研究課題/領域番号 |
20H01898
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
淺賀 岳彦 新潟大学, 自然科学系, 教授 (70419993)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 暗黒物質 / ニュートリノ質量 / 右巻きニュートリノ / 実験検証 / ニュートリノ / マヨラナ性 / 新物理 |
研究開始時の研究の概要 |
宇宙背景輻射の精密観測などにより、我々の宇宙に対する理解は飛躍的に進歩し、驚愕の事実が明らかになった。宇宙のエネルギーの約95%は、未知の暗黒エネルギーと暗黒物質が担っていることが判明した。特に暗黒物質の問題は、素粒子物理の標準模型に候補が含まれておらず、新物理が存在することが確実であり、その解明は現代物理学最重要課題の一つである。 そこで、本課題の核心をなす学術的「問い」は、以下の2つである。 (1)「暗黒物質を記述する基礎理論は何か?」(2)「どのように暗黒物質を実験検証するか?」 これらの問いに答え、新しい素粒子・宇宙物理を記述する理論を構築することが本研究の目的である。
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研究実績の概要 |
本研究では、ニュートリノ質量起源の問題を解決する理論として、標準模型に右巻きニュートリノを導入した模型における暗黒物質の実験検証について研究を進めている。今年度は、右巻きニュートリノが暗黒物質となるシナリオを検討し、この暗黒物質を直接検証法により探索可能か研究を進めた。特に、我々の天の川銀河に束縛されている暗黒物質が実験室内の物質と衝突した際、物質(原子核や電子)が得る反跳エネルギーをシグナルにした探索法を検討した。右巻きニュートリノ暗黒物質の質量が10 keV 程度と軽いため、十分な大きさの反跳エネルギーを得るためには、原子中の原子核より束縛電子との散乱に着目する方が良い。そこで、暗黒物質反応による電子反跳エネルギーのスペクトルを求めることにした。 準備研究として、入射粒子として右巻きニュートリノではなく、通常の左巻きニュートリノの場合を検討した。Roothaan-Hartree-Fock近似に基づく原子中の電子分布を考慮して、電子型左巻きニュートリノとHe, Ne, Xe原子との散乱による反跳エネルギーのスペクトルを求めた。入射エネルギーが低く、標的原子の原子番号が大きくなると束縛の効果による自由電子と比較して散乱断面積が小さくなることがわかった。得られた反跳エネルギーのスペクトルは、暗黒物質の信号の背景事象となるため、貴重な成果となった。上記の準備のもと、現在右巻きニュートリノ暗黒物質による反跳エネルギーのスペクトル、およびシグナル強度の評価を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
右巻きニュートリノ暗黒物質の直接検出法を探究するため、原子との散乱反応を検討してきた。現在までに、通常の左巻きニュートリノとの散乱については評価が終わった。そこで、本研究の目的である右巻きニュートリノ暗黒物質との散乱断面積の評価に着手したが、現在までに完成には至っていない。一方、本計算の最も困難な部分である原子中の束縛電子分布を考慮した散乱断面積の計算手法は確立した。特に原子番号が大きい場合の電子分布についての理解を進めるとともに、束縛電子と暗黒物質の散乱過程における運動学を把握し、数値的に散乱断面積を計算する手法を確立した。よって、今後速やかに暗黒物質シグナルの評価を行う準備は整っており、終了次第論文として発表する予定である。以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は第一に、直接探索実験による右巻きニュートリノ暗黒物質を完成させる。その後、半導体標的など固体物理の特徴を活かした暗黒物質の探索法の開発に着手する。
研究計画において、共同研究を実施する若手特任助教の雇用を予定していた。2021年4月から雇用を開始し研究を進めていたが、大学でのアカデミックポジションを獲得したため、2022年3月に雇用が終わった。若手人材育成の観点から、このようなポジション獲得は良い成果となったが、現在特任教員の雇用ができていない。本件については、優秀な人材を確保するため、9月を目処に新規の人材確保をするように作業を進めている。さらに、若手特任助教の協力がなくなったため、昨年度中に所属研究室の大学院生2名をプロジェクトに参加してもらいように対策を取った。さらに、2名の解析用のノートPCを導入し、人員および研究体制を整えた。よって、今年度については計画を予定通り進められると考えている。
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