研究課題/領域番号 |
20H01871
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
西森 拓 明治大学, 研究・知財戦略機構(中野), 特任教授 (50237749)
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研究分担者 |
粟津 暁紀 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 准教授 (00448234)
白石 允梓 明治大学, 研究・知財戦略機構(中野), 特任准教授 (20632144)
秋野 順治 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 教授 (40414875)
中田 聡 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 教授 (50217741)
末松 信彦 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (80542274)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2020年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | 社会性昆虫 / 集団行動 / 自己駆動系 / 意思決定 / 数理モデル / ants / self-propelled objects / collective behavior / mathematical model |
研究開始時の研究の概要 |
アリのコロニーには全体を統括するリーダーがいない。にもかかわらず,アリは状況に即した役割分担や緊急時の役割変更を通じて,環境に適応し繁栄を謳歌してきた。本研究では,複数コロニー内のアリ全てに微細RFIDタグを貼り付け,長期にわたって個体毎の行動をモニタリングし,同時に,各種の環境制御実験を施すことで,比較的単純な個の集合がいかに複雑な組織を形成し維持するかを明らかにする。並行して非生物系の群れの典型である自己駆動粒子系の集団的振る舞いに対する実験も進める。その後,両実験系のデータと数理モデルによる解析を比較し,可塑的で靭性の強い組織ダイナミクスの発現と維持の基本機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の基本目的は、 1.最大数千匹におよぶアリコロニーの大域的状況に応じて個々のアリが適切に役割を分担し,群れ全体の維持と繁栄に必要な機能を生み出す根本機構を,理論と実験の密接な連携によって探求すること、および,2.人工の要素からなる自己駆動粒子系の集団ダイナミクスが,生き物の群れの動的性質や集団機能をどこまで模倣し得るかを探索することである。2022年度は、以下の事項を推進した。
1.アリの自律的役割分化の基本モデルとして知られる反応閾値モデルには、「コロニー内のアリ全てがコロニーとしての大域情報を共有する」という仮定が適用されている。我々はこの仮定を「コロニー内の情報は大域的に伝わるのではなく、一定のネットワーク(2D格子、スモールワールド、スケールフリー)を通じて伝搬する」と変更した際、コロニー内の情報の偏在がどのように進むかをGini係数を指標として様々な角度から考察した。この成果は論文として出版された(Shiraishi et al 2022)。また、コロニー内の情報共有の局在状態について、実測に基づいた考察を進めるために、アリの人工巣を複数の部屋に分割し、部屋間の往来および巣と餌場の往来を個体識別しつつ自動計測できる測定系を構成し計測を開始した。これにより、従来の人工巣と餌場の往復のみの計測系に比べて、より詳細な役割分担の実態がデータ化されることとなった。 2.人工の要素からなる自己駆動粒子系の新しいタイプとして、界面活性分子であるモノオレインを含む油相中にBR溶液を滴下して構成した液滴が、連続的、振動的、および、静止というさまざまなタイプの運動を呈することを実験によって示し、その成果を論文として出版した(Kuze et al 2023)。当システムは、自己触媒過程が様々な運動を誘発する重要な因子として作用する、新しい生体模倣自己駆動体の構築の端緒になると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度(2020年度)および2年目(2021年度)はコロナ禍のため、当初計画したアリのコロニーの採取が進まず、また、計測系部品の生産と輸入が滞り、計測機器の整備は十分に進まなかった。このような環境下、3年目の2023年度は以下の順で研究を進めた。 1. 研究2年目(2021年度)までに、反応閾値モデルを基としたタスク活動度分布の時間発展モデルを構成したことを受け、このモデルのさらなる解析を進め、並行して、自身の先行計測で得た行動データをモデルに取り込み、アリコロニー内の反応閾値分布を推定することを可能とした。また、RFIDタグを使った行動計測系において、アリの通過時刻と個体番号を自動検知するセンサーゲートの改良を行い、アリの検知精度を向上させることに成功した。さらに、超微細QRコードを自動計測するためのソフトウエアの整備も前年に続いて行った。 2. 自己駆動系粒子に関しては、研究成果の概要で記したように、自己触媒反応により自己駆動体の内部状態が自発的に変化し、これによって運動が変化を受ける新しいシステムを完成させた。また、代表者および分担者1名が、長い歴史のあるゴードン国際会議で口頭講演を行い、また、他の分担者1名は、会議組織委員長として、本研究に関連した分野を含む国際的連携に貢献した。 以上は、コロナ禍による研究の進展の遅れを大きく取り戻すものである。よって、研究は概ね順調に進展しているものと考えた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍で整備の遅れてきた計測系の整備も進展しつつある中、今後は、これまでより多角的にアリの行動の自動計測進めるために、より規模が大きいコロニーを育て、コロニー内の空間的位置(外部からの距離など)に依存した役割分化の発生などを捉えられる高度な計測システムへと発展させる。また、得られた行動データと理論モデルの振る舞いを相互に比較することで、アリ集団の可塑的でかつ靭性の強い組織の根幹をなす機構を明らかにする。
一方、自己駆動系においては、自己触媒反応を含む化学反応の他、形状の変形、足場を利用した移動、集団による渋滞効果など、高次の運動モードや内部自由度を持つ自己駆動粒子系を実験や理論解析を進める。
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