研究課題
基盤研究(B)
磁気圏のなかで加速された電子が双極子磁場に閉じ込められた領域を放射線帯と呼ぶ。放射線帯の電子が地球大気へ降下する現象は、放射線帯の重要な損失過程であると同時に、中層大気に化学的な影響を及ぼすことから、この発生機構の現象の解明は、宇宙物理学・大気化学の双方で重要な研究課題となっている。本研究は、放射線帯電子が中層大気に降下することで生じる電離を検出する地上低周波電波観測を中心に、両分野の研究課題をつなぐ取り組みを行う。低周波電波観測をオーロラ観測・あらせ衛星観測と連携し、放射線帯電子の降下機構の解明を目指す。ミリ波分光観測と連携し、電子の降下が中層大気へ及ぼす化学的影響を実証する。
放射線帯電子は中層大気に影響を及ぼす高エネルギー粒子源として注目されているが、大気降下の発生機構とその大気への影響は解明されていない。本研究は(1)放射線帯電子が大気降下を起こす物理過程、(2)電子降下が中層大気に及ぼす影響、を観測的に明らかにすることを目的とした。電子の大気降下を検出する低周波電波観測と他の地上・衛星の協調観測を実施し、電子降下を引き起こすプラズマ波動として、電磁イオンサイクロトロン波動とホイッスラーモードコーラス波動を同定し、中間圏で電離が生じることを確かめた。昭和基地でのミリ波分光器観測から、2022/7に発生した磁気嵐の回復相に中間圏で数10%のオゾン減少を確認した。
放射線帯に分布する電子が地球大気へ降下する現象は、放射線帯の重要な損失過程であると同時に、地球中層大気に化学的な影響を及ぼす。このことから、放射線帯電子の大気降下現象の解明は、宇宙空間物理学分野と大気化学分野の双方で重要な研究課題である。本研究により放射線帯電子の大気降を引き起こすプラズマ波動が実証的に特定されたことは、今後、双方の分野の研究の繋がりを更に強化するとともに、放射線帯と大気の両方を持つ木星や土星などの研究へ拡張されることが期待される。放射線帯電子の大気への降下は、低高度を周回する衛星への放射線障害を引き起こしうるため、本研究の成果は宇宙天気の観点からの意義が高い。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 9件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 11件) 学会発表 (63件) (うち国際学会 35件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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