研究課題/領域番号 |
20H01516
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山崎 尚志 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (30403223)
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研究分担者 |
加藤 隆太 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 助教 (90906786)
加藤 英明 名古屋大学, 経済学研究科, 名誉教授 (80177435)
高橋 秀徳 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (90771668)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
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キーワード | コーポレート・ファイナンス / 資産価格理論 / 行動ファイナンス / アノマリー / 歴史的データ / 現金保有 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,わが国の明治,大正,昭和時代の戦前,戦後にまたがる歴史的データを活用し,資産価格理論やコーポレート・ファイナンス理論における種々のパズルの原因を解明する。具体的には,当時の法制度,経済環境,社会環境を前提としながら,株式リターンのモメンタム(持続性)や季節性といった株式市場のアノマリー(従来のファイナンス理論では説明困難な資産価格の歪み),および企業の現金保有や最適資本構成といった企業財務に関する意思決定のメカニズムを歴史的観点から分析する。
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研究実績の概要 |
本研究では,1937年に国内資金使用を調整することを目的に施行された臨時資金調整法に焦点を当て,平和産業に代表される資金統制を強く受けた企業と,軍需産業に代表される資金統制を受けなかった企業が同法施行後にどのような財務行動をとったのかについて,特に近年活発に議論されている企業の現金保有に注目した分析を行った。臨時資金調整法の施行は予期せぬものであり,企業にとっては外生的なショックであったと考えられる。この点は,この出来事を自然実験として扱うことの裏付けとなり,企業の現金保有高に対する資金制約の影響を検証する機会を提供する。 まず,我々は,事業資金調整標準を基に,三菱経済研究所の『本邦事業成績分析』から抽出した企業を資金制約のない企業群(クラスA)から,もっとも資金制約が課せられた企業群(クラスC)に分類した上で,同法が施行された1937年前後における現金保有量の変化を測定した。その結果,1937年を基準としてクラスCに属する企業は,クラスAに属する企業と比較して有意に現金を増加させていたことが分かった。 次に,我々は,臨時資金調整法施行後におけるクラスCの現金保有の増大が業種特性や他の要因によるものではないことを示すために,これらのコントロール変数を加えた回帰分析を行った。その結果,業種ダミーや他のコントロール変数で調整しても,クラスCに属する企業は臨時資金調整後に有意に現金保有を増加させていることを確認した。したがって,クラスCが現金保有を増加させた要因は,クラスCに課せられた資金制約によるものであったことを示唆している。臨時資金調整法は,事業に属する設備の新設,拡張若しくは改良に関する資金の貸付に制約を設けるための法案であり,クラスCの運転資本の資金繰りが悪化した訳ではないことから,クラスCの現金保有増は予備的動機によるものであると推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題が採択されて以降,新型コロナウィルスの影響で,当初データ入力を依頼する予定であった技術補佐員を雇用できなかった期間が長く続いたことにより,分析データの取得に想定外の遅れが生じている。昨年度同様,本年度もデータ入力業務の大部分をデータ入力代行業者に依頼することでカバーしているものの,遅れを完全に取り戻すには至っていない。 さらに,研究分担者の研究継続が困難になったことから,残った研究メンバーで研究全体をカバーすることになり,研究全体に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も1937年の臨時資金調整法による企業の現金保有高に対する資金制約の影響を検証する。資金制約を受けたクラスCにおける現金保有の増加が予備的動機によるものであれば,成長性が高い企業ほど,将来の投資機会を確保するために現金を保有することが考えられる。そこで我々は,クラスCとクラスAのそれぞれにおいて,どういった企業特性が現金保有に影響を及ぼしているかについて検証を行う。 次に,クラスCに属する企業が資金制約後にどのような手段で現金を増加させたのかについて検証を行う。臨時資金調整法は固定的な事業設備資金の調整を目的としたものであり,流動資金の移動を規制対象としていなかったことから,クラスC企業において短期借入金の増加や留保利益の増加といった傾向がみられることが予測される。 データに関しては,三菱経済研究所の『本邦事業成績分析』から抽出する。分析を終えた上で,研究内容を取りまとめて論文を執筆し,海外査読誌に論文を投稿する予定である。
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