から得られる純資産価値と将来の稼得能力の乖離が拡大している可能性が高い。令和4年度は、欧米で分析されている手法を用いて、この可能性を検証したものの、肯定的な結果は得られなかった。この理由として、新型コロナウイルス・パンデミックが影響している可能性が考えられる。また、最近の研究では、経済状況、政治状況、政策対応等の不確実性指標と5ファクターの関係が議論されている。5ファクターと不確実性指標の関係に関する文献渉猟により、不確実性指標の影響を大きく受ける企業は、投資家が情報収集活動を活発化させ、正確な企業情報を得ることで、不確実性指標の影響を低下させようとするインセンティブが働く可能性が高いことが明らかにされている。先行研究では、理論モデルに基づき、投資家が正確な情報を得ることで厚生の改善を図ることができる程度を示す指標としてラーニング・インデックスを開発し、米国のデータを用いて、この指標の有効性を検証している。令和4年度は、この先行研究を参考に、日本におけるラーニング・インデックスを算出し、日本のデータで分析を行ったものの、有効性を支持する結果は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度においては、令和3年度に計画していた海外での学会に参加し、関連分野に関する最新の研究動向を調査することはできなかったものの、国内において文献渉猟やデータ整理を行い、対面あるいはオンライン形式による研究打ち合わせを実施することで、最新の研究動向を把握し、今後の研究の方向性について確認することができた。さらに、今後、実証研究を推進していくための準備として、必要となるデータを追加購入し、それらを用いてデータ整理やいくつかの分析も行った。今後は、より精緻な実証分析を行っていくことが必要となるが、延長した研究期間において対応可能であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策としては、令和4年度の分析結果を踏まえて、さらに精緻な実証分析を進めることである。令和4年度において、株価純資産倍率に関するファクターの説明力の低下が、企業の純資産価値がその企業の将来の稼得能力を反映しにくくなっていることに起因するかどうか分析した。企業純利益の予測モデルから得られる将来の企業純利益の予測値の現在価値を計算し、時価総額との比率がリスクファクターとして機能するかどうか検証したところ、肯定的な結果は得られなかった。令和5年度は、この研究を推進するために予測モデルの精緻化や新型コロナウイルス・パンデミックの影響などについて検討を行う予定である。また、令和4年度には、米国での先行研究で明らかにされている投資家が正確な情報を得ることで厚生の改善を図ることができる程度を示すラーニング・インデックスが、日本の株式収益率に対して有効かどうか分析し、米国とは異なり、高い有効性は観察されなかった。令和5年度は、この結果を踏まえ、モデルを拡張するなど、より精緻な分析を行う予定である。
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