研究課題/領域番号 |
20H01663
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
笠間 浩幸 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (10194713)
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研究分担者 |
竹井 史 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (60226983)
真宮 美奈子 同志社女子大学, 現代社会学部, 准教授 (40310940)
宗形 潤子 福島大学, 人間発達文化学類附属学校臨床支援センター, 教授 (10757529)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2020年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
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キーワード | 砂・土 / 標準化 / 園庭 / 保育 / 教育 / 砂場 / 砂 / 土 / 泥 / 子ども / 遊び / 粒度 / 粒度分布 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、保育・教育活動の重要な基盤となる園・校庭の「砂・土」の粒度に焦点を当て、どのような粒径分布をもつ「砂・土」が、保育・教育の質の向上につながるかという問題について、工学的な分析と実験、保育・教育学的な検証を通して、その基準の明確化を図ることである。 このことにより、園・校庭環境の整備に関する客観的かつ普遍的な処方が明確となり、保育・教育当事者の主体的な園・校庭評価と改善ヘの取り組みが可能になると期待する。また、そのことは最終的に子どもの発達と学びの保障に大きく貢献できるものと考える。
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研究実績の概要 |
全国の幼稚園・保育所58園を対象とし、第1に砂場の砂及び土遊びがよく行われる園庭の土それぞれの粒度分布調査、第2に砂・土を素材とした子どもの遊びの実態及び保育者の援助の工夫の調査を行い、次のような研究結果を得た。 1-①〈砂場の砂〉これまでの研究成果より、砂分比率95%以上を砂場への「適切な砂」と提起してきたが、この基準に合う園は58園中5園(9%)に留まった。他は13園が90%台前半、35園が80%台、5園が70%台であり、全国的に砂場の砂は決して「良好」とは言えない実態が明らかになった。また、95%以上の「適切な砂」については、大きくa)中砂比率が圧倒的に高い(80%以上)、b)粗砂が中砂のほぼ半分近くある、c)細砂が粗砂の比率を上回っている、の3つの特性の違いを見い出したが、今後これらの粒度分布と子どもの遊びの実態の関連性を追究課題とする。 1-②〈園庭の土〉子どもたちが土遊びをよくする土についてレーザー分析装置によって粒径分布を調べるとともに、2015年から2020年までに開発してきた「スーパークレイ」との比較を行った結果、次のような特徴を把握した。まず、スーパークレイはシルトが中心的な分布領域であるが、「園庭土」においては粒径の比較的荒い細砂が中心的な領域であることが明らかとなった。また、粘土成分はほとんど含まれていないことから、土遊びの特徴的な感覚遊びや造形遊びが十分に展開されにくい状況が推測されることから、その改善や園絵の提案が今後の課題となっていく。 2〈遊びの実態〉58園の保育者に対するアンケートから、砂及び土遊びに対して以下の観点から子どもの遊びと保育者の意識を把握した。a)保育活動における砂・土遊びの必要性、b)よく行っている砂・土遊び、c)「遊び込み」の様子、d)砂・土遊びにおける子どもへの援助、e)援助・環境づくりの工夫、f)困っている点・悩み等。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度も新型コロナウイルス感染予防対策上、保育現場における子どもの集団的な遊びの制限や積極的な現地調査の制約があった。そのような中、全国の保育施設における砂場及び園庭の「砂・土」環境把握について320園の対象リストを作成し、約20%弱となる58園から砂・土の提供の協力を得ることができた。協力依頼は全国を8ブロックに分けて行い、全ブロックからの砂・土の提供があったことにより、全国的な砂場及び園庭の概況を把握することができた。ただし、関東地区からの協力は2園と少なく、また各ブロックの協力園がほぼ一つの都道府県の市に留まっていることから、今後への範囲を広げた調査の課題を残した。 砂場環境については、「適切な砂」を有する保育施設と砂質環境が十分ではない保育施設両者の状況を把握することができた。また「適切な砂」に関してはより詳細な粒度分布の違いの特徴を捉えることができた。一方、粒度の詳細な違いは具体的な子どもの遊びにどのような影響を与えるかについての実態把握は今後の課題となった。 同様に園庭の土環境調査においても、粘土分比率の把握に基づく環境改善の課題をとらえることができたが、土遊びの可能性を広げるスーパクレイを設置した土環境のより詳細な分析と配分比率の検討は今後の現地における子どもの遊びの実態調査結果に委ねるものとする。 また、全58園から寄せられた砂場や園庭での子どもの遊びに関する保育者へのアンケート結果からは、各園における屋外環境整備に関する課題や砂場遊び・泥土遊びに対する保育者の保育感・保育姿勢を把握することができたが、子どもの年齢や発達段階に応じた保育実態の詳細把握の課題も見つかった。 以上、2022年度は全国的な「砂・土」調査の大きな進捗はあったが、子どもの遊び調査に基づく保育実態との対照比較が十分にできなかったことにより、「おおむね順調」の評価と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
第1 に昨年度まで取り組んできた研究結果のデータ分析及び実態把握、第2に園庭環境に適切と考えられる「砂・土」の標準化案の策定と検証、そして第3 は本研究の総括となる。それぞれについては次のような内容となる。 第1では、全国8ブロック58園から提供を受けた「砂・土」データの分析結果についての詳細分析を行い、問題点と課題を明らかにする。砂場の「砂」領域においては、砂粒度分布のより詳細な砂分類(粗砂・中砂・細砂・微細砂)に基づいた砂場環境を予測し、いくつかの園における実態調査を行って、数値上の把握と実態との比較検証を行う。また、「土」領域においては、これまで開発し、実践的に検討した遊びの調査をもとに、より機能的なスパークレイ開発に向けての微調整を行う。具体的には、スーパクレイを設置した土環境における子どもの遊びの様子を観察し、より使いやすい土にするための配合を変え、最も遊びやいすい土の粒度分布を明らかにし、最終的な配分比率について検討する。 この段階においては、具体的な子どもの遊びの実態や保育者・教師らによる感覚的実体験に基づいた把握とその分析も重要な視点となる。 第2の「砂・土」の標準化案の策定については、上記第1の研究をもとに、砂場や園庭に適切と考えられる「砂・土」の粒度分布仮説を提示するとともに、その検証を行う。この課題については、仮説に基づくモデル「砂・土」を精製して1か月ほど屋外に設置し、その物理的な変化(硬化現象、コンシステンシー)を確かめながら、適切性の標準仮説に関する検証を行う。 第3は、これら研究の成果と今後の課題についての報告書を作成するものとするが、その過程においては、日本保育学会、こども環境学会、子どもの遊び・遊び環境に関する国際学会(IPA世界大会)等で報告を行いながら、研究方法や結果に関する検証や評価を行っていくものとする。
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