研究課題
基盤研究(B)
生態学的にも地質学的にも多様な地域において,いかに小農経済は生き延びることができたのか。あるいは逆に,今や風前の灯となっている小農経済,その衰退の根本原因は実は産業革命期における地域把握の決定的な転換にあるのではないかという仮説を,江戸・明治期そして大正期に残されている地誌の環境史的比較研究から検証する。経済史・環境史研究を基軸に,日本の近世近代文書研究,歴史地理学的な地理情報システム研究,そして気象学的解析からなる協働研究は,太陽光に基づく植物の光合成によるエネルギー創出を起点とする有機経済が地域の発展にいかに効果的であったか,あるいは何を起因にいかなる過程でそれが放棄されたのかを実証する。
明治15年頃の地誌叙述の数量化に基づく地図化によって,例えば,2004年10月20日の台風災害時の雨量変化などに主題を設定し,地域環境を可視化することができた。 また,加佐郡の旧版地形図をもとに,土地利用GISデータの地図化を進め,舞鶴地方史研究会で二度のワークショップを開催し,地元の方々のご意見を聞く機会を設け,さらに,東アジア環境史協会大会(EAEH 2023)での研究発表を行い論文作成を進めた。史資料のデジタル化として,2023年4月にWEB「まるまる舞鶴」で「田辺藩土目録」「京都府地誌 加佐郡村誌」などのデータ・コラムを公開した。今後の分析あるいは論文作成等に大いに役立つ成果である。
村を単位とする日本特有の情報集積である明治初期・中期の郡村誌に関して,特に,京都の加佐郡に関する歴史資料を丹念に分析し,各種の可視化を行い,広く興味のある方々へ公開することができた。それは,現地の方々にとって,今後の災害対策等に活かせるだけではなく,さらにその議論が歴史研究者に留まらず気象学・気候学あるいは水文工学の理系研究者との協働で進められた意義は大きく,東アジア環境史協会大会での発表を通じて,東アジアを超えてアジア環境史協会設立に向けても学術的な貢献をすることができた。また同時により詳細な歴史研究を可能にし,歴史研究における再現可能性を高める歴史資料のデジタル公開を行なった。
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すべて 国際共同研究 (8件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (45件) (うち国際学会 26件、 招待講演 3件) 図書 (1件) 学会・シンポジウム開催 (5件)
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