研究課題/領域番号 |
20H01651
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 熊本学園大学 |
研究代表者 |
井上 ゆかり 熊本学園大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (10548564)
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研究分担者 |
花田 昌宜 (花田昌宣) 熊本学園大学, 社会福祉学部, 教授 (30271456)
東 俊裕 熊本学園大学, 社会福祉学部, 教授 (30461619)
宮北 隆志 熊本学園大学, 社会福祉学部, 教授 (50112404)
中地 重晴 熊本学園大学, 社会福祉学部, 教授 (50586849)
藤本 延啓 熊本学園大学, 社会福祉学部, 講師 (60461620)
矢野 治世美 熊本学園大学, 社会福祉学部, 准教授 (60805977)
田尻 雅美 熊本学園大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (70421336)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2020年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | 公害 / 教育 / アーカイブ / 水俣病 / プラットフォーム / 公害教育 / 水俣学 / 参加型調査 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の特徴は、すでに体系化されている公害教育のカリキュラムを援用し、水俣学アーカイブを公害教育へ効果的に活かす手法開発を通して公害教育の地域間・学校間の温度差を解消し、「公害水俣病」に関わる多様な知識や考え方を持つ人材の育成を図ることにある。人材育成にあたっては、地域課題に向き合い解決する力、複雑な相互作用をもつ社会グループとの関係形成能力、国際社会の動向から地域発展まで想像する力を念頭に置き、公害教育モデルを構築する。本申請の特徴として、被害当事者・市民・様々な専門分野の研究者が一緒に独自に制作してきた水俣学アーカイブという集積した水俣病事件のデータを公害教育実践に活用することにある。
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研究実績の概要 |
本研究は、すでに体系化されている公害教育のカリキュラムを援用し、被害当事者・市民・多様な専門分野の研究者らと協働し制作した水俣学アーカイブを公害教育へ効果的に活かす手法開発を通して公害教育の地域間・学校間の温度差を解消し、「公害水俣病」に関わる多様な知識や考え方を持つ人材の育成を図ることにある。 今年度は、水俣病を理解するうえで必須となる生業・文化、被害・福祉、環境・街創世、アーカイブの4つのグループごとに、1年目の水俣学アーカイブから選定した資料を活用し、本学の学生や熊本県下の高校生、医療系の専修学校の学生を対象に講義を行い、受講生にアンケートまたは聞き取り調査を行った。コロナ禍下で本学独自の警戒レベル(2021年4月26日から開始)で履修者100名以上の場合には遠隔授業となり、予定していた調査項目を最小限にして行った。結果、資料を活用することで具体的な問題に触れることができたとの反応がある一方で、当時の暮らしが想像できない世代の学生においては視覚的な資料により生業と文化形成の理解が深まったことが明らかになった。各グループ間で研究会を開催し、当初の計画にはなかった過去の映像・音声資料を修復し、デジタル化をすることが不可欠であると判断し、研究計画の見直しを行った。水俣学アーカイブの映像・音声資料を調査し、修復が必要な資料の選定、過去の資料の修復・デジタル化を行い、デジタルアーカイブを活用した授業レビューの修正を行う必要が生じた。とくに映像資料の劣化が酷く、修復できる業者の選定と修復に作業時間を要した。 コロナ禍において、本学では出張の制限や研究会は事前に申請書を提出し感染対策本部で承認を得る手続きが設けられたため、オンラインでカナダ水俣病の支援者や韓国のアーカイブ研究者らと意見交換を行い、修正した授業レビューに反映した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は初年度の授業レビューを活用し、本学社会福祉学部の1、3年次以上の学生や熊本県立高校の1年生、医療系専修学校の2年生を対象に講義を行い、受講生や教員にアンケートまたは聞き取り調査を行った。結果、学生からは、資料を活用することで具体的な問題に触れることができ、「これまで習ったことのない水俣病」との反応や自らの差別意識や生き方をあらためて考えさせられたとの反応があった。しかし、当時の暮らしが想像できない世代の学生においては、写真や映像、音声など視覚・聴覚的な資料が当時の漁村の暮らしを理解する上で助けになったことが明らかになった。各グループ間で研究会を開催し、当初の計画にはなかった過去の映像・音声資料を修復し、デジタル化をすることが不可欠であると判断し、研究計画の見直しを行った。教員からは、人権学習で環境教育を行ってきたものの、現在に続く問題であることを認識させる学習の提供が必要だが教材の選定などに時間が不足しているなどの結果が得られた。 水俣学アーカイブの映像・音声資料を調査したところ、未公開資料に必要な資料があることが判明した。そのため修復が必要な資料の選定、過去の資料の修復・デジタル化を行い、デジタルアーカイブを活用した授業レビューの修正をした。とくに映像資料の劣化が酷く、修復できる業者の選定と作業に時間がかかった。その後、資料の紛失を防ぐため、映像・音声資料の目録を作成した。 コロナ禍において、本学では出張の制限や研究会は事前に申請書を提出し感染対策本部で承認を得る手続きが設けられたため、オンラインでカナダ水俣病の支援者や韓国のアーカイブ研究者らと意見交換を行った。本学独自の警戒レベルにより韓国、カナダなどの現地調査が不可能になったことで、研究計画を見直し、映像資料の修復費、目録作成のための人件費にあて本研究目的を達成できるよう柔軟に取り組んだ。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、これまで学校教育で、第1に公害被害の実態学習・被害者の声に学び・映像やドキュメント資料の学習をする、第2に公害の原因を探るとして原因企業の行動や被害住民に対する態度やなぜ公害を引き起こしてしまったかを学び、第3に将来に向けての教訓を考え自分たちの暮らしを問い直すという3つのステップで組まれていたステレオタイプの公害教育を刷新し、社会的な病である「公害水俣病」を相対的に理解する実践的な公害教育モデルを提示することで研究目的を達成する。 次年度は、2年間の集積した授業レビューをもとに、本学において学部授業の座学のみならずフィールドワークでどのような活用ができるか研究会を開催し、実践し、学生にアンケートを実施する。これをフィールドワーク用の授業レビューに反映させ、4つの科研グループによる合同研究会を行い、意見交換をする。最終年度となるため、成果のとりまとめを行い、資料と教育をつなげ「公害教育モデル」を構築するため、先進的取り組みを行う韓国の明知大学校人間と記憶アーカイブ研究所と連携し、アーカイブそのもののあり方を検討する。そのため韓国で成果報告をおこなうとともに研究会を開催する。
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