研究課題
基盤研究(B)
本研究は、中層大気微量成分の変動メカニズムの物理的および化学的理解のため、ミリ波帯にある複数の大気分子スペクトルを高い時間分解能と高い空間分解能で観測することを目指し、多視野・多周波同時受信が可能な「ミリ波分光ラジオメータ」の開発を行う。具体的には、①高い信号対雑音比の分光スペクトルを取得する超高感度ミリ波帯マルチバンド検出器の開発、②異なる方向のデータを同時取得する多視野光学系の開発、③微量成分の高度分布と水平方向の移動を描き出すラジオメータシステムの試作と実地観測の3点を実施する。最終的に、成層圏から下部熱圏の大気変動現象の観測的な理解と、大気環境問題解決への貢献を目指す。
本研究は、中層大気変動現象の精密観測の実現に向けた次世代型ミリ波分光ラジオメータの基礎開発研究を行った。具体的には、空間方向に広視野・周波数方向に広帯域をカバーし、従来と比べて高時間分解能の受信機システムを目指し、平面集積型超伝導受信機回路、広帯域超伝導周波数変換器、局部発振器用可変帯域通過フィルタなどのハードウェアの開発と、局部発振器変調法を用いた新たな観測手法というソフトウェアの開発を実施した。さらに、これらの要素技術開発の成果を基にした新たなラジオメータの試験機を実験室に立ち上げた。以上の成果により、ミリ波分光法を用いた大気環境計測の高精度化に資する様々な技術的課題の解決に成功した。
中層大気に含まれる微量分子成分は、地球大気の温度構造を決める主要因であり、その力学過程と化学反応による変動は、グローバルな気候から局所的な気象に対して、大きな影響を及ぼしている。微量成分の挙動を観測的に調べ、さらにこれを基に将来の大気環境を予測することは、環境問題の解決にとって重要な情報を供する。種々の大気変動メカニズムの基本原理の観測的な理解のためには、新たな観測装置により未踏の時間・空間スケールの観測領域の開拓が必須である。本研究は、従来にはない広い空間スケール、周波数スケールでのデータ取得を可能にする超低雑音なミリ波受信機システムを開発し、次世代の観測研究への道筋を得ることができた。
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Journal of Physics
巻: -
IEEE Transactions on Applied Superconductivity
巻: 33 号: 5 ページ: 1-5
10.1109/tasc.2023.3267331
巻: 33(5) 号: 5 ページ: 1-4
10.1109/tasc.2023.3254482