研究課題
基盤研究(B)
ハーフメタル強磁性体はフェルミ準位上の電子状態が一方のスピン状態にある電子のみからなる金属である。この特異な電子状態に起因して、通常の金属や強磁性体とは本質的に異なる多体電子状態の出現が理論的に予測されており、その実験的な検証が待たれている。本研究課題では、ハーフメタルの特異な多体電子状態の解明を目指して、バルク敏感・高分解能スピン分解光電子分光を主たる実験手法として、ハーフメタルおよびハーフメタル候補物質のスピン分解電子状態を実験的に明らかにすることを研究目的とする。固体物理学における多体効果の理解を深めるとともに、ハーフメタルを用いたデバイス開発および性能向上に指針を与える。
本研究課題では、ハーフメタルの特異な多体効果の解明を目指して、ハーフメタルおよびハーフメタル候補物質のスピン分解電子状態を実験的に明らかにすることを研究目的として、高分解能スピン分解光電子分光研究をおこなった。高品質CoS2単結晶のスピン分解角度分解光電子分光実験から電子相関効果がスピン状態ごとに大きく異なる事を見出し、理論との対応からハーフメタルの特異な電子構造がその主要な原因であることを結論した。CrO2試料について真空紫外線を用いた高分解能角度分解光電子分光実験から、フェルミ面の観測に成功するとともに、バンド分散に多体相互作用に起因したキンク構造が現れることを見出した。
ハーフメタルは完全偏極電子源としての応用が期待され、電子の電荷だけではなくスピンも利用した物性制御技術であるスピントロニクスの重要物質の一つと考えられています。しかしながら、その物性を左右する電子状態についてはまだよくわかっていない部分がありました。本研究から、電子の持つスピン状態に依存して電子間の相互作用の強さが大きく異なることが世界で初めて実験的に示されました。この結果は、物性物理学におけるハーフメタルの理解に貢献するとともに、スピントロニクスにおけるデバイス開発においてスピンに依存した電子相関効果を考慮することの重要性を示しています。
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Physical Review B
巻: 106 号: 8 ページ: 085114-085114
10.1103/physrevb.106.085114