研究課題/領域番号 |
20H02012
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
西 弘嗣 福井県立大学, 恐竜学研究所, 教授 (20192685)
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研究分担者 |
高嶋 礼詩 東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (00374207)
沢田 健 北海道大学, 理学研究院, 教授 (20333594)
柴田 正輝 福井県立大学, 恐竜学研究所, 准教授 (30713739)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2020年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | 白亜紀 / 極限温暖化 / 無酸素事変 / 森林生態系 / 蝦夷層群 / 無酸素 / 森林生態 / 植生 / 海洋無酸素事変 / 陸域生態系 |
研究開始時の研究の概要 |
中期白亜紀は地球史で最も温暖化した時期であるが,中でも海洋無酸素事変とよばれる時期には,短期間で急激な温暖化が起こった.この温暖化は海洋に無酸素水塊の拡大を引き起こしたことが知られているが,同じ時期に陸域でどのような環境変動があったのかは不明である.一方,我々の先行研究から,海洋無酸素事変の時期には陸域では湿潤化と植生の劇的な変化が生じた証拠がみつかった.そこで,本研究では,温暖化が急速に進行した2つの海洋無酸素事変(OAE1a, OAE2)を対象に,バイオマーカーや粘土鉱物などの新しい古環境指標を駆使して陸域環境の復元を千年以下の時間解像度で明らかにし,陸域生態系の激変とその全容を解明する.
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研究実績の概要 |
2022年度は,北海道惣芦別川上流域においてOAE(海洋無酸素事変)1a層準,北海道幌加内町共栄砂金沢においてOAE1d層準からAlbian/Cenomanian境界層に至る地層,北海道幌加内町五線川においてOAE1b層準に対して,高解像度のルートマップと試料採集を行った.採取した泥岩試料に対して,オスミウム同位体比の測定とU-Pb年代測定を実施した.また,凝灰岩からは微量元素組成を測定して他の地域との対比を行った.また,泥岩試料から浮遊性および底生有孔虫化石を抽出し,年代対比および古環境の推定を行った.さらに,植物片も採集し,炭素同位体比の測定を実施した(高嶋). 有機地球科学分析では,米国のGreat Valley Sequence (GVS)のOAE2時の地層で古植生・菌類フロラの年代変動の復元を行い,OAE2終盤において草本優勢のサバンナ植生から針葉樹優勢の木本植生に遷移したことが示唆された.また,地衣類バイオマーカー指標は寒冷化イベントであるPlenus Cold Eventで増大ピークを示すことから,寒冷化による陸上生態系の縮小に対して強い耐性を示した地衣類が相対的に増大した可能性が示唆される.比較のため,南仏Vocontian堆積盆のOAE1a、1b、1d、2層準で菌類パリノモルフ分析も行った.菌類パリノモルフはOAE1a層準からほとんど観察されず,OAE1bおよび1d、2層準では菌糸や菌胞子が多く観察された.OAE1dでは、菌胞子やCallimothallus属に似た子実体も産出し,菌類パリノモルフの多様性が高い(沢田).恐竜化石に関しては,中国から発見されたハドロサウルス上科の記載を進め,頭部全体の形状が正確に復元できることが明らかとなった.一方,タイ王国イグアノドン類においても追加標本の記載を行い,複数の個体が混在していることが確認された(柴田).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
OAE1a,OAE1b,OAE1dおよびOAE2層準に関しては,試料採集と野外調査はほぼ終了した.オスミウム同位体比についてはOAE1aの下部については終了したが,上部層準については測定中である.放射年代については,OAE1b, 1d層準でさらに5試料の測定の準備中である.有孔虫化石については同定はほぼ終了したが,渦鞭毛藻シスト化石については試料の処理中である(高嶋).有機分析はおおむね順調に進行し,北海道大曲沢川蝦夷層群の堆積岩試料におけるバイオマーカー分析全般と、比較のため米国Great Valley Sequence (GVS)堆積岩の基礎的なバイオマーカー分析はほぼ終了できた。南仏Vocontian堆積盆のOAE1a、1b、1d、2層準の菌類パリノモルフ分析も大まかな結果が得られ、陸上植生に連動した菌類フロラの変遷を復元することができた(沢田).恐竜化石に関しては,CTスキャンを活用した上顎骨内部構造の検討を行っている.中国産のイグアノドン類の化石もCTデータの処理を行った結果,内部の歯の構造を可視化できる可能性が高く,比較検討を行うことができると考えている(柴田). .
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今後の研究の推進方策 |
層序関連では,オスミウム同位体比や渦鞭毛藻シスト化石についての残された分析を行う予定である.有機地球科学研究に関しては、引き続き北海道蝦夷層群および米国Great Valley Sequence (GVS)試料から菌類バイオマーカーを探索し,菌類パリノモルフの解析を加えて行い,同時代におけるアジア域と北米域の植生および陸域環境の発達史と,それに関連する環境・気候システムを解明することを目指す.恐竜化石に関しては記載を推進し,分類学的な位置を特定する.さらにタイの骨格についても記載を進め,含まれる標本の分類学の位置を確定する.また,これまでに産出した恐竜化石の歯構造の3次元データ解析も行い,形態学的な特徴を明らかにし,植生との関連を検討する.これにより,植物相と鳥脚類恐竜フォーナの変遷を考察する(柴田).本年度は最終年度であるため研究成果を総括し,公表論文を作成する予定である.
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