研究課題/領域番号 |
20H01838
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 大阪大学 (2022-2023) 京都大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
中島 秀太 大阪大学, 量子情報・量子生命研究センター, 准教授 (70625160)
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研究分担者 |
吉井 涼輔 山陽小野田市立山口東京理科大学, 共通教育センター, 講師 (30632517)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2020年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 冷却原子 / 光格子 / 孤立量子系 / 量子情報 / 熱化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は、近年、ブラックホール情報消失問題や、孤立量子多体系の熱化の問題の解決において重要な役割を果たすことが明らかになってきた量子多体系における情報の非局所化と情報伝搬の局所性について、非常に良い孤立量子系である冷却原子系の熱化・緩和過程を主たる研究対象として探索することを目的とする。実験では主として、近年、量子情報の非局所化の指標として注目されている非時間順序相関関数(OTOC)を光格子中の冷却Li原子系に対して測定することを目指す。理論面では、主として孤立量子系の熱化・緩和過程におけるOTOCや量子エンタングルメントなどの解析を通じ、量子情報の伝播や拡散に関する系統的理解を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、量子多体系における情報の非局所化と情報伝搬の局所性について、非常に良い孤立量子系である冷却原子系の熱化・緩和過程を主たる研究対象として、実験と理論の双方からその学理を明らかにすることを目的としている。 当該年度において研究代表者(実験担当)は、前年度に引き続き、この研究の舞台となる光格子中の冷却リチウム(Li)原子系の構築を進めた。当該年度はまず、Li原子のレーザー冷却(磁気光学トラップ, MOT)の光学配置の修正・最適化後、磁場勾配と光強度を動的に変化させる圧縮MOTを試み、これによりMOT中の原子温度をより低下させ、Li原子を非共鳴光双極子トラップ(FORT)へ移行することに成功した。さらに磁場フェッシュバッハ共鳴によりLi原子間の散乱長(相互作用)を大きくすることでFORT中での蒸発冷却を実現した(日本物理学会で発表)。また、散乱長が正かつ大きな領域で蒸発冷却を行い、6Li原子2個からなる6Li2分子のボース・アインシュタイン凝縮を実現した。 研究分担者(理論担当)は、本年度、光格子系での量子情報の伝播やその観測方法の提案を念頭に研究を進めた。当該年度中に、スピン系(JPSJ(2022))、および光格子中の自由ボソン系(PRA(2022))のエンタングルメントのダイナミクスに関する論文と、有限温度下におけるグラフ状態の効率的なフィデリティ推定の方法の提案(PRA(2023))の論文が出版された。また、非平衡量子系における幾何学的な位相に由来した熱機関の構成(arXiv:2205.15193)、光格子中における相互作用系ボソンのエンタングルメントのダイナミクスの解析(arXiv: 2209.13340)に関する研究を行い、論文を投稿した。また脱分極ノイズの存在下におけるフィデリティ推定の方法の提案(arXiv: 2304.10952)も投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度において研究代表者(実験担当)は、前年度に解決できなかったLi原子のレーザー冷却(磁気光学トラップ, MOT)の温度と原子数の問題を、光学系の改良と圧縮MOT法を導入することにより克服し、Li原子集団の非共鳴光双極子トラップ(FORT)への移行に成功した。さらに、将来の非時間順序相関関数測定において重要となる「相互作用の反転」を実現するための、磁場フェッシュバッハ共鳴による散乱長(相互作用)の制御にも成功した。また散乱長が正かつ大きな領域での蒸発冷却を行うことで、6Li2分子のボース・アインシュタイン凝縮を実現・観測し、量子縮退領域まで冷却できることも確認できた。 研究分担者(理論担当)は、今年度、スピン系におけるエンタングルメントの伝播速度に関する研究の論文が出版された(PRA(2023))。またその発展である光格子中のボソン系におけるエンタングルメントの伝播の研究については、前年度中に投稿した自由ボソン系に関する論文については出版に至り(JPSJ(2022))、相互作用ボソン系に関する論文(arXiv: 2209.13340)については、出版に向けて再投稿の準備中である。また、有限温度下におけるグラフ状態のフィデリティの効率的な推定の方法に関する論文が出版され(PRA(2022))、その脱分極ノイズの存在下における拡張に関する論文(arXiv: 2304.10952)を現在投稿準備中である。また幾何学的な効果に由来した熱機関の構成方法に関する論文(arXiv: 2205.15193)も投稿中である。これらの研究を拡張するで、量子系における情報や熱の振る舞いに関するより詳細な知見が得られることが期待される。 これら実験と理論の進捗を合わせて考えると、全体の進捗としては、おおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、研究代表者(実験担当)は、引き続き計画通り実験の舞台となる光格子系中の極低温リチウム(Li)原子系の構築を進め、この系を用いて環境との結合(散逸)を変化させた場合の量子相の非平衡ダイナミクスの実験研究を推進する。現在までに量子縮退領域までの蒸発冷却を達成し、Li2分子のボース-アインシュタイン凝縮(BEC)を実現しており、2023年度はまずこのLi2分子のBECを光格子系に導入することを目指す。このLi2分子は磁場により分子の大きさが変化し、それにより分子-分子間衝突によるロスが変化する。原子数のロスは環境への散逸であり、孤立量子系に対して制御可能な散逸を導入できる。この散逸が、孤立量子系の量子多体相および非平衡ダイナミクスに与える影響を実験的に調べる。並行して、エンタングルメント・エントロピー測定を想定して前年度に評価した高分解能光学イメージング系の導入も目指す。 研究分担者(理論担当)は、今年度行った光格子中のボソン系におけるエンタングルメントの伝播に関する研究や非平衡断熱ポンプに関する研究を元に、本プロジェクトの特色である、時間反転プロセスの実験的な実現を用いて測定可能となる非時間順序相関(OTOC)やロシュミットエコー、あるいは時間反転ダイナミクスによる非平衡揺らぎの定理に関する理論提案を行っていく。また2021年度に投稿した量子性の存在下で物理系を熱機関とみなした際の熱輸送の論文の再投稿も含め、投稿中の4本の論文と現在執筆中の論文1本について、早期の受理を目指す。最終的にはこれらの結果を元に実際の実験系で実現する方法の提案とその実装を目指す。 また今後、実験系が完成に近づくにしたがい、より具体的な実験提案について研究代表者と研究分担者による対面での議論の機会も増やす。
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