研究課題/領域番号 |
20H01756
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
中谷内 一也 同志社大学, 心理学部, 教授 (50212105)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,080千円 (直接経費: 11,600千円、間接経費: 3,480千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | リスク認知 / リスクコミュニケーション / 災害 / 事故 |
研究開始時の研究の概要 |
災害や事故など様々なリスクの深刻さを伝える表現方法は、大きく統計的犠牲情報と個人的犠牲情報の2つに分けられる。これら2種の情報のうち、受け手の判断や意思決定により強く影響するのは個人的犠牲情報であるといわれる。しかし、個人的犠牲情報によってある個人がひどい目にあっていることを知り、さらにそのような悲劇が高頻度で起こっていることを統計的犠牲情報によって伝えられれば、事態が深刻であるという理解が一層強まってもおかしくはない。本研究はこの「個人的犠牲情報+統計的犠牲情報」の影響を多様な設定の中で検証し、リスクコミュニケーションのための基礎的な知見を得ようとするものである。
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研究実績の概要 |
リスクを伝える表現方法として、統計的犠牲情報と個人的犠牲情報の2つがあるが、受け手の判断や意思決定に強く影響するのは前者であるとされる。ところが、この問題を扱う先行研究は、「統計vs事例」という構図が念頭にあり、「統計+事例」情報の影響過程を丹念に探る研究は多くなかった。 本研究課題の前年度までの成果から、個人的犠牲情報に統計的犠牲情報を付加することは受け手のリスク認知に影響するものの、その効果量はかなり小さいことが示されてきた。そこで本年度は効果量が小さいことを前提に、統計的犠牲情報付加の影響力を左右すると期待される調整変数の影響力を検討しながら、大規模なオンライン調査と無作為抽出された住民対象の郵送法調査によってこれまで得られてきた知見の頑健性、一般性を検証した。 オンライン調査では、認知資源を調整変数とし、判断に時間制限を加えることでこの変数を操作した。しかしながら、この変数は調整変数としては機能せず、そもそも、個人的犠牲情報に統計的情報を加えても、リスク認知や犠牲削減の政策受容に影響がみられなかった。調整変数を熟慮傾向という個人差変数に置き換えた実験でも同様の結果であった。なお、個人的犠牲情報は統計的犠牲情報よりもリスク認知を高めるという従来の知見は確認された。 郵送調査の結果も概要としては同様であった。個人的事例情報としてリスク削減策が有効であることを示すポジティブ事例条件と、有効性がないことを示すネガティブ事例条件とを設け、さらに、リスク削減策の有効性に対する統計情報をそれぞれに加えたポジティブ事例+統計条件、ネガティブ事例+統計条件を設けて、統計情報を付加することの効果を検証した。その結果、統計情報不可の影響力はほとんどなく、逆に、統計情報にポジティブ事例情報を加えた場合は、リスク認知が修正されることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定どおり、大規模なオンライン実験と、無作為抽出された住民を参加者とする調査を実施できたから。目的としていた、個人的犠牲情報に統計的犠牲情報を付加することの効果の再確認、とくに、効果量が小さいことを前提とした実証的アプローチと、調整変数の検討を行うことができたから。一方、論文の掲載までには届いていないことから「当初の計画以上」とまでは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
個人的事例情報に統計情報を加えることがリスク認知に及ぼす影響として、前年度までは「効果量は小さなものにしか過ぎないが、影響力はある」という結果が得られていたが、本年度の知見は「調整変数の役割以前に、そもそも統計情報の付加は影響力を持たない」というものであった。今後は、これらの一貫しない結果についてフォローアップの実験を実施し、本研究課題の主要問題である「個人事例情報に統計情報が加わることの、情報の受け手にとっての意義」について、一定の結論を得る。 さらに、当初計画通りに、講習会形式でのリスクの説明やその削減策の説明を実施する。この形式では実際の専門家が個人として現れ、情報の送り手となる。すなわち、犠牲者としての個人事例ではないものの、顔と名前のある特定可能な個人がリスクや削減策の説明場面に現れることになる。その状況においてさえも、統計情報を用いることは受け手のリスク認知政策受容に影響しないのか、という問題を検討する。
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