研究課題/領域番号 |
20H01572
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
樋口 直人 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (00314831)
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研究分担者 |
稲葉 奈々子 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (40302335)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2020年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 移民 / ペルー人 / 社会移動 / 労働市場 / 外国人労働者 / イタリア / ペルー / 社会統合 / 非正規移民 / 外国字労働者 / 介護労働 / ラティーノ / 職業移動 |
研究開始時の研究の概要 |
移民は居住年数の経過とともに上昇移動していくとされてきたが、すべての集団がそれに該当するわけではない。なぜこうした事態が生じるのか。これは単なる例外ではなく、人的資本論が前提とする完全市場が移民労働には妥当しないがゆえのことと考えた方がよい。移民と同化仮説が想定する人的資本決定論は、暗黙裡に移民国たる米国の状況を前提としており、実際には人的資本を無効化するような労働市場も想定する必要があるのではないか。そこで本研究では、すでに持つ日本のデータと比較するべく、イタリアのペルー人労働者を対象とした調査を行い、上昇移動を阻む要因を解明する。
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研究実績の概要 |
今年度は、それまでの遅れを取り戻すべく、7-9月、12-1月、2-3月の3回、約120日間のイタリア調査を実行した。これにより、487人のペルー移民(それ以外に1名のエクアドル移民、2名のベネズエラ移民)に対して聞き取りをおこなった。昨年度の調査から新たに加える知見は以下の通りである。 1.2022年には大統領が何度も交代するなど、ペルーでは政治的混乱が続き、経済的状況も悪化している。それに敏感に反応する形で、イタリアへの移民フローが生じている。しかしこれは、中流階級がペルーから避難して日本へ渡航した1990年前後とは異なり、下層階級への広がりをみせている。これは、ペルーからビザなしでもイタリアに入国できること、スペインよりはイタリアの方が仕事があること、下層階級でも貯蓄は可能な程度にペルーの経済状況は悪くなかったこと、あるいはイタリアへと呼び寄せるネットワークが発展していることによる。 2.全体に、日本のペルー移民よりも階層が低い。これは前段の事情にもよっているが、経済危機以前からイタリアのぺルー移民の出身階層は低かった。先行研究では、山岳部出身者が多いとされており、それ自体は間違いではないが、より多いのは山岳部-Lima-イタリアという流れであり、Limaの貧困地区からの渡航が一番多い。 3.イタリアのぺルー移民の経済状況は、客観的には日本のペルー移民よりずっと劣悪である。キリスト教系NGOの無料飲食所で食事を済ませる者も多く、個室ではなくベッドだけ借りるポストレットに居住し、安定した仕事についても1000ユーロ程度の月収である。しかし、もとの出身階層が低いことにより、そうした生活にも耐えることができている。イタリアではビザの正規化の可能性があるため、正規化により安定した仕事を得られれば、所得は低くともペルーよりはよい生活ができるという見込みにより流入が続いている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年12月から調査が可能になり、それ以降は5回イタリアでの調査を実行した。その結果、申請書に記した400人という目標人数を現時点で突破し、487人まで到達した。最終年にも調査を続ければ700-800人程度には聞き取りが可能であることから、調査は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、予算の制約により夏期に2ヶ月間の調査を行うにとどめる。それによりデータを揃えることができるが、本格的な日伊比較の前に既に行った日本のペルー移民に対する調査のデータを解析して、発表していく(すでに関東社会学会では報告エントリー済み)。
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