研究課題
基盤研究(B)
疫学研究から衛生的な環境になったことがアレルギー疾患数の増加に繋がっている可能性が示唆されているが、そのメカニズムは不明な点が多い。衛生的な環境を作り出す契機一つとして合成洗剤の一般家庭への普及が挙げられるが、興味深いことに、アレルギー疾患の有病率の増加はこの合成洗剤が爆発的に普及した時期と一致している。そこで本研究では、環境塵中に界面活性剤が高濃度に存在する場所の特定、アレルギー性炎症惹起につながる界面活性剤の種類の同定、コホート研究を用いた環境塵中の界面活性剤の濃度とアレルギー疾患発症の関連性の検証を通じて、環境塵中の界面活性剤のアレルギー疾患発症への関与の詳細を明らかにすることを目指す。
家庭用合成洗剤をマウスに吸入させると、喘息様好酸球性気道炎症が誘導されることを見出した。また、合成洗剤の含有成分のうち、界面活性剤が好酸球性気道炎症の誘導に関与していることを見出した。合成洗剤が気道上皮細胞におけるIL-33の発現増強を誘導すること、IL-33が2型自然リンパ球(ILC2)を活性化し2型サイトカインの産生誘導することにより、好酸球性気道炎症が惹起されることを見出した。更に、生活環境中における界面活性剤の存在を検討するため、家屋内の種々の場所から細塵を採取し、塵中の界面活性剤の濃度を測定したところ、収集できたすべての塵の中から一定度の界面活性剤の活性が検出された。
近代化に伴いアレルギー疾患の患者数が増加した理由として、衛生的な環境となったことにより幼少期に微生物への曝露が減少したことが原因とする衛生仮説が広く知られている。一方で近年、人間の体が外界と接する部分に存在する細胞(上皮細胞)のバリア機能が、外的/内的要因を含む何かしらの要因で障害されることがアレルギー疾患の発症につながるという「上皮バリア仮説」が提唱されている。本研究は、環境中に存在する合成洗剤を始めとする界面活性剤が、上皮細胞の破壊を介して喘息様気道炎症を誘導することを世界で初めて明らかにした研究であり、この上皮バリア仮説を裏付ける結果となり、非常に大きな学術的、社会的意義を有している。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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https://www.ncchd.go.jp/press/2023/0516.html