研究課題
基盤研究(B)
冷たい暗黒物質モデルに立脚する現在の銀河形成理論において、重力進化の結果、暗黒物質やバリオンが蜘蛛の巣状のネットワーク構造、「宇宙網」を成していることが予言されてきた。実際、水素ライマンアルファ線による広範囲なガスネットワークの存在が明らかとなり、その性質や銀河形成に果たした役割の解明が求められている。本研究では、赤方偏移2~5の宇宙に存在する銀河の大集団、原始銀河団を対象として、宇宙網およびそこを舞台として形成、進化する銀河の探査を行う。宇宙網と銀河、双方の観測的理解を進めることで初期宇宙における銀河形成史の解明に貢献することを目的とする。
冷たい暗黒物質モデルに立脚する現在の銀河形成理論において、重力進化の結果、暗黒物質やバリオンが蜘蛛の巣状のネットワーク構造、「宇宙網」を成していることが予言されてきた。本研究では、水素ライマンα線による宇宙網探査を発展させ、(i) 赤方偏移3.1の原始銀河団領域における宇宙網、(ii) 赤方偏移2~5の原始銀河団における宇宙網、それぞれについて銀河と宇宙網の双方の探査を推進する。銀河についてはALMA望遠鏡、ジェームズウェッブ望遠鏡などを、宇宙網についてはすばる望遠鏡、VLT望遠鏡を主要装置と位置付ける。そして宇宙網と銀河形成の共進化の解明を通して初期宇宙における銀河形成史の理解を大きく前進させることを目的とする。研究2年度目および3年度目(繰越含む)においては、赤方偏移3.1の原始銀河団において、明るく輝き宇宙網の結節点だと期待されるライマンαブロッブ(LAB1)について、ALMA望遠鏡によるダスト放射および炭素の電離輝線の検出について報告する論文を出版することができた。ALMA望遠鏡による成果に加え、VLT望遠鏡による水素ライマンα光の面分光データとの比較も行い、銀河衝突が広がった水素ライマンα光の要因の一つではないかという新たな説を提唱した。新たな観測データの取得も進んでいる。たとえばアルマ望遠鏡によってミリ波で230パーセクに届く、極めて角度分解能の高い画像の獲得に成功した。宇宙網の中で成長する爆発的星形成銀河の形成メカニズムの解明につながるデータだと期待される。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウイルス感染症について、本年度ALMA望遠鏡(チリ)、すばる望遠鏡(アメリカ合衆国ハワイ)、VLT望遠鏡(チリ)をはじめ各地の望遠鏡の運用や観測がストップしたり縮小したりと影響を受けることになった。特にその影響はVLT望遠鏡による宇宙網の観測において大きく、合計50時間の観測が(一年前に引き続き)採択されていたものの、この影響が大きく残念ながら今回も全く実行されなかった。当該の観測については再度観測提案を行なっている。ただ、本研究は様々な望遠鏡を活用するものであり、VLT望遠鏡のみに依存するものではない。他の望遠鏡による観測、特にALMA望遠鏡による観測については炭素の電離輝線([CII])を用いた、ダストに隠された大質量星形成銀河の観測が採択されており、宇宙網の中で成長する銀河の運動状態の解明が進むと期待される。上述の成果論文の出版を含め、ここまで研究は概ね順調に推移していると考えている。
研究計画に大きな変更は予定していない。引き続き既存のデータの解析とともに、観測提案を進め必要な新規データの取得に努める。
すべて 2022 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (8件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: 509 号: 3 ページ: 4037-4057
10.1093/mnras/stab3092
The Astrophysical Journal
巻: 919 号: 1 ページ: 6-6
10.3847/1538-4357/ac0cf8
巻: 918 号: 2 ページ: 69-69
10.3847/1538-4357/ac1106
巻: 907 号: 2 ページ: 122-122
10.3847/1538-4357/abcc72
Astronomy & Astrophysics
巻: 640 ページ: L8-L8
10.1051/0004-6361/202038146
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 72 号: 4 ページ: 69-69
10.1093/pasj/psaa057