研究課題
基盤研究(B)
キラルな結晶構造を有する磁性体では,非自明な秩序構造がマクロスケールで出現する創発的なスピン秩序形成が起こる.これらの現象の起源にあるのが,対称性が低い結晶中でスピンや軌道の自由度が感じるねじれた反対称相互作用である.本研究では,近年新物質の発見が相次ぐf電子系らせん磁性を広く対象とし,磁気キラルソリトン格子に代表される非線形で創発的ならせん磁気構造とその動的状態を,放射光X線と中性子線を相補的に利用することでミクロに観測する.系の対称性を問わず,自然界に普遍的かつ本質的に潜むらせん形成機構について,電子間相互作用の立場から明らかにする.
2022年に発表したEuIrGe3のサイクロイド磁気構造では,ヘリシティが決定されていなかった.結晶構造に反転対称性がある場合は,この巻き方がどちらであってもエネルギーに差はなく,両者がドメインを形成して共存するのだが,反転対称性をもたないEuIrGe3では,Dyzaloshinskii-Moriya型の反対称交換相互作用のため,サイクロイドヘリシティの縮退が解け,片方に決まるはずである.それを円偏光X線を使った共鳴X線回折によって調べた結果,4つのqベクトルに対応するサイクロイド磁気ドメインがそれぞれ固有のヘリシティを有していることが確認された.しかも,それらのヘリシティはこの結晶構造がもつC4vの対称性(4回対称軸のc軸を含む鏡映面が4枚)を反映したものになっており,反対称相互作用が確かに働いた結果であることも明らかになった.JPSJに発表された論文はHotTopicsに取り上げられた.EuNiGe3については磁場中中間相が磁気スキルミオンの歪んだ三角格子秩序相であることを見いだした.円偏光を利用した共鳴X線回折による詳しい観測の結果,ゼロ磁場ではヘリカル磁気構造が4つのドメインを形成し,いずれもヘリシティが単一に選択され,それらが結晶の4回回転軸および鏡映対称面を反映した形になり,反対称相互作用が働いていることがわかった.磁場中中間相では,q1+q2+q3=0の関係を満たす3つのq成分によるtriple-q構造が4つのドメインを作る.ここで,3つのq成分が同一らせんヘリシティに統合されることがわかった.注目すべき発見は,この統合過程で元々の反対称相互作用が逆転している成分があることで,スキルミオン格子形成の駆動力としては反対称相互作用よりも強い作用があることが明らかになった点である.arXiv:2306.14767に発表したこの成果は現在論文投稿中である.
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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