研究課題/領域番号 |
20H01883
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14020:核融合学関連
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 宏幸 東北大学, 工学研究科, 講師 (30768982)
|
研究分担者 |
飛田 健次 東北大学, 工学研究科, 教授 (50354569)
岡本 敦 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (50396793)
木崎 雅志 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (70598945)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
2020年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
|
キーワード | 磁場閉じ込め核融合 / 非接触ダイバータ / 体積再結合 / 高エネルギーイオン / 高周波プラズマ / 分子活性化再結合 / DT-ALPHA / Retarding field analyzer / 高エネルギー水素イオン / イオン温度 / 高周波プラズマ源 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はプラズマプロセスやプラズマ推進の分野で広く利用されている高周波プラズマ源をダイバータプラズマ研究に応用するものである。(1)高周波プラズマに特有である単一マックスェル分布から逸脱した電子の生成、(2)波動加熱を利用する事によるイオン温度計測の容易化、および(3)体積再結合プラズマに対するイオンビームの重畳を行う事で実環境のダイバータに近い環境を実験室プラズマ内に作り出し、非接触ダイバータの構造形成過程における粒子・エネルギーバランスや体積再結合反応率に対して高エネルギーイオン衝突が及ぼす影響を実験的に調査するものである。
|
研究実績の概要 |
(1)水素分子活性化再結合プラズマ(MARプラズマ)の生成を目指し、水素プラズマに対する水素二次ガス導入実験を行った。MARプラズマ形成時に特有の傾向である電子密度のロールオーバーと電子温度の単調減少を確認した。それを受けて、(a)水素バルマー系列線強度比(Hα/Hβ)および(b)イオン交換反応率の圧力応答計測を実施した。(a)においては、解離性付着を伴うMAR(DA-MAR)に特有のHα光の選択的な増加は見られなかった。そのため、観測されたロールオーバーがイオン交換を伴うMAR(IC-MAR)に由来する事が示唆された。そこで、分光計測と静電プローブ計測を組み合わせてイオン交換の反応率を評価した。その結果、イオン交換の反応率が最大となる圧力が電子密度が最大となる圧力と対応している事が判明した。IC-MARはDA-MARと異なり直接的な検出指標を持たないが、IC-MARの進展を裏付ける結果を得る事に成功し、その手法も確立する事ができた。 (2)Retarding field analyzer(RFA)を用いて磁力線に平行な方向と垂直な方向のイオン温度を同時に導出する手法を開発した。イオン案内中心とラーマー半径の大きさによって生じる速度の選択性を利用する事で2方向のイオン温度を計測する手法である。DT-ALPHAを用いて本手法の原理実証に取り組んだ。ヘリウムプラズマを対象にRFAとIon sensitive probe (ISP)を用いた計測を行った。RFAとISPから求めた垂直方向イオン温度は良好な一致を示し、提案した手法の妥当性を確認する事ができた。体積再結合が強く進展するプラズマではイオン温度に非等方性が生じる可能性があり、それぞれを独立に計測する必要がある。本研究によって、単一の計測器を用いて単一の放電から異なる2方向のイオン温度を同時に得る事が可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は(1)水素体積再結合プラズマの生成、(2)高強度水素ビームの生成と水素体積再結合プラズマへの入射、および(3)電子・イオン・中性粒子診断手法の確立の3項目を組み合わせて遂行する計画である。それぞれの進捗状況は以下に示す通りである。 (1)は水素分子活性化再結合プラズマ(水素MARプラズマ)を念頭においている。今年度の取り組みによって、DT-ALPHAにおける水素MARプラズマの生成を強く示唆する結果を得る事ができた。当初は解離性付着から開始するMAR(DA-MAR)に起因するものと予想していたが、DA-MARに特有のバルマー系列線強度比の変化は観測されなかった。そこでイオン交換反応の反応率を解析したところ、イオン交換に由来するMAR(IC-MAR)が強く進展している事を示唆する結果を得た。DA-MARと異なりIC-MARは検出の指標がなく、その進展を裏付ける手法はこれまでに確立されていなかった。そのためIC-MARとの関連の調査に時間を要したが、DT-ALPHAで初めてIC-MARの生成に成功した。 (2)についてはやや遅れが生じている。今年度はこの(2)に注力する予定であったが、(1)で述べたIC-MARの同定に時間を要したためである。本研究ではExBフィルタで水素イオンの弁別を行う事で水素ビームの生成を行う。これまでにフィルタによるイオン弁別の可否の検証や漏れ磁場・漏れ電場がビームイオンの軌道にどのような影響を与えるのかを明らかにしている。次年度はExBフィルタの導入に向けた作業に注力する。 (3)は順調に進んでおり、Retarding field analyzerを用いた磁力線平行方向および垂直方向のイオン温度を同時に計測する手法の確立に成功した。これにより単一の計測器で単一の放電から異なる2方向のイオン温度を取得する事が可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って研究を実施する。これまでの取り組みによって、水素再結合プラズマの生成およびその診断手法の確立が完了した。そこで、今後は高エネルギー水素イオンビームの生成および入射に特に注力して研究を進める。イオンビーム種(H+, H2+, H3+)を弁別するためのExBフィルタを速やかに設置する。先行研究によって見積もられた電場でイオン種の弁別が可能である事を確認する。具体的には、フィルタに印加する電圧を変更しながらDT-ALPHA上流端に設置したファラデーカップでイオンビーム電流の計測を行う。ExBフィルタでイオン種の弁別が可能である事を確認したのち、DT-ALPHA下流端に設置されているファラデーカップでイオンビームの計測を行う。これによってビームが装置全体を貫通している事を確認する。その後、電離進行プラズマおよび再結合プラズマに対してイオンビーム入射実験を行う。これまでに整備した電子・イオン・中性粒子の計測手法を駆使する事で、体積再結合の反応率に対する高エネルギーイオン衝突の影響を解明する。分子活性化再結合の反応の起点は振動励起水素分子である事、再結合によって励起した水素原子が生成される事を踏まえ、水素分子の振動励起分布や励起水素原子の計測を重点的に行う。
|