研究課題/領域番号 |
20H01926
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 東京大学 (2023) 東北大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
永尾 翔 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30781710)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2020年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
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キーワード | ハイパー核 / ストレンジネス / 精密分光 / 弱崩壊 / 原子核 / ハドロン / 高分解能 / 少数系 / 実験核物理 / 電磁生成 |
研究開始時の研究の概要 |
この研究は、非常にエキゾティックな原子核であるラムダハイパー核の質量と寿命を精密に測定する研究である。ラムダハイパー核を精密に測定することで、原子核を形作る力の一般化が可能である。ラムダハイパー核と類似の状態は中性子星内部で安定に存在すると考えてられており、重力波検出などで話題となっている中性子星の構造解明に役立つと考えられる。 この研究では、ドイツ・マインツ大学における高精度ハイパー核質量分光法に加え、新たに東北大学電子光理学研究センターにある電子線加速器を用いたハイパー核寿命測定法を確立し、欧州原子核研究機構(CERN)が報告している結果を上回るハイパー核測定を実施する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、ハイパートライトンパズルと呼ばれる三重水素ラムダハイパー核の質量と寿命の謎を解明することにある。このハイパー核の質量と寿命を高精度で測定するべく、ドイツ・マインツ大学におけるハイパー核崩壊質量分光実験による高精度質量測定と、東北大学電子光理学研究センターにおける実光子ビームを用いたハイパー核生成実験による高精度寿命測定を行う。 当初予定していた実験実施がコロナ禍の影響による施設閉鎖などで遅れたものの、マインツ大学の連続電子線加速器が再稼働したのを受け、現地における磁気スペクトロメータの再整備、インストール作業を実施できた。新規開発したリチウム標的に電子ビームを照射することでハイパー核のデータの収集をすることができた。今回収集したデータには三重水素ラムダハイパー核の事象が多く含まれていると見込まれており、解析を進めることで世界最高精度、分解能のもと、三重水素ラムダハイパー核を観測することができると期待する。現在収集したデータの解析が進んでいる。 東北大学電子光理学研究センターでは、物品納入の遅延などで実験に必要な高時間分解能検出器の製作に遅れが見られた。また、光子エネルギー標識化装置で生じた信号雑音が問題となったため対策に迫られた。高時間分解能の基礎開発に成功し、要求性能を満たす検出器を作成することができた。物理実験に向けてこの高時間分解能検出器の量産を進める予定である。光子エネルギー標識化装置のノイズ対策も進み、信号雑音レベルを当初のものから改善することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初実施予定であったマインツ大学MAMIと東北大学電子光理学研究センター(ELPH)におけるハイパー核実験がコロナ禍による施設停止や物品納入遅れにより遅れることとなった。また、ELPHに既設の光子エネルギー標識化装置に予期せぬ信号雑音が生じたため、対策に時間を要した。 一方で、これらコロナ禍の影響は改善しつつあり、MAMIはコロナ前同様の運転を開始し、物理データの収集も行うことができた。物品納入遅延の影響も改善しつつあり、高時間分解能測定器に必要な備品の入手も可能となった。光子エネルギー標識化装置の信号雑音もノイズ対策を施すことで当初から改善がみられている。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツ・マインツ大学における高精度質量分光実験は無事にデータ収集を終えることができた。実験Ⅱ使用した磁気スペクトロメータのエネルギー較正を行う必要があり、今後実施予定である。収集したデータの解析を慎重に進め、ハイパー核起因の事象の選別、ピーク観測に成功した暁には、ハイパー核質量の導出が可能になると見込まれる。 電子光理学研究センターにおける寿命測定実験は、高時間分解能検出器の量産を進めると同時にその他必要な測定器をそろえる。既に設置済みの磁気スペクトロメータ(NKS2)にこれら測定器をインストールし、実験に備える予定である。
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