研究課題/領域番号 |
20H01827
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
内海 裕洋 三重大学, 工学研究科, 准教授 (10415094)
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研究分担者 |
都倉 康弘 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20393788)
高橋 和孝 三重大学, 工学研究科, 特任准教授(研究担当) (70415214)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2021年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2020年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | メゾスコピック量子輸送 / 完全計数統計理論 / 非平衡統計力学・熱力学的不確定性関係 / 情報量揺らぎ / 計算機科学 / メゾスコピック系 / 完全計数統計 / 計算科学 / 非平衡統計力学・揺らぎの定理 |
研究開始時の研究の概要 |
小規模な量子素子回路を対象に、熱統計力学や量子力学の物理法則が与える情報処理性能の限界を明らかにする。物理量の揺らぎ分布を扱う「完全計数統計理論」の方法に基づき、発熱・計算時間・誤り率の同時確率分布を、非平衡統計力学の定理である「揺らぎ定理」を満たすように評価する理論を構築する。そして最小発熱かつ最短計算時間または最小誤り率を実現する量子素子回路のデザインとプロトコルを明らかにすることを目的とする。短期的には①古典計算過程の計算速度分布理論の構築、②古典・量子計算過程の非断熱ダイナミクス理論の構築、③量子ブラウニアン型計算理論の構築、を目標とし、最終的に3つを統合して目的の達成を目指す。
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研究実績の概要 |
① 古典計算過程の計算速度分布理論の構築(内海):本年度は、トークン・ベースのブラウニアン加算器の信号・雑音比の熱力学的不確定性、および計算コストの確率熱力学の解析について、昨年までに得られた成果を論文として執筆して投稿している(Computation time and thermodynamic uncertainty relation of Brownian circuits, arXiv:2205.10735)。また、量子マスター方程式の速度限界の理論を構築した。 ② 量子的環境におけるエントロピー生成と量子ダイナミクスの理論的解析(都倉):超吸収を用いた量子熱機関の性能に関する結果を出版した(Phys. Rev. Lett. 128, 180602 (2022).)さらに一般的な弱結合・マルコフの条件での系の粒子数をNとした時の熱流の上限が一般的にはN^3, 熱浴によるエネルギー遷移にNに依存しない上限がある場合はN^2となる結果をまとめ投稿した。また二準位系を流れる熱流を同時に連続測定する効果に関する解析をおこなった(Phys. Rev. B 106, 205419 (2022))。 ③ 古典・量子系の非断熱ダイナミクス理論の構築(高橋):過去に量子系で得ていた初期状態と時間発展状態のフィデリティについての速度限界の理論(Phys. Rev. Research 2, 032016(R) )を古典マスター方程式に適用した。そして、任意の時間発展状態間のトレース距離が幾何学的な計量で抑えられることを示した。そして、アニーリング・プロトコルにおいて、エラーの時間依存性とその上限を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り3グループで、統合を意識しつつ目標達成を目指して研究を実施した。 ① 古典計算過程の計算速度分布理論の構築(内海):また前年度に引き続いて、確率熱力学的に基づいたブラウニアン計算機のリセットによる熱力学的コストを、経験時間を用いてGillespieアルゴリズムにより数値計算しやすいように近似した研究をまとめた。昨年度までの成果をまとめた、初到達時間プロトコルについて論文を投稿している。また古典アニーリング・プロトコルに適用可能な速度限界の理論を③と共同で行った。また量子系においての速度限界の理論も検討した。 ② 量子的環境におけるエントロピー生成と量子ダイナミクスの理論的解析(都倉): メゾスコピック系からの熱流の上限値に関する一般的な制限を明らかにした。また量子バッテリーの 結果を出版した(J. Phys. Soc. Jpn., 91, 124002 (2022))。また微小なCMOS回路で構成したNAND回路の性質を確率熱力学の手法で解析を進めた。空間的に不均一なフォノンの温度分布がある場合の電子スピンのダイナミクスの実験を解析した論文を投稿した。(arXiv:2303.05700) ③ 古典・量子系の非断熱ダイナミクス理論の構築(高橋):①に解析手法を提供し、ブラウニアン計算機の古典アニーリング・プロトコルに適用可能な、誤りの時間依存性を調べ論文としてまとめ、計画を達成した。またレビュー論文「Dynamical invariant formalism of shortcuts to adiabaticity」をはじめとして成果を複数出版している。 定期的に進捗をオンラインでミーティングで報告し、また定期的にセミナーを行った。以上まとめて、全体で「概ね順調に進んでいる」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、最終年度であるため、研究代表者と分担者の3グループの成果を、量子系において発熱・誤り率最小で計算時間最速のプロトコルを明らかにすることを意識しつつ統合することを念頭に、成果をまとめる方針で研究を推進する予定である。 ① 古典計算過程の計算速度分布理論の構築(内海):前年度は③から解析手法提供をうけて共同で古典アニーリング・プロトコルの誤りの時間依存性を調べた。本年度は、②と③と共同で、ブラウニアン計算機の信号雑音比の限界の改善をまとめ、離散時間化や量子系への拡張を考える。 ② 量子的環境におけるエントロピー生成と量子ダイナミクスの理論的解析(都倉):測定を伴う熱力学的過程での熱力学的不等式の評価について検討を開始する。また、強結合条件下での熱流に対する観測の効果についての検討を行う。 ③ 古典・量子系の非断熱ダイナミクス理論の構築(高橋): 前年度は、①に解析手法を提供し、成果を論文としてまとめ、計画通りに研究を推進した。今年度も、②、③と共同で、いままで得られた成果を論文としてまとめる方策である。 また、前年度よりさらにオンライン/対面での①②③の研究グループとの議論の機会を増やし研究の総括を行う。
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