研究課題/領域番号 |
20H01745
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09080:科学教育関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡崎 正和 岡山大学, 教育学域, 教授 (40303193)
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研究分担者 |
渡邊 慶子 (向井慶子) 滋賀大学, 教育学系, 准教授 (00572059)
和田 信哉 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (60372471)
影山 和也 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (60432283)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2020年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 科学教育 / 空間図形カリキュラム / 算数と数学の接続 / 探求型の授業 / 教師の指導知 / 探究型の授業 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,小学校高学年から中学3年までの各学年で,図形の直観的・経験的な見方と関係的・論証的な見方を同時に培うとともに,平面図形の学習と空間図形の学習とが連動する教材,授業,カリキュラムを開発する為の理論と実践を構築すること,及び生徒が図形の見方・考え方を発達させるカリキュラム上の道筋を明らかにすることを目的としている。さらに,デザイン実験の方法論による図形の「探究型」の授業・カリキュラムの実践開発を通して,探究型授業を実現する為の原理や方法に関わる「教師の数学的指導知」を明らかにし,発信することにも取り組んでいく。
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研究実績の概要 |
本研究は,図形教育において,算数での図形の直観的・経験的な学習と中等校数学での図形の関係的・論証的な学習のギャップ,及び平面図形の学習と空間図形の学習とのカリキュラム上のギャップの現状に鑑み,小学校と中学校の一貫を縦軸,平面図形と空間図形の連動を横軸とする幾何カリキュラムを構成し,探究的な学びとしての空間図形の授業のあり方を研究するものである. 2022年度は,まず,本研究グループで検討してきたカリキュラム構成の視点を統合し,再整理することを通して,探究型空間図形カリキュラム構成原理を明確化することを目指した。考察の結果として,カリキュラム構成原理を,A. 空間的思考力,B. カリキュラム構成の軸,C. 学習指導の理念,D. カリキュラム評価の視点として整理することができた.特に,カリキュラム構成の軸を,カリキュラム構成全体を貫く軸,学習過程を捉える包括的視点の軸,空間図形に固有の学習方法の軸の3つの柱で整理した.また,カリキュラム構成原理と教材との結びつきを明らかにするために,視覚化,表現・記号論,証明に着目し,空間図形のカリキュラム開発及び評価の方法を検討した。特に,視覚能力と視覚媒体の関係性の分析,ICT機器を用いた表現の記号論的分析,視覚化と証明の生成との関係性の分析を通して,空間図形の学習の特徴や困難性を吟味した。成果は,日本数学教育学会「第10回春期研究大会論文集」にて発表した。 第二に,探究型の学習指導を実現するための単元構成について検討を行った。過去に行った正負の数の単元構成の研究をベースに,新たに授業データを収集し,生徒が具体的活動から,教材の持つ関係性を捉える場面,関係への意識を高める場面,関係が成立する理由を整合性や数の組み合わせの視点から捉える場面の3段階を同定し,単元構成の基本的な道筋として捉えた。成果は,岡山大学算数・数学教育学会誌にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は,空間図形カリキュラム構成の為の枠組みの理論的な精緻化を行い,授業データを継続分析し,授業構成理論の研究を行うことを計画していた。 空間図形カリキュラムの構成原理に関する理論的な精緻化に関しては,A. 空間的思考力,B. カリキュラム構成の軸,C. 学習指導の理念,D. カリキュラム評価の視点に基づく枠組みを構成することができ,一定の成果があったと考える。令和4年度は,この枠組みに基づいて,カリキュラムの具体化を構想し,岡山大学,広島大学,鹿児島大学の各附属学校,及び滋賀県内の公立高校の教師たちと共同で授業開発研究を実施した。小学6年と中学1年では,立方体の切断の授業,中学2年では,ポップアップカードの仕組みの探究の授業,中学3年では,電灯の影に関する射影的(投影的)見方に関する授業,そして高校2年では,射影的関係の証明に関する授業を計画・実施し,授業データの収集を行うとともに,そのデータを質的分析法によって分析し,カリキュラムの実現可能性を吟味した。分析においては,上記のカリキュラム構成原理が生徒の学習過程においてどのように働いていたかを明らかにするものであり,分析の結果として,推論と現象との往還を通して空間図形の関係性を見いだす様相,視覚化と視覚媒体の機能とその相互関係が生かされる学習の様相,図形の動的な見方を通して生徒が空間図形をイメージされる様相,ICTによって言語化が可能になる様相,視覚表現と証明生成が関わる様相に関する知見を見いだすことができた。カリキュラムの実現化に関して,第一段階の授業データの収集を終え,一定の分析を行うことができており,おおむね予定通りに研究は進んでいるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年である本年度は,空間図形カリキュラムの実質化(カリキュラム構成原理に沿った授業の実現化)をさらに進めるとともに,カリキュラム構成原理や授業実践に関わる教師の指導知を総合的に明らかにし,カリキュラムの具体像を明確化することを目的とする。 昨年度までに,空間図形カリキュラム構成原理の骨格を明らかにしつつ,原理を具体化する第一次授業研究を終えている。本年度は,それらの授業分析をもとにして,より実現可能な授業構成にするための第二次授業研究を,複数の県の附属学校・公立学校で進めるとともに,他の教師にも実践化が可能なように具体的な指導コンテンツにしていくことを目指す。そして,これらの授業研究の分析・考察を通して,空間図形の授業・カリキュラム構成の理論構築を行うことを最終的な目的とする。そのために,カリキュラム構成に関してこれまで設定してきた理論的枠組みと実践授業における学習過程とを比較検討し,学習過程の分析から得られるカリキュラム構成上重要な視点を抽出し,それを理論的枠組みに反映させる手法をとる。特に,平面図形の学習と空間図形の学習との連動性に関する検討と,学年を超えて生徒が空間的思考を身につけ発達させていけるような学習の縦断的検討を行い,平面図形と空間図形の連動を視点とした探究型カリキュラムの全体像を明確化すること目指す。 分析の成果は,複数の国内学会で発表するとともに,研究の総合的なまとめを行う。
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