研究課題/領域番号 |
20H01906
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
筒井 泉 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特別准教授 (10262106)
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研究分担者 |
李 宰河 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (20816607)
田窪 洋介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (50423124)
長谷川 祐司 北海道大学, 工学研究院, 教授 (60282498)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,380千円 (直接経費: 12,600千円、間接経費: 3,780千円)
2022年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2021年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2020年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | weak value / weak measurement / Bell inequality / quantum randomness / uncertainty relation / 弱値 / 弱測定 / 量子共鳴 / 量子乱数 / ベル不等式 / 量子測定 / 不確定性関係 / 乱数生成 / 電気双極子モーメント / CP対称性 / Bell不等式 / 量子測定誤差 / CPの破れ / B中間子 |
研究開始時の研究の概要 |
量子力学では、実測可能な量を物理量演算子の「固有値」(または「期待値」)と呼ばれるものに限定しており、粒子の位置や運動量はその代表例である。ところが近年、これを越えた「弱値」と呼ばれる量が注目され、実際にいくつかの対象に測定が進められるようになっている。波動関数の測定はその一例である。 本研究は、この「弱値」の物理的な意味やその量子現象の特徴は何かを調べることで、量子の世界を深く知ろうとするものである。また、「弱値」を測る「弱測定」という方法によって実現される増幅効果を用いて、素粒子の標準模型を越える未知の素粒子反応を見つけるなど、新しい物理現象の探索を行うことを目的としている。
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研究成果の概要 |
本研究では、まず弱測定との関連する一般的な不確定性関係を構築した。また複数の物理量の実在性の分離を弱値の中性子干渉実験により実証した。この結果は遷移確率振幅において弱値が測定物理量の感度に相当することを示すものであり、例えば量子共鳴は弱値増幅として解釈することができる。さらに弱測定の精密測定への応用として、粒子の崩壊寿命の変化によるCPの破れ測定への有効性を検証し、またCERNのAtlas実験にてB中間子対の崩壊現象に基づくベル不等式の検証可能性を示した。加えて、パリティ対称性に基づく量子暗号の秘匿性や、量子乱数と疑似乱数の識別可能性についての新知見を得た。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究の学術的意義は、量子力学の基礎問題の一つである物理量の実在性に関して、弱値の概念に基づいて新しい知見を得たことである。端的に言えば、弱値は不確定性関係における中核的概念であり、また遷移確率振幅における測定物理量の感度に相当し、これに基づく考察から1粒子の持つ複数の物理量の分離性が確証される。また量子共鳴現象は実質的には弱値の増幅現象に他ならない。本研究は、弱値を利用した測定はCPの破れなど素粒子物理学の新しい実験方法を提供し、また逆にB中間子対の崩壊現象を利用したベル不等式の検証実験を可能にするなど、多様な物理分野での相互的な貢献が期待される点で、社会的意義があるものと考えられる。
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