研究課題/領域番号 |
20H01848
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
岩佐 和晃 茨城大学, フロンティア応用原子科学研究センター, 教授 (00275009)
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研究分担者 |
桑原 慶太郎 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (90315747)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2020年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | カイラル対称 / 超伝導パリティ / 量子スピン液体 / 磁気フラストレーション / 量子ビーム |
研究開始時の研究の概要 |
カイラル・非反転結晶構造への相転移が絶対零度に抑制された量子臨界点でのトポロジカル物性現象を追究する。カイラル量子臨界点近傍では、超伝導パリティの混成と奇パリティ増強、さらに新たな幾何学構造による磁気フラストレーションと量子スピン液体が出現し得る。これらの物理現象をA3Tr4X13(A = アルカリ土類金属元素や希土類元素、Tr = 遷移金属元素、X = Sn, Ge, Pb)を対象として調べる。
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研究実績の概要 |
(1) カイラル・非反転対称結晶構造への相転移が絶対零度に抑制された量子臨界点の近傍における超伝導現象を示しうる物質開拓を推進した。La3Co4(Sn1-xInx)13のxに対する構造相転移温度と超伝導転移温度を調べ、x < 0.05において構造相転移温度が低下するものの超伝導転移温度がほぼ保たれていることを見出した。理論的に提案されているカイラル構造量子臨界点近傍での超伝導パリティの混成が期待できる。 (2) Ce3Rh4Sn13のWeyl-Kondo半金属状態を明らかにした論文を発表した。磁気秩序せずに電気抵抗のほとんど温度依存しないことから、この物質は近藤効果によるCe 4f電子と伝導電子の混成状態が有効な半金属である。中性子非弾性散乱により50%のCeイオンが近藤状態にあり、さらに光電子分光測定からCe 4f電子が伝導電子を構成することを明らかにした。また低温比熱に温度の3乗項が存在し、電子系の線型バンド構造を指摘した。この低温比熱は中性子非弾性散乱で見出した0.1 meV程度の特徴的なスピンゆらぎと符合したので、近藤効果による混成状態が線型バンドをとることを論じ、Weyl-Kondo半金属状態が実現していることを主張した。 (3) 中性子散乱によりNd3Rh4Sn13の反強磁気構造を捉え、さらにNd3Co4Sn13におけるスピン波励起を観測した。 Nd3Ir4Sn13を含む一連のNd系における磁気相関の発達が三次元格子系にもかかわらず磁気フラストレーションによって抑制される一方で、主要な1次元相互作用によるダイナミクスが現れることを発見した。 (4) Eu3Ir4Sn13が新たなカイラル対称性の結晶構造に相転移すること、その構造で反強磁気秩序をすることを放射光X線散乱と中性子散乱により明らかにし、カイラル構造のもと反強磁気秩序を示す物質群を拡張できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Nd, Eu系に対象物質を拡張することで、前年度から引き続き物質合成がコンスタントに進められ、主要な実験手法である大型実験施設での量子ビーム散乱実験の機会を十分に得ることで、結晶・磁気構造および磁気励起の新たな量子性を発見できた。特に、日本原子力研究開発機構研究用原子炉JRR-3での中性子散乱実験の機会をより豊富にすることができ、研究の早い段階で結晶構造と磁気構造の相転移の概要を掴むことできたことが研究の進展を後押しした。並行して放射光を含むX線散乱実験を以前と同様に実施することができ、La系超伝導体の新たな元素置換系での構造相転移の量子臨界現象などを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
カイラル構造量子臨界点での超伝導特性の研究対象としたLa3Co4(Sn1-xInx)13の合成では、濃度xが0.05程度において試料毎のばらつきが少ない物質であることが分かり、以前に対象としてきたCoサイトのRu置換に比べて有望であることが分かった。今後は量子臨界点に至ることが明確になるように、より高濃度のIn置換系を合成し、超伝導特性を明らかにする。量子スピン系に関する研究では、中性子非弾性散乱によりNd3Co4Sn13, Nd3Rh4Sn13での低次元性で特徴づけられる量子スピンゆらぎが見つかった。今後、そのエネルギー-運動量空間での詳細を明らかにし、これらの物質の特徴的な三次元格子での新たな量子スピン効果による磁性現象を確立する。そのためにまず磁気基底状態を確定する成果を公表する。さらに新たなカイラル対称構造に相転移することが明らかになりつつあるEu3Rh4Sn13, Eu3Ir4Sn13の構造異常と磁気状態を確定する実験・解析を今後も推進する。以上の目標に向けて、従来同様に、放射光X線散乱と中性子散乱の実験機会を確保する。
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