研究課題/領域番号 |
20H02008
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
寺崎 英紀 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (50374898)
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研究分担者 |
米田 明 大阪大学, 大学院理学研究科, 招へい研究員 (10262841)
鎌田 誠司 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), その他 (30611793)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2020年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
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キーワード | 火星 / コア / 鉄合金 / 密度 / 弾性波速度 / 高圧 / 中心核 / 状態方程式 |
研究開始時の研究の概要 |
火星溶融核の圧縮挙動を、レーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いてX線吸収法とGHz超音波法による密度と弾性波速度の複合測定により決定する。本研究の密度と弾性波速度の複合測定から、鉄合金融体の圧縮挙動、即ち状態方程式を正確に決定する。得られた中心核条件における核構成物質の圧縮挙動と最新のInSight探査機による地震波データを含む内部探査データにより、火星核のサイズ・組成を初めて正確に拘束できるようになる。
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研究実績の概要 |
火星は、これまでの火星探査から液体中心核(コア)の存在がほぼ確実視されている。最近、InSight探査機による火星地震データから火星の内部構造が報告された(Stahler et al. 2021)。この最新の内部構造モデルから火星コア組成を制約するには、コア条件での鉄-軽元素系融体の状態方程式決定が不可欠となる。そこで本課題では、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた密度と弾性波速度の複合測定により、コア物質の有力候補であるFe-Ni-S系融体の密度と弾性特性を決定し、火星コア条件においてFe-Ni-S融体の圧縮曲線、状態方程式の決定を目指している。 本研究では、レーザー加熱式DACを用い、試料のX線透過率から密度を導出するX線吸収法を用いて密度測定を行った。またGHz域超音波の干渉から伝播時間を測定するGHz超音波パルス干渉法を用いて弾性波速度測定についても実施した。 2022年度は、Fe-Ni-S系の端成分であるFe, Ni, FeSおよびFe3S試料固体・液体の密度について、25 GPa, 3000 Kまでの圧力・温度条件で測定し、火星コア上部までの圧力・温度条件での密度測定を達成できた。得られたX線吸収法によるFeSやNi密度の精度評価を行った結果、高温アニール後に試料厚みを確保できれば、X線回折による密度と0.1-1.4%程度の差で、X線吸収法により密度を精度良く決定できることがわかった。 弾性波速度測定では、Fe試料のP波速度測定を~32 GPaまで実施しトラベルタイムを計測した。本成果はGHz-DAC音速法においては最高圧力・最短トラベルタイムの記録である。また岡山大学においてもGHz超音波法の測定システムがセットアップされ、弾性波速度測定が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗は以下の通りである。 2022年度は、密度測定については、Fe-Ni-S系試料の固体・液体の密度を、6-25 GPa, 1550-3000 Kの圧力・温度範囲で測定することができた。密度測定は、レーザー加熱式DACとX線吸収法を用いてSPring-8のBL10XUにて実施した。試料はFe-Ni-S系の端成分であるFe, Ni, FeS, Fe3Sを用い、圧媒体には単結晶Al2O3円板を用いた。また試料厚み決定用の参照試料としてKBr, RbBrを用い、試料と同時に封入した。試料厚みは、参照試料のX線透過率とX線回折密度から求めた。 得られた密度測定結果について、Ni試料では、24 GPa, 1880 Kまでの条件で固体密度を測定し、圧縮曲線を得た。得られた密度とX線回折密度は1.4%以内の差でよく一致した。また2760 Kまでの液体試料のX線透過率を測定した。FeS試料では、10-20 GPa, 1550-2400 Kの条件で測定した。FeS V相の吸収法による密度は回折密度と0.1-4.0 %の範囲で一致した。Fe試料では、6-25 GPa, 1700-3000 Kの条件で測定を行い、試料の回折ハローパターンから、液体状態を確認し、X線透過率を測定できた。またBeガスケットを用いて、DAC加圧軸に対し横方向から、X線透過率マッピングを行い、Al2O3円板により試料平行度が確保されていることを検証した。 GHz超音波法を用いた弾性波速度測定では、Fe試料の測定を大阪大学にてP波速度測定を~32 GPaまで実施し~6nsのトラベルタイムを計測した。本成果はGHz-DAC音速法の先行グループの成果と比較しても最高圧力・最短トラベルタイムの記録である。また共同研究者の米田博士により岡山大学においてもGHz超音波法の測定システムが整備され、弾性波速度測定が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の推進方策は、X線吸収法による密度測定およびGHz超音波法による弾性波速度測定について、それぞれ下記の通りである。 密度測定では、Fe-Ni-SおよびFe-Ni-P系液体試料の測定を行う。2023年度上半期のBL10XUにおける放射光ビームタイムは確保している。本年度は最終年度であるため、目標とする火星コア条件(20-40 GPa)における液体試料の測定を重点的に実施する。試料構成はこれまでに用いてきたアルミナ単結晶圧媒体を用い、アルミナの厚さを薄く、試料厚みを増やすことで液体試料のX線吸収率を確保する。 これまでに得られたNiおよびFeS試料の密度、圧縮曲線については十分なデータが揃ったので、結果をまとめ論文を投稿する。 弾性波速度測定では、FeおよびFe-S試料について、常温下では50GPa程度の領域での測定を目指し、さらに高温高圧条件での弾性波速度測定を目指し高温GHz測定の技術開発も行う。 以上で得られた結果から、X線吸収法による密度結果と高温高圧GHz-DAC音速法から求めた体積弾性率とを総合して、Fe-Ni-S, Fe-Ni-P融体の圧縮曲線、状態方程式を求め、火星コア条件での密度分布を明らかにし、コア組成に関する拘束条件を確立する。
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