研究課題/領域番号 |
20H01707
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09060:特別支援教育関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
宮地 弘一郎 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (40350813)
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研究分担者 |
蛭田 直 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (80548230)
山下 健 椙山女学園大学, 生活科学部, 講師 (50783990)
堅田 明義 中部学院大学, その他部局等, 特命教授 (60015435)
渡邉 流理也 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40750120)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
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キーワード | 重症心身障害児(者) / 脳波測定 / 個人用脳波測定補助具 / デジタルファブリケーション / パラメトリックデザイン / 重症心身障害児(者) / 個人用脳波電極ホルダー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、重症心身障害児(以下、重障児)の発達研究において困難とされてきた脳波 測定について、簡便、低負担で再現性の高い測定を可能とする安価な個人用脳波電極ホルダ ーを開発する事を目的とする。具体的には以下の方法で研究を行う。 ◆デジタルファブリケーションとパラメトリックデザインの専門家との共同研究によって、 重障児個人の頭部形状および様々な姿勢に対応した脳波電極ホルダーの製作技法を開発する。 ◆重障児の脳波測定における個人用脳波電極ホルダーの有用性を、従来の測定法と比較する。 ◆学習場面など、重障児の日常生活環境での脳波測定における有用性を検証する。
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研究実績の概要 |
1)健常成人を対象に、個人用脳波電極ホルダ試作版の安全性と簡易製作技法に関する改良を行った。試作版よりも測定精度を維持しつつ、本人への身体ストレスが小さく安全性のあるホルダを、パラメトリックデザイン技法によって制作した。結果、より負担の少ないホルダを制作することができた。 2)簡易な頭部3Dモデル作成方法の検討 施設スタッフにも可能な簡易な頭部3Dモデル作成の方法として、スマートフォンを使用した頭部スキャンを試みた。Liderを使用した測定と、カメラを使用した測定の2種類を実施した。測定データはオンラインで3Dデータ制作担当の研究分担者と共有した。結果、どちらの方法でも、パラメトリックデザインによる調整は必要だが、電極ホルダ作成に十分な頭部3Dデータとなることが明らかとなった。また専用の3Dスキャナ機器よりも携帯性が高いだけではなく、フラッシュ等による身体影響もないことから、よりストレスフリーな方法と思われた。測定精度はカメラが高いが、測定方法の簡便さ、測定時間、データ量からはLiderの方が重症児病棟等での使用において有用と思われた。ただし、簡易測定で十分な精度とするためには、測定のために長時間同じ姿勢を維持する必要がある課題が残された。パラメトリックデザインの応用や頭部部分スキャンの複数回実施からデータを合成する方法等を今後検討する必要がある。 3)重症心身障害児(者)のストレス状態の多面的評価 重症心身障害児(者)の脳波測定における測定ストレスを評価する準備として、ストレスフリーな生理指標を用いた測定手法の検討を行った。瞬目の非接触測定によって重症心身障害児(者)のストレスを評価できることを明らかにした。また、重症心身障害児(者)生活刺激の負荷が生じやすい可能性が明らかとなり、重症心身障害児(者)の生活実態解明において脳の易刺激性や非定常性を明らかにする必要性が高まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度の当初研究計画は次の2つの課題遂行であった. 課題1)個人用脳波電極ホルダの安全性に関する改良 課題2)スマートフォンを用いた簡易3Dスキャン技法の開発 課題3)重症心身障害児(者)を対象とした個人用脳波電極ホルダのテスト試行 課題1と2については、研究実績の概要にも挙げた通り、概ね順調に進んでいる。さらに、COVID-19の影響への対応を行う過程で、当初予定よりも安全かつ効率的に脳波電極ホルダを制作するための技術を開発することができた。 課題3について,2020年度からのCOVID-19のリスク状況が続いたことから、協力施設における身体接触の大幅な制限が継続しており、脳波電極ホルダについての直接的な研究はできなかった。このため臨床研究について当初計画よりも遅れてきている。ただし、無拘束心拍測定や非接触手法による瞬目測定は実施可能であったことから、これらの方法を用いて脳波測定自体のストレスをモニタリングする手法を開発した。これにより脳波電極補助具の有用性を多面的に検証可能となったとともに、安全に臨床研究を推進しやすくなった。また、重症心身障害児(者)の医療機関や教育機関とスムーズに連携をとる環境整備を行い、対象候補の重症心身障害児(者)およびその介助者との関係構築を大幅に進めることができた。2023年度はCOVID-19が5類に移行することから直接対面も可能となる見通しであり(協力施設において準備中)、本格的に臨床研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の影響により重症心身障害児(者)を対象とした臨床研究の遅れが生じているものの、スマートフォンを使用した簡易頭部スキャンなど、個人用脳波電極ホルダの制作技法の開発は当初計画以上に臨床応用に適したものになってきている.今後は、開発した技法を用いて臨床研究を推進する。既に現在、臨床研究について施設から協力を得られる体制ができている。 さらに現在、個人用脳波電極ホルダに加えて、簡易な測定を行うための補助具(個人用脳波電極ガイド)の開発も進めている。重症心身障害児(者)の臨床脳波研究において、目的に即した補助具の選択肢を拡げ、よりストレスフリーな脳波研究を実現することが期待できるとともに、何らかの理由で臨床研究により慎重さが要される場合の対応方策ともなっている。 なお、現在の簡易頭部スキャンで生じた課題である長時間の姿勢維持の必要性については、パラメトリックデザインとスキャンデータ合成技法により1回あたりの測定時間の短縮を試みる予定である。
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