研究課題/領域番号 |
20H01752
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
唐沢 かおり 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50249348)
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研究分担者 |
鈴木 貴之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20434607)
太田 紘史 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (80726802)
浦 光博 追手門学院大学, 教授 (90231183)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,510千円 (直接経費: 12,700千円、間接経費: 3,810千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 道徳的判断 / 心の知覚 / 感情認知 / 人工物と意識 / 感情 / 偏見 / 実験哲学 / ステレオタイプ / 自由意志 / 擬人化 |
研究開始時の研究の概要 |
心の知覚と道徳的判断や対人態度との関係について、経験性(痛みや感情などの主観的状態、すなわち「感じる心」)の知覚に焦点を当て、その影響の詳細を実証的に解明するとともに、具体的な実践的・人文学的な課題の解決に資するために、「感じる心」としての経験性概念をいかに構築すべきかを検討する。そのさい、哲学と協同し、「感じる心」にかかわる概念の分析や、道徳的立場に関する従来の議論を整理し、実証的知見と統合しつつ、「感じる心の知覚」により、私たちの道徳的判断が影響されることの功罪を考察する。
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研究実績の概要 |
心の知覚に関する実証的な検討としては、以下の研究を行った。①コロナ禍を背景とし、高齢者を対象とし、その心的機能の認知と「差別‐保護」という加害に関わる道徳的判断との関係について、感染嫌悪の観点から検討した。その結果、脆弱さ(経験性)に関わる心の知覚が保護的態度につながる一方、感染嫌悪が高い場合はその効果が見られないことが示唆され、経験性と保護的態度の関係を調整する変数の重要性が示された。②社会的孤立ならびに孤独感が当事者の抑うつ、セルフコントロール、道徳性ならびに自己非人間化とどのように関連するのかを、8,000 名を対象としたweb 調査により検討した。その結果、孤立が自己認知と道徳性の関係を調整する可能性が示された。具体的には、社会的に孤立している者ほど道徳性が低く、また自身を非人間化しており、また、孤独感を強く感じている者ほど抑うつが高く、セルフコントロールの得点が低かった。③AIなど人工物が生活に介入する際の社会受容性について検討し、経験性に関する心の知覚が相互作用で重要と思われる領域における介入への抵抗感を示唆する結果を得た。 哲学との連携については、境界的な心的事例についての道徳判断が哲学や生命倫理学の方法論においてどのような役割を果たしているのかを検討しつつ、そうした役割が道徳判断についての心理学的知見によってどのような影響を受けうるかを検討した。とくに、選択可能性を欠いた意志についての道徳判断や、脳組織の培養および利用についての道徳判断に焦点を合わせ、その一部については実験哲学的研究も行いながら検討を行なった。加えて、日本の高校における道徳教育を題材として、心理学と倫理学はお互いにとってどのような意義をもつかの考察にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで収集した実証データをもとに、学会発表や論文発表を精力的に進めている。また、感染嫌悪や孤立・孤独など、心の知覚と道徳的判断を検討するべき新たな文脈を議論の中で発見し、研究のスコープを広げつつ、それらに関する研究を発表している。心理学と哲学の連携についても、道徳的判断にくわえ、意識や自由意志における研究動向をも踏まえつつ、規範的議論を実証研究に展開していく営みを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
心の知覚と道徳的判断との関係をめぐる基礎的な知見については、モデルの取りまとめという観点から、さらに必要なデータを検討し、その収集につとめる。また、偏見、孤立・孤独、人工物への態度など、応用的な議論を要する領域にも展開しているので、それぞれの領域内における本研究知見の位置づけを相対化する議論を進めていく。以上の研究方策により得た知見は、着実に学会発表や論文発表につなげる。
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