研究課題/領域番号 |
20H01946
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上田 佳宏 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10290876)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | ブラックホール |
研究開始時の研究の概要 |
最近の観測により、巨大ブラックホールと銀河がともに「ダウンサイジング」現象を示し、両者の「共進化」の描像が予想以上に複雑であることが分かりつつある。本研究は、(1)高感度の硬X線(>10 keV)観測による、合体銀河からの埋もれた活動銀河核(AGN)の探査とその宇宙論的進化の解明、(2) 広い赤方偏移・光度範囲をカバーした統合X線サンプルの多波長スペクトル解析による、AGN母銀河の進化の解明、(3) 精密X線スペクトル観測による近傍AGNの中心核構造の解明、の3 本を柱とする。これらにより、ダウンサイジングと共進化の起源について、明確な観測的検証を行なう。
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研究実績の概要 |
超大質量ブラックホールの質量供給メカニズムを理解するためには、活動銀河核(AGN)トーラスの位置(ブラックホールからの距離)を知ることが重要である。X線は、ガスとダストを含んだ全物質を追跡できるという特徴がある。我々は、XCLUMPYモデルを改修し、クランピートーラス中のケプラー運動を考慮して、蛍光輝線のプロファイルを予言した。これを、Chandra衛星搭載HETG装置で得られた Circinus Galaxyの深いデータに適用することで、トーラス内縁半径をこれまでで最も正確に求めた。その結果、ダストの豊富なトーラスのより内側に、ダストのないガスが大量に存在することがわかった(Uematsu, Ueda et al.)。 銀河合体は、超大質量ブラックホール成長の重要なパスの一つである。我々は、銀河合体により爆発的な星形成を起こしている超/高光度赤外線銀河(U/LIRG)に着目した。近傍宇宙にあるU/LIRG 57天体からなるサンプルの広域X線スペクトルを解析することで、系統的にそれらの中心核構造を調査した。その結果、銀河合体の段階が進むにつれ、(1) 中心核の吸収量が増加し「コンプトン厚AGN」の割合が増えること、(2) AGNからのX線光度がボロメトリック光度に対して弱くなること、(3) 強力なアウトフローが見られること、を発見した。また、星形成率とブラックホール成長率を比較することで、確かに銀河合体に伴って銀河とブラックホールが共進化している証拠を得た(Yamada, Ueda et al.)。 AGNトーラスの物理的起源を検証するため、有力な理論モデルの一つである「放射駆動型噴水モデル」に着目し、それが予言するX線スペクトルを計算した。これを 狭輝線セイファート1型銀河 NGC 4051のデータと直接、比較したところ、観測されたWarm Absorberからの特徴の一部がよく再現できることがわかった(Ogawa, Ueda et al.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブラックホール周囲のケプラー運動を考慮したトーラスモデルの開発および実データへの適用、近傍の高光度赤外線銀河サンプルの広域X線スペクトルの系統的解析、AGNトーラスの理論モデルと観測データの直接比較など、広いテーマで重要な成果を出すことができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
最新のeROSITA衛星によるX線探査データを用いて、遠方宇宙の活動銀河の多波長スペクトルを解析し、母銀河の性質を探査する。近傍の高光度赤外線銀河サンプルの多波長スペクトルおよび面分光データを解析し、AGNの母銀河への影響を合体段階ごとに調査する。
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