研究課題/領域番号 |
20H01995
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
西尾 嘉朗 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (70373462)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2020年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
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キーワード | 地殻流体 / 深部流体 / リチウム / 同位体 / 湧水 / スラブ起源流体 / ストロンチウム / 温泉 / 断層 / スラブ / 前弧 / 断層流体 / 脱水 / 断層湧水 |
研究開始時の研究の概要 |
日本のような沈み込み帯で,海洋プレートは海溝を通じて地球内部に沈み込む。約1.3億年前に作られた低温の太平洋プレートが沈み込む東北日本に比べ,約2千年前と若く高温のフィリピン海プレートが沈み込む西南日本域では,火山前線より海溝側の地域(前弧)において沈み込んだ海洋プレート(スラブ)からの「脱水」が激しく起こる。この西南日本と東北日本におけるスラブ脱水の様式の違いを,地表で採取する湧水の複数種の元素の同位体指標から明らかにすることを試みる。特にストロンチウム(Sr)とリチウム(Li)の同位体組成から,深部からの流体の上昇速度といったスラブの脱水様式に係る情報を導き出す。
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研究実績の概要 |
有馬型深部流体の代表である有馬・宝塚温泉のデータを含む紀伊半島東部の温泉水のリチウムとストロンチウムの同位体比の論文をGeochemical Journal誌(査読有)にて発表した。有馬・宝塚温泉水のデータは本研究費のテーマであるスラブ起源流体を理解する上で最も基本となるデータである。加えて,カルデラ火山と非カルデラ火山の火口からの距離に対して温泉ガス中のヘリウム同位体比の変化の違いに関する論文をCommunications Earth & Environment誌(査読有)にて発表した。非火山性の深部流体を理解するためにかつて群発地震が発生した松代地域の温泉水のリチウムとストロンチウムの同位体を用いて当該地域の温泉水の起源を明らかにした論文を作成して査読付雑誌に投稿した。リジェクトとの判断であったが修正して再度投稿した。同時に西南日本の温泉水に関するリチウムとストロンチウムの同位体指標を用いた2つの調査研究結果を論文としてとりまとめている。 2022年度は新規に鹿児島と鳥取で採水調査を行った。分析に関しては2021年度の採取した岡山・兵庫県東部・和歌山県東部の温泉水のLiとSrの同位体分析を進めた。また,2021年度にLi同位体分析のみ行っていた神奈川県西部の温泉水のSr同位体分析を2022年度に実施した。兵庫県東部や岡山県では活断層の有無に関わらず有馬・宝塚温泉水と似たLiとSr同位体組成が見つかり,有馬型深部流体が西南日本前弧域に普遍的に存在している可能性が見えてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き,温泉水試料を用いた地殻流体研究の成果を本年度も国際誌(査読有)にて2本発表した。さらに博士課程学生1名,修士課程学生3名,学部学生5名に本研究に関わるテーマで研究を行ってもらっている。2022年度には国際誌(査読有)に投稿中にとどまるが,現在は他に2本の論文を準備中である。学会発表も9月の日本地球化学会で5発表,10月の日本地下水学会で1発表,12月の日本地質学会四国支部会では4発表を行った。また,2022年度から新規1地域で調査研究を開始し,2021年度までに開始した調査研究の採取した温泉水の分析を進めた。このように,野外調査・採水,化学分析,そして,成果発表に至るまで,予定通りの進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画の要は研究に関わる学生である。2022年度の4年生の3名のうち1名が大学院修士に進学し,引き続いて2023年度から2年間は本研究計画に関わってもらえることとなった。また,2022年度にも定員上限となる2名の3年生に当研究計画に興味をもってもらえ研究室に来てもらえた。その結果,2023年4月現在,博士学生(私費留学)が1名と修士学生4名,学部学生2名の合計7名が2023年度も当該研究計画に博論・修論・卒論のテーマとして研究を進めている。このように2023年度も多くの優秀な学生の参画があり,今後の研究の大きな進捗が見込まれる。また,PIの指示を受けて関わるのではなく,本研究計画に自発的に関わろうとする学生の育成も着実に進めることができた。特に前年度に引き続き兵庫県立大・名古屋大・京都大など他大学で地球物理など他の手法を用いて深部流体研究を行っている研究室と共に2ヶ月に1回の頻度で実施するオンラインセミナーによって学生は深部流体に関してより広い視野を得ることで自立性が高められた。よって,2023年度も引き続きオンラインでの異なる研究手法を用いて深部流体研究を行う研究室との合同セミナーを実施していきたい。加えて,対面の学会にも当研究計画に関わる学生に参加・発表を行ってもらい,より自律性を高めていきたい。特に博士課程学生(私費留学生)は2023 年度から2年にわたって奨学金をいただけることなり,本研究計画に専念できることになった。当該,私費留学生は,本分野で1年しか経過していないにも関わらず,非常に乾いた大地が水を吸うように化学分析から論文作成に至るまでスキルアップしてきており,本研究計画の成果を国際誌(査読有)にて2023年度以降は多数発表できることが強く期待できる。
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