研究課題/領域番号 |
20H01985
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17030:地球人間圏科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
成瀬 元 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40362438)
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研究分担者 |
新井 和乃 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 特任助教 (40757754)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2021年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2020年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 逆解析 / 機械学習 / 深海地形 / 堆積学 / モーフォダイナミクス / 堆積作用 / 混濁流 / 津波 / 海洋地質 / 地形学 / ニューラルネットワーク / タービダイト / 海洋地質学 / 地質災害 |
研究開始時の研究の概要 |
近年になり,巨大地震・津波イベントにより深海で混濁流が発生することが発見された.一方,混濁流は日常的な嵐や洪水でも発生することが観測から明らかになっている.タービダイトは,はたして巨大地震の指標となるのだろうか?この疑問を解決するため,本研究は地震性混濁流の流速や濃度を2011年東北沖津波起源のタービダイトから復元する.そして,得られた結果を現世で観測された嵐起源混濁流の水理条件と比較し,地震性混濁流が他の成因のものよりもはるかに大規模であるとする仮説を検証する.本研究の成果は,混濁流という現象の理解を通じて,巨大地震発生頻度の解明に貢献するだろう.
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研究実績の概要 |
今年度は3つの領域で本研究課題に取り組んだ.すなわち,(1)水槽実験によるタービダイト逆解析手法の検証,(2)地層中のタービダイトの逆解析,(3)津波起源タービダイトの逆解析,の3つである. (1)2次元水槽実験により,傾斜変換点を伴う地形上を流れる混濁流の挙動を再現し,その堆積物の逆解析を行った.その結果,タービダイトから流速などの混濁流水理条件の逆解析が可能であることが実証された.ただし,濃度の再現性には問題があり,フォワードモデルの改善が必要であることが示唆された. (2)房総半島に分布する安房層群のタービダイトの単層解析を行い,その層厚・粒度分布を解明した.また,得られたデータに基づき予察的な混濁流の逆解析を行った.現時点では,逆解析モデルのトレーニングに用いるフォワードモデルの設定を見直し,逆解析の改善を進めている. (3)IODP Expedition 386に研究協力者であるCai Zhirongが参加し,日本海溝に堆積した2011年東北地方太平洋沖地震津波起源タービダイトの解析を行った.今年度はタービダイトの層厚・粒度分布の解析を行ったとともに,その逆解析が理論上可能であることを数値実験により実証した. また,これらの成果の基礎となるベッドフォームの形成条件や混濁流の挙動に関する基礎研究にも進展が見られた.具体的には,プレーンベッドの安定条件の解明や,混濁流の流速・濃度構造の解明を進め,それらの成果を論文として出版した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はおおむね順調に研究が進展した. 当初の計画通り,本研究で用いるフォワードモデルの水槽実験による検証が進み,いくつか改善すべき点が発見されたものの,複雑な地形を流下した混濁流の逆解析が十分に可能であることが実証された. また,本研究課題の最終目標は地層中のイベント堆積物(タービダイト)を堆積させた混濁流の水理条件と現世の津波起源混濁流の水理条件を比較することであるが,これについても大きな進展があった.今年度は房総半島に分布する安房層群の野外調査結果に基づき,タービダイトの逆解析を行った.その結果,実際の地層中に保存されたタービダイトの堆積条件が復元された.さらに,日本海溝に堆積した2011年東北地方太平洋沖地震津波起源タービダイトの解析を行い,タービダイトの層厚・粒度分布の解析を行ったとともに,その逆解析が理論上可能であることを実証した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は本研究課題の最終年度にあたる.そのため,研究課題の目標である地層中のタービダイトおよび現世のイベント堆積物の逆解析結果の比較を進め,その結果を論文として出版することを今年度の推進方策とする. 上記の目標を達成するため,まずはフォワードモデルの完成と逆解析モデルの精度向上が重要である.今年度は追加でいくつかの水槽実験を行い,改良を行ったフォワードモデルの精度の最終検証を行う.また,逆解析モデルを構成するニューラルネットワークの構造について検討を行い,より高精度な逆解析モデルを完成させるとともに,ベイズニューラルネットワークによる逆解析誤差の定量化を目指す. これらの課題を達成したうえで,すでに前年度より進めている地層中のタービダイトの逆解析および日本海溝の津波起源タービダイトの逆解析を行う.最終的に,これらの成果を取りまとめ,年度内に論文として出版する予定である.
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